SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8試奏記

 implant4さんで、プログラマブルアナログポリフォニックシンセサイザー、SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8を触らせていただきました。今回試奏した個体は、以前、Roland SH-32試奏記におまけとして記したのと同一機と思われます。

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 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8は、歴史上初のMIDIシンセサイザーSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-600から、さほど時を経ずに発売がアナウンスされた記憶があります。

 昭和57(1982)年にRoland SH-101を買った楽器店さんから、たしか翌年前半にprophet-600取り扱いに関するダイレクトメールをいただいたのですが、そこにprophet-T8の姿も小さくですが載っていました。

 昭和63(1988)年、NHK特集「海のシルクロード」のBGMを担当していたS.E.N.S.(センス)が、同じ時期に催された地方博「なら・シルクロード博」のイベントで使用したシンセサイザーの中に、prophet-T8がありました。

 また、1980年代前半だったと思うのですが、ハワード・ジョーンズさんがフジテレビ系「笑っていいとも!」に出演した時、prophet-T8を弾いていました。

 prophet-T8は、prophet-10、Pro-One、 prophet-600と、 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5がベースになったシンセサイザーの最後のモデルではないでしょうか。この後、シーケンシャルサーキット社は、six-trak、Pro-8、Prophet-VS等、毛色の変わったモデルを出していきます。

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 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8のフロントパネル。

 デジタルアクセスコントロールの要素は一切無く、全ての操作子が露出しています。また、フロントパネルは若干の傾斜があります。デジタルアクセスコントロールタイプではないシンセの常として、保存された各パラメーターを視認する事はできません。

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 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8の、この筐体の薄さ。

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 奏者側の縁(へり)の部分にある「SEQUENTIAL CIRCUITS」「prophet-T8」のロゴ。厚味があるのでプレートが埋め込まれているようにも見えるのですが、おそらくステッカーだと思います。

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 ホイールと鍵盤。鍵盤は木製でベロシティとアフタータッチを備えています。

 鍵盤は光センサーを用いているそうです。鍵盤を押すと光を遮蔽してシンセサイザーエンジンに押鍵が伝わるのだと思います。キーベロシティセンシティビティ、つまり押鍵の強弱は、おそらく光を遮蔽する速さを検出するのだと思います。また、prophet-T8の鍵盤はニュートラル位置に帰る強さをも反映するそうですが、これは逆に遮蔽されていた光が輝度を取り戻す速さを感知しているのではないでしょうか。本当のところは分かりません。

 それにしてもこの部分、アナログかデジタルかで分ければ、後者に属する技術が活きているのかもしれませんが、からくり的、つまりアナログ的な着想を感じます。今、直接人間が手にする様々な工業製品に求められているのは、実はこういう視点ではないでしょうか。そして、我々日本人が、こういうことに不向きだとは思えません。

 アフタータッチは押された鍵盤群が一つの値を共有するのではなく、最大8鍵盤が各々独立して圧力を採るポリフォニックプレッシャータイプです。

 ここに記して良いものか否か分からないので内容を秘しておきますが、今回のこの個体の鍵盤まわりのメンテナンスに関して、implant4さんの大胆な発想と費やした手間ひまに、ほとほと感服しました。

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 白鍵は木の表面をプラスチックで被って(囲って?)います。

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 黒鍵は白鍵に隠れている部分が黒く塗られた木で、露出部分はプラスチックが乗っています。

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 左側のピッチベンド用はニュートラル位置まで勝手に帰るものではなく、戻さなければなりません。

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 リアパネル側。こちらから見ると、シンプルなデザインである事が分かります。

 「SEQUENTIAL CIRCUITS INC」のそばにある電源ボタンは自照型です。

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 モジュレーションまわりの音色設定操作子群。

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 二つのVCO、グライド、キーアサインモード等。prophet-5と違い、ポリフォニックポルタメントが使えます。

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 VCF。

 ENVはprophet-5同様、アタックタイムを緻密に設定できます。ベロシティでアタックタイムの短い/長いをコントロールできる事と併せて、アナログシンセにしては豊かな表情を出すことができます。

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 ベロシティに関する設定操作子及びVCA ENV。

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 ロワー/アッパーをLEFT/RIGHTとしています。個別に二桁のダイオード表示をします。

 prophet-5と同じ形状、感触のボタン群。たしか後年、E-MUとensoniqで共通の筐体を用いたモデル、E-MU PK6、XK6、ensoniq halo等と感触が似ていて、どうも好きになれません。ボタンの脆弱感に関して酷評したワークステーション機、KORG M3(KORG M3試奏記2参照)の方がましだと思いました。

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 このSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-T8と同じ時期、あのYAMAHA DX7が登場し、世界を席巻しました。価格はprophet-T8の十分の一程度であるにもかかわらず、桁違いの豊かな表現力を持っていました。デジタルシンセの革新性とアナログシンセの割高感は、この後、多くのアナログシンセの老舗メーカーに引導を渡したのではないでしょうか。

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 システムシンセであれコンボタイプであれ、現代のアナログシンセはプログラマブルやポリフォニックである必要は無いと思うのですが、その一方でデイブスミスインストゥルメント(Dave Smith Instruments)社が、もしこのprophet-T8を現代に甦らせるとしたらどんなモデルになるかなと、思いを巡らせてしまいました。


平成30(2018)年9月1日追記。

 平成30(2018)年9月1日(現地時間8月31日)、Dave Smith INSTRUMENTS(デイブスミスインストゥルメント)が同社ウェブサイトで、社号を「SEQUENTIAL」(シーケンシャル)と改めた事を告知しました。

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by manewyemong | 2012-05-18 17:35 | シンセワールド | Comments(0)