「水光る」(アルバム「遠野」より)

 “水光る”というのは夏の季語だそうですが、私はゴールデンウィーク明け頃の大阪の淀川で魚釣りをしているときのことを思い出してしまいます。

 イントロの「カラカラカラ…」というセミかカエルの鳴き声のような電子音が、ステレオ音場の両端に変調の速さを変えて配されています。おそらくコルグのパッチングタイプのアナログシンセサイザーKORG MS-20で作ったと思われるこの音、私には川面にキラキラと映る陽光のイメージに感じられます。

 じっと釣り糸を垂れていると、都会の真ん中を流れる川であるにも関わらず、入れかわり立ちかわりさまざまな生き物がやってきます。まるで宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」みたいです。曲中、様々な音のキャラクター達が入れかわり立ちかわり登場する「水光る」は、そんな、静かな、しかしハプニングに満ちたひとときとシンクロしてくれます。

 紀伊半島の南端に住む私の友人はこの曲を聴いて、「立春のころの小川の感じやなあ」と言っていました。この友人、この曲が「水光る」であることはもちろん、姫神のことも全く知りませんでした。

 大阪ガスはかつてこの曲を、冬期の水道の凍結防止を呼びかけるテレビCMのBGMに使っていました。曲中、再び例のセミかカエルの鳴き声のような電子音が高鳴る部分です。

 話が逸れるのと記憶が曖昧な話で恐縮なのですが、大阪ガスといえば不完全燃焼防止を呼びかけるCMのBGMに、モデスト・ムソルグスキー作曲「展覧会の絵」の「卵のからをつけたひなの踊り」の、たしか冨田勲さん編曲演奏分が使われていた記憶があります。アニメで描かれた鳥が「アテンションプリーズ」と言った後、右往左往しながら窓を開けて換気扇を回すという映像のバックです。「ガス湯沸かし器、つけたその手でハイ換気」という唄が続きました。


KORG MS-20
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/MS-10/

 1980年代初頭、シンセサイザーの音色作りに関するHow to本がよく出版されたのですが、参考設定図はKORG MS-20のフォーマットで書かれていることがほとんどでした。自前のシンセサイザーを手にする前、この種の本を参考に楽器店のMS-20を操作させてもらったのですが、ある本に載っていた「蛙の鳴き声」がこの曲のイントロの音に似ていました。
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by manewyemong | 2006-01-28 17:33 | 音楽 | Comments(0)