KORG minilogue xdが発表されました
私が海外でのminilogue xd、volca modular、volca drumに関するリークを見つけたのは元日だったのですが、かつて信じ難かったKingKORG、KORG MS-20 miniが、その後、実際に発売されたという先例もあり、あるいはNAMM 2019で発表になるかもしれないと思っていました。
minilogue xdの、プログラマブル、4声ポリフォニック、スリム鍵盤37鍵、操作子のレイアウトや形状、基本的なパラメーター構成等は、KORG minilogueを踏襲しているのですが、本稿では同機との相違点を中心に、フロントパネルを見渡す形で記したいと思います。
筐体の色はminilogueのカラーバリエーション機minilogue PG(ポリッシュドグレー)に似ている感じがするのですが、ポリッシュド処理が施されていない、アルミの質感をそのまま残しているかもしれません。
つまみやトグルスイッチの形状はminilogue由来のものなのですが、つまみにはどこを指しているかを示す線が入っています。KORG prologueは白線でしたが、minilogue xdはグレー。変に目立たない、しかし視認しやすい配色だと思います。
ポルタメントタイムを設定する専用の操作子が設けられています。オン/オフのボタンは無く、設定値にもオフは無く0〜最大値です。試奏するまでわかりませんが、ポルタメントのカーブが非リニア変化である事を願っています。
minilogueがポルタメントの設定値オフ/0で行っていたモノフォニック演奏時のトリガーモードのマルチ/シングルの設定は、エディットモード中のEGレガートという専用のパラメーターで行います。
ボイスモードの操作子群がフロントパネル左端に移っています。minilogueにあったボイスモードのモノは、コードモードの選択肢の中にあります。
オシレータに関して、二つのVCOに加え、prologueのようなマルチエンジンがあります。ノイズジェネレータ(4タイプ)、VPMオシレータ(16タイプ)、ユーザーオシレータがあります。
VPMオシレータタイプの中にノイズ波形をモジュレータに使うものがあり、私としてはこれは使ってみたいなと思っています。
minilogueの場合、アサイナブルEGをVCO2のピッチのソースにする時に、オシレータセクションにEGデプスがあったのですが、アサイナブルEGセクションでディスティネーションの選択と効果の深さを設定するように変わっています。
フィルターは2ポール/4ポールの選択操作子はなく、2ポールのみです。またEGデプスは無くなっています。minilogueはアサイナブルEGをフィルターに使ったまま、設定値をVCO2のピッチとも共用できたのですが、minilogue xdはできません。
カットオフフリケンシーのつまみのサイズが、他と同じになっています。私はこの方が好きです。
アンプEGはADSRで、minilogue同様、フィルター等、他のセクションと共用する事はできません。
アサイナブルEGはADSRではなく、アタックタイムとディケイタイムのみに簡素化されています。ピッチ(VCO1、2、マルチエンジン全て/VCO2のみ)にかけるか、フィルターにかけるか、いずれにしても、ディスティネーションを一つだけ選ぶ形で、インテンシティ(最低値〜0〜最高値)もここで設定します。minilogue、prologue同様、オシレータ波形にかける事はできません。
LFOのインテンシティは、最小値〜0〜最大値のいわゆるバイポーラではなく、0〜最大値(511)か、シフトキーを押しながら設定する事による0〜最小値(-511)のどちらかを選ぶ形になります。+値/-値を設定できるので、LFOの鋸歯状波を正逆とも選択できます。
LFOには1ショットというモードがあり、本来周期変化のソースであるLFOを、径時変化に充てる事ができます。ディスティネーションを、ピッチ、オシレータ波形、フィルターの開きから一つを選ぶ事はminilogueと同じです。prologue同様、LFOにEG MODが無いので、フレキシブルEGをモジュレーションの径時変化に充てる事はできません。
内蔵エフェクターは変調系、反響、残響系と三つに増えています。これらを同時に使う事ができます。各々にprologueのようなユーザースロットがあります。
変調系はコーラス、アンサンブル、フェイズシフター、フランジャーがあり、さらに各々複数のタイプがあります。私としては特にアンサンブルが加わってくれた事がありがたい。
ディレイ、リバーブ、つまり異なる空間系エフェクターを二つ同時使えるのは、コルグのアナログシンセの内蔵エフェクターとしては初めてではないでしょうか。そしてこれらにも、各々14、10のタイプがあります。
このジョイスティックのX+/X-(水平方向)はピッチベンドのみのソースでしかありません。ピッチベンドレンジはアップ/ダウン個別に設定できます。
ジョイスティックのY+(上)とY-(下)とで異なるディスティネーションを割り振る事ができ、インテンシティを個別に設定する事ができます。インテンシティの設定値は最小値〜0〜最大値です。
このジョイスティックのY+/Y-に充てられるパラメーターは結構多岐にわたっていて、本来のジョイスティックとは異なるユニークな使い方が考えられます。単につまみをひねるのではなく、指を離すと勝手にニュートラル位置へ帰ってくれるジョイスティックの特性を活かした演奏ができると思います。
例えば、Y-にオートベンドのソースにしたEGインテンシティをアサインした場合、ジョイスティックを手前に引く行為をオートベンドのモーメンタリースイッチとして使う事ができます。喜多郎miniKORG 700Sリードのシミュレーション時、有効だと思います。
minilogueのスライダーにLFOインテンシティを充てると、スライダーを左端に引き切らない限り効果が0にならなかった(令和元年6月、システム2.00で改善されました)のですが、このジョイスティックはニュートラル位置で0になってくれます。
16ステップのシーケンサーの為の、16個の自照型ボタンが横一列に並んでいます。おそらく実行中のステップのボタンが点灯すると思われます。
かつてのKORG PS-3300、3200のテンパーメントアジャストのような、マイクロチューニング機能が加わっています。23のプリセットに加え、6つのユーザースケール、6つのユーザーオクターブを記憶させる事ができます。
リアパネルのピンカド材は、minilogue PGのようなシースルーブラックに塗装されているのではなく、minilogue量産型機と同じ処理と思われます。
音声出力は内蔵エフェクターの効果を活かすためかステレオになっています。
ダンパー端子が加わっています。残念ながらアサイナブルではなく、単にサスティンペダルを挿す為のもののようです。フットスイッチによるポルタメントのオン/オフ等に使えたらと思うのですけど…。
CV IN端子が二つあります。ジョイスティックのY+/Y-に充てられるパラメーターを、ここを介して外部からコントロールする事もできます。シーケンサーやシステムシンセのモジュールの信号を受けるといった事が考えられると思います。このセクションもminilogue xdのマニピュレーションを面白くしてくれる要素だと思います。
システムシンセサイザーやモジュールに関する事柄に疎いので、事実誤認の可能性があるのですが、例えば、MIDI INのあるKORG MS-20 miniやmoog MOTHER-32とminilogue xdのMIDI OUTをつなぐと、minilogue xdの押鍵をトリガーにする形で実行されるMS-20 miniやMOTHER-32のEGの信号をCV INを介して、minilogue xdのパラメーターに径時変化を与える事ができるとしたら、ありがたい事だなと思います。ただ、この信号はいわば4声ポリフォニックではなくパラフォニックの効果になると思います。
ポルタメントの操作子が設けられ、コントローラーがジョイスティックに変更といった事によって、演奏中の操作性が増した事や、オシレータにマルチエンジンが加わった事、エフェクターの増装等で、単に安価で簡便なプログラマブルアナログポリフォニックシンセから抜け出た感があります。
KORG minilogue xd、来る2月23日発売予定、税込価格は59,940円。
平成31(2019)年3月2日追記。
KORG minilogue xdに触れる機会がありました。
ジョイスティックに関して、コルグのワークステーション機のものより、小さく、ゆるいので、効果の深さを繊細にコントロールする事には慣れが必要かもしれません。今回、ピッチベンドだけがしたい場合でも、横だけでなく前に傾けてしまう事が多かった。しかしながら、小さくゆるい故に、効果のオン/オフのモーメンタリースイッチとしては、ワークステーション機のジョイスティックよりも適しているといえるかもしれません。
令和元年(2019)年5月9日追記。
同日、デスクトップモジュールタイプのアナログシンセKORG minilogue xd moduleが発表されました。
令和元年(2019年)7月20日追記。
令和元年(2019年)10月8日追記。
KORG minilogue xdのカラーバリエーション機minilogue xd PW(パールホワイト)が発表されました。フロントパネルの塗装に粉体塗装(パウダーコーティング)の技法が採られています。
また、リアパネルにオーク材が採られ、minilogue xd量産型機よりも明るい色になっています。
どうせならフロントパネルだけではなく、つまみ、ジョイスティックといった黒い操作子群や黒鍵もパールホワイトだったら面白いのになと思いました。
minilogue xd PWは数量限定生産。発売日は11月23日。価格は税込61,050円です。
令和元年(2019年)11月8日追記。
minilogue xdシステムバージョン2.00が公開されました。既にシステム2.00に対応した取扱説明書が公開されています。
システム2.00の中で、私が興味を持った点は以下です。
前回保存値(オリジナルバリュー)が分かるようになりました。パラメーターディスプレイをオールに設定した場合、前回保存値と操作子を動かした時の値が一致した時、表示値の右側に“★”が、値が近づくと“→”または“←”が表示されます。
外部からのMIDIを介したアフタータッチを、アサインパラメーターとして割り振る事ができます。
オシロスコープを非表示にする事ができます。
KORG minilogue xd
by manewyemong
| 2019-01-15 18:28
| シンセワールド
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