CASIO XW-P1試奏記

 CASIO XW-P1及びXW-G1が出るそうですで触れた2機種のうち、平成24(2012)年3月25日に発売されたシンセサイザーCASIO XW-P1を、15分弱ですが試奏してきました。網羅するという形ではないものの、奏者/マニピュレータとの接点部分や仕様について記したいと思います。

 10万円を切る現行機の多くが、狭いフロントパネルに操作子を凝集した感があるのですが、CASIO XW-P1は他機種と変わらない数の操作子を持っているにもかかわらず、余裕を持って並んでいるように思えました。

 また、各操作子の形状や感触は、アサイナブルのつまみ、スライダー、ボタンとも、これも10万円を切る他社機よりしっかりしていると思いました。

 ただ、液晶画面の手前にあるアルペジエータやフレーズシーケンサーの操作子(自照型ボタン)は、ステップシーケンサーのそれよりかなり小さくて目立たず、試奏した時、一瞬フロントパネル上を探しました。また、押したという感触(クリック感)は伝わって来ず、ランプが点灯する事を以てボタンのオンが成功した事が分かる形です。これらのボタンはステップシーケンサーと同じものを採るべきだったのではないでしょうか。今回の試奏で唯一感じた残念な点です。

 液晶画面はフラグシップ級のワークステーション機のそれに比べると確かに小さいのですが、文字は大きめにとってあり、視認性は良いと思いました。横にあったKORG KRONOSは、表示パラメーター数にかなりの余裕があるページ(アンプ部等)でも、画面上で散らばっていて文字が小さいままだったりでした。

 ダイヤルは回す時の“カリリリ…”という引っかかり感が他社機より強めなのですが、KORG RADIASM3のように速く回して止めてもパラメーターの入力に行き過ぎや戻りが起こらず、使いやすかった。形状は筐体から突出しているものではなく、埋まった形です。

 フロントパネル右端には、何かを置く為の空きがあって、滑り止めのあるゴムのようなものが敷かれていました。また、その下端には衝立のような平たい突起が立っています。

 鍵盤は、押し下げ切る、指の力が抜けてニュートラル位置に帰って来る、のいずれの時にもどこかに当たる感触が無いタイプでした。記憶が曖昧なのですが、かつてのヤマハ製LC鍵盤ってこんな感触ではなかったでしょうか。

 アルペジエータは数多のパターンが用意されているようなのですが、Roland JUPITER-4フライングジュピターのような、押鍵した順番が反映されるタイプなのか否か調べるのを忘れてしまいました。

 シンセサイザーエンジンのうち、今回私が試奏したのは、ソロシンセサイザー音色の部分だけです。

 オシレータ波形はシンセ/PCMから選ぶようになっています。PW(パルスウィズ)/PWM(パルスウィズモジュレーション)はあるのですが、Roland JP-8000/8080やKORG MS2000シリーズ、RADIAS等のコントロール1/2のようなものではなく、矩形波が選ばれた時のみに働くパラメーターです。PWMのソースはLFOのみです。

 EGはピッチ、フィルター、アンプに同じものを各々独立して持っています。一見アナログシンセのADSRタイプかと思ったのですがそれらに加えて、イニシャルレベル(スタートレベル)、アタックレベル、リリースレベル1、2を設定する事ができます。ADSRの場合スタートレベル/リリースレベルは0に、アタックレベルは最大値に固定されています。

 またEGのレベルは+64〜+64で設定できます。ADSRの場合、レベルはEGデプスが+なら+、-なら-でしか設定できません。アタックレベルからサスティンレベルの間にコルグでいうブレイクポイント(レベル)とスロープタイムが無い事はADSRタイプと同じなのですが、リリースタイムに関してCASIO XW-P1には、リリースタイム1、リリースレベル1、リリースタイム2、リリースレベル2があります。

 私は撥弦や打楽器系の音を作る時、思いっきりスタッカート気味に弾かないと音が聴こえないような設定にする事が多いのですが、その理由は、弦を撥ねる、獣皮や金属片等を打つ事で聴こえている音とは、シンセでいうリリースタイムの部分であると思われるからです。

 奏者が力を加えたその瞬間に音色の明るさや音量が最大値になり、あと減退していくだけというのが一般的な撥弦/打楽器系のメカニズムだと思うのですが、中には例えば銅鑼やある撥弦系の民族楽器は、奏者が力を加えてしばらく経った頃に鳴りのクライマックスがやってきます。シンセではこのメカニズムをスタートからサスティンレベルの間にやってしまっているのが一般的だと思うのですが、リリースタイムが2段階あるCASIO XW-P1なら、これを現実に即したリリースタイムで行う事ができます。

 そういえば他社機でのスタートレベルに当たるイニシャルレベルという呼称、かつてアナログシンセYAMAHA CSシリーズでも用いられていました。ヤマハのアナログシンセにはCS-10以上のモデルにイニシャルレベルやアタックレベルがありました。

 CASIO XW-P1のLFOには、レイトや波形、そしてディレイタイムやライズタイム(フェイドインタイム)があります。アナログモデリングシンセ、例えばRoland JP-8000/8080、SH-32(ウェーブアクセラレーション音源)、SH-201GAIA SH-01にはフェイドインタイムしか無く、コルグのアナログモデリング機の場合、ディレイタイムやフェイドインタイムはモッドシーケンスかバーチャルパッチを介してのEG(フェイドイン/アウトタイムのみ)→ビブラートデプスをしなければなりません。

 このライズタイムという呼称、アナログシンセサイザーRoland JUPITER-8/JUPITER-6の白いモジュレーションボタンを押してから効果が設定値になるまでの時間ライズタイムを思い起こさせます。

 ソロシンセサイザーのプリセット音の中に口笛の音があったのですが、実際の口笛というより冨田勲さんがmoog III p(モーグスリーポータブル)を使って、「天気輪の柱」(「銀河鉄道の夜」)「アラベスク1番」(「月の光」)等で弾いている口笛の音に似ています。この音色を作った人はあるいは冨田さんの口笛を意識したのかもしれません。私はこの音ばかり弾いてしまい、PCM等、他のCASIO XW-P1のシンセサイザーエンジンをチェックし忘れました。

 また、この口笛の次にテルミンの音が入っていたのですが、私がイメージする昔のSF映画の半ば効果音的に使われたものではなく、21世紀に入ってからのテルミンブームでの、実機の音のシミュレーションのように思えました。

 今回、PCMを聴く事はできなかったのですが、かつてのサンプラーの名機、CASIO FZ-1(D-50、DW-8000、FZ-1のソノシートもつぶやく参照)の波形が継承されていたら面白いなと思っています。

 その他、CASIO XW-P1は外部入力をピッチシフター、フィルター、アンプに通す事ができます。それらにはEGやLFOが付きます。

 今後、XWシリーズの上級機が出るとしたら、モデリングやPCMに併せて、いっその事かつてのCZシリーズのPD音源も載せるというのはいかがでしょうか。


CASIO XW-P1
http://casio.jp/emi/products/synthesizer/xwp1/
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by manewyemong | 2012-03-30 12:50 | シンセワールド | Comments(0)