KORG MS-20 miniが出ます

 NAMM 2013においてコルグは、アナログセミシステムシンセサイザーKORG MS-20 miniを発表しました。

 MS-20 miniの元となったKORG MS-20は、昭和53(1978)年に発売されベストセラーになりました。1970年代後半、各社から店頭価格10万円を切るモデルが出始めたのですが、コルグのMSシリーズはその仕様及びその事と一体化したルックスにおいて、別格の感がありました。

 MSシリーズは、MS-10、MS-20が予め一部内部結線されてはいるのですが、MS-10、MS-20のエクスパンダーモジュールの意味合いが濃いものの完全なシステムシンセサイザーであるMS-50とともに、信号の流れをパッチケーブルの抜き差しで奏者やマニピュレータが決める事ができるという、音色作りの幅や拡張性が他社機を凌ぐものでした。

 まがりなりにもシステムシンセであるが故に、MSシリーズ同士を組み合わせたり、アナログシーケンサーKORG SQ-10を用いてMG(LFO)/EGでは不可能な周期/径時変化を作り込む事もできました。

 モーグやローランドのシステムシンセが数百万円した時代に、高校生がアルバイトで手にできる程度の値段で、何本ものパッチケーブルを電話交換機みたいに抜き差しできるというルックス…小学6年生だった昭和54(1979)年に冨田勲さんの「ダフニスとクロエ」の音楽とリーフレットのモーグシステムの姿でシンセを意識し始めた私には、手が届きそうな所にあるシステムシンセサイザーでした。

 また、1980年代初頭に起こったシンセサイザーブームの頃、専門書や雑誌によくシンセの音色設定が載っていたのですが、多くがMS-20によって作られたものでした。まだシンセを持っていなかった頃、古山俊一さんの「シンセサイザーここがポイント」(音楽の友社刊)を持って、楽器屋の店頭で音色設定を試した事があります。

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 かつてコルグが発行していたサウンドメイクアップ誌には、読者に音色の課題を出し、投稿された設定を載せるというコーナーがあったのですが、KORG POLY-800が出るまではMS-20での募集がほとんどだった記憶があります。

 もっとも、シンセの事が分かって来ると、あくまで単体使用での話ですが、MS-10、20の音色作りの幅は必ずしも私が望む方向へ広がっているわけではない事と、演奏時にパッチケーブルが手に被ってきて邪魔であるという、楽器としては受け入れがたい部分があるので、私の関心は完全な二つのEGを持つ同価格帯のYAMAHA CS-10やCS-15へ、そしてデジタルシンセへと移りました。

 プロの音楽家の成果物で、MS-20の使用が明確な形で私が聴く事ができたのは、難波弘之さん率いるセンスオブワンダーのアルバム「真幻魔大戦」の「サディスティックサイキックタイガー」のE.ベース、「スーパーバロックプリンセス」(原曲はJ.S.バッハの「イギリス組曲 プレリュード」)のコントラバスのピチカート奏、アルバム「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」の「時計の匂い」の間奏のリード音でした。

 映画「海に降る雪」の登場人物にテレビの効果音を作る仕事をしている男がいたのですが、たしかMS-20かMS-50を使って地球が回転する音を作る事に腐心する場面がありました。

 KORG MSシリーズは、昭和59(1984)年頃のコルグの総合カタログまでには載っていた記憶があります。YAMAHA Xシリーズが全盛だった頃、私は値段が2万円を切ったKORG MS-20の中古機を見た事があります。

 しかしながらやがてKORG MS-20の中古機は、新品時をも凌ぐという、他に類例の無い高価格がつく、文字通りビンテージシンセの雄となりました。

 KORG MS-20をもとにして、平成16(2004)年2月、パソコンベースのソフトウェアシンセLegacy Collection MS-20が、続いてワークステーション機KORG OASYS及びKRONOSのシンセサイザーエンジンの一つとして、MS-20EXが登場しました。

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 KORG MS-20 miniは、オリジナルモデルの開発者の監修のもと、86%の大きさにダウンサイジングし、パッチケーブルを標準からミニに替えるといった事以外は、操作子を含めた全体の形状、カラーリングに至るまで、かつてのMS-20を再現しています。

 オリジナルモデルに対するこだわりは、本体だけではなく、箱や取扱説明書にいたるまで貫かれています。取扱説明書にはDr.コルグも登場するはずです。ちなみにDr.コルグのお住まいは西大久保にあります(「サウンド・シンセサイズ入門 Dr.コルグのシンセサイザー講座」より)。

 変更点の一つであるミニ鍵盤は、microKORG XL以降採用されてきたものではなく、MS-20 miniの為に設計されたようです。もちろんベロシティはありません。

 鍵盤部分に関して、monotron以来コルグのアナログシンセサイザーに採用されている、鍵盤に似せたリボンコントローラーだったらなと思いました。

 monotribeやmonotron DUO、monotron DELAYの鍵盤型リボンコントローラーのように、クロマチック、マイナー/メジャースケール、触れる位置によって音程が違いグリッサンドするとポルタメントになるといった切り替えができれば、ピッチ変化が滑らかなアナログシンセの特性を活かした、通常の鍵盤ではできない表現ができたと思います。

 たしかに鍵盤をリボンコントローラーにしてしまうと、オリジナルのMS-20との間にルックスにおける違和感ができてしまいます。しかしながらせっかくベロシティが無いのだから、遊びの要素を入れると面白いかなと思うのですが…。

 CV/GATE方式に関する記述が、メーカーサイトに無いので確認できないのですが、かつてコルグやヤマハのアナログシンセが採っていたHz/Vではなく、アナログシンセ界のディファクトスタンダードともいうべきOct/Vだとしたら、ドイツやイギリスのアナログシンセメーカーから出ているアナログシーケンサーの現行機を、周期/径時変化等のソースに使えるかもしれません。システムシンセサイザーの醍醐味は、アナログシーケンサーの併用で、より深く堪能できると思います。

 アナログシーケンサーKORG SQ-10 mini、またエクスパンダーモジュールMS-50 miniの登場にも期待したいと思います。

 ただし、仮にMS-20 miniのCV/GATE方式がOct/Vだとしたら、かつてのMSシリーズと併用する場合、逆にインターフェイスKORG MS-02が必要という事になります。

 リアパネル側に、MIDI IN(ノートデータ受信)とUSB(ノートデータ送受信)があります。標準サイズの鍵盤を持つ他機からの演奏や、DAWとの併用ができます。

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 MS-20 miniの用法の一つとして、シンセ関連の古い本に載っているMS-20の書式の音色設定を聴いてみるというのが考えられます。オリジナルのMS-20の現状が、コンデンサ等に35年の経年変化がある事(KORG KRONOS 88試奏記参照)を考えれば、むしろMS-20 miniの方が当時の執筆者の意図を体現してくれるかもしれません。

 KORG MS-20 miniはオリジナル機への強いこだわりが感じられるのですが、逆に考えると、違いが無さ過ぎるともいえます。先に鍵盤を引き合いに出したのですが、遊び、というか、オリジナルに対する、ある意味茶化しの要素も欲しかったと思います。まあ、86%に小型化したという事が、最大の茶化しですけどね。

 monotronの時にも思ったのですが、KORG MS-20 miniの登場は、考えようによっては、こういうものを作る事ができるほどに、コルグというシンセサイザーメーカーにとって、アナログシンセ、そして京王技研工業株式会社という社号が、遠い存在になったという事なのかもしれません。

 KORG MS-20 mini試奏記へ続きます。


追記。

 KORG MS-20 miniのCV/GATE方式は、かつてのアナログMSシリーズと同じHz/Vです。


平成26(2014)年1月24日追記。

 本日、アナログセミシステムシンセサイザーKORG MS-20 Kitが発表されました。

 KORG MS-20 Kitが出ますへ続きます。


平成27(2015)年1月22日追記。

 本日、アナログセミシステムシンセサイザーKORG MS-20M Kitが発表されました。

 KORG MS-20M Kitが出ますへ続きます。


平成29(2017)年1月12日追記。

 平成29(2017)年1月12日、KORG MS-20 miniの数量限定カラーバリエーション機、MS-20 mini WM(ホワイトモノトーン)が発表されました。

 KORG KROME PT、MS-20 mini WMが出ますへ続きます。


KORG MS-20 mini
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/ms_20mini

KORG MS-10/MS-20/MS-50
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/MS-10/

KORG SQ-10
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/VC-10/

サウンド・シンセサイズ入門 Dr.コルグのシンセサイザー講座(PDF)

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by manewyemong | 2013-01-25 08:33 | シンセワールド | Comments(0)