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YAMAHA SY77試奏記

 implant4さんで、YAMAHA SY77を試奏させていただきました。買い取ったばかりで調整前の個体とのことでしたが、美品だと思いました。

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 ワークステーション機YAMAHA SY77は、平成元(1989)年に発売されました。

 姫神のアルバム「イーハトーヴォ日高見」の「大空の滝 くろもじの木の匂い 雪は青白く明るく水は燐光をあけ」、小室哲哉さんの映画「天と地と」のオリジナルサントラ盤の「響」や主題歌の出だしでの、ポリタンクに水を注ぐような「ゴボゴボ…」という音は、SY77のプリセット音です。メモリーPRESETではなく、工場出荷時にINTERNALにのみ入っている音色ではないかと思われます。

 「天と地と」のブックレットには、平成2(1990)年2月の大宮ソニックシティでの録音風景が載っているのですが、そこにSY77とKORG T1が写っています。

 また姫神のアルバム「東日流(つがる)」の「海の刻(とき)」のイントロの「キロロローン…」という音は、SY77のプリセット音Wayfarerです。

 シンセサイザー黎明期のアルバム「スイッチトオンバッハ」シリーズや映画「時計仕掛けのオレンジ」「トロン」のBGMを制作したウェンディ・カルロスさんは、キーボード雑誌のインタビューでSY77を、「YAMAHA DX7よりもDKI SYNERGYに似ている」と評していました。

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 SY77のシンセサイザーエンジンは、PCMベースのAWM2とFM音源のAFMで構成されています。ヤマハはこれらを併せてRCM音源と呼んでいます。

 AWM2は現行機YAMAHA MOTIF XFにまで継承されていますが、SY77の頃に比べて格段にパラメーターは増えています。例えばSY77のAWM2(AFMも)には、LFOにフェイドタイムがありません。

 AFMはオペレータの変調波形がYAMAHA DXシリーズのようなサイン波だけではなく、AWM2を使うことができます。もちろん、AWM2の波形の聴感上の印象が、AFMのオペレータとして使った場合にそのまま反映されるということはありません。またフィルターを備えていて、レゾナンスをかけることができます。

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 フィルターが付いた事で、FM音源にアナログシンセ的な径時変化の考え方を持ち込むことができます。撥弦系や人声(フォルマント)を作る時に重宝しそうです。

 MIDIシーケンサーを内蔵しています。16トラック、約16,000ステップ、リアルタイム/ステップ入力ができます。ステップ入力はバリューだけではなく音符も使えます。20世紀のヤマハやローランドのMIDIシーケンサーやワークステーション機は、音符入力ができました。

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 フロントパネル全景。頑丈に作られた筐体。

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 フロッピーディスクドライブと三つのホイール。

 FDDのメディアは、今、入手が難しい2DD。

 三つのホイールは、力が加わらないとニュートラル位置へ戻るベンド用、ニュートラル位置が手前、そして中央の二つのモジュレーション用。ヤマハのシンセにホイールが三つ載ったのは、SY77が初めてです。CASIO VZ-1に続いてのことです。

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 音色データ用と波形用の二つのオプションカードスロット、モード選択ボタン、ボリュームスライダー、内蔵MIDIシーケンサーの操作子。

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 液晶画面。発売から20数年経つのですが、明るさを失っていません。平成元年発売のSY77の中古機としては、かなり良い状態だと思います。

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 画面右側に集約された音色設定操作子群。

 スライダーの形状は、つまむのではなく、指を乗せるタイプで、後年の初代MOTIFにまで継承されています。私はMOTIF ES以降のような、筐体から突出しているものより好きです。

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 ダイヤルは筐体から突出していて孔(あな)が一つ空いていて、縁(へり)の部分にギザギザがあり、指を乗せる形でもつまむ形でも操作できます。感触に重みがあり、剛性を感じます。様々な動かし方をしても、数値をきっちり入力できました。

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 テンキーは各パラメーターの入力に使えます。また、ボイスの名付けや内蔵MIDIシーケンサーの音符キーにもなります。

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 ボイスやエレメント、AFMのオペレータの選択操作子。SY77はボタンの感触も良いです。

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 このブログではすっかりおなじみの、中央に仕切りがあるヤマハ製FS鍵盤。

 感触はKORG M1やT3に似ていると思いました。KORG TRINITY/TRITONシリーズ、YAMAHA EX5、MOTIF/MOTIF ES、KORG OASYS 76とは違う感じがしました。とにかくシンセサイザーの鍵盤として、非常に弾きやすいと思います。で、今回またまたアフタータッチを試すのを忘れてしまいました。

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 リアパネル。

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 音声出力はステレオ2系統。ペダル端子はフットスイッチやサスティンペダル、エクスプレッション、そしてボリューム専用まであります。ブレスコントローラーも使えます。

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 「YAMAHA SY77」のロゴ。「YAMAHA」の前に音叉マークはありません。

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 平成元年、バブル経済の爛熟期に登場したYAMAHA SY77。上級機、廉価機問わずコスト意識にまみれた感のある現行機と違い、奏者やマニピュレータとの接点の部分に手抜きが感じられません。

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 1990年代は、音源戦争などという言葉がキーボード雑誌や楽器店店頭のポップに踊った時代でした。シンセサイザーメーカーが、各々複数のシンセサイザーエンジンを用意する時代の幕開けを本格的な形で告げたモデルが、このYAMAHA SY77だと思います。


YAMAHA SY77
https://jp.yamaha.com/products/music_production/synthesizers/sy77/index.html


おまけ

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 SY77の上級機YAMAHA SY99。既にimplant4さんのサイトの在庫リストにアップされています。この個体もすこぶる美品でした。

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 SY99はSY77をベースに、鍵盤を76に増やしています。ウェーブRAMを持ち、サンプラーの音素片をAWM2のオシレータ波形として使うことができます。

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 「YAMAHA SY99」のロゴプレートを外すと、ウェーブRAMのオプションメモリボードYAMAHA SYEMB05を増設することができます。たしか、このウェーブRAM用にフロッピーディスクベースのオプション音素片が、ヤマハから出ていました。


YAMAHA SY99
https://jp.yamaha.com/products/music_production/synthesizers/sy99/index.html

by manewyemong | 2012-07-25 08:41 | シンセワールド | Comments(0)