「峠」(アルバム「遠野」より)

 遠野は北上山地の中のオアシス都市のような役割を負っていました。ここを十字路にして物や情報が集積され四散していきました。おびただしい数の伝説や昔話、歌が醸造されていった理由はそこにあったと思われます。

 峠(とうげ)の語を国語辞典で調べてみると、山の坂道を登りつめてそれを過ぎれば下りになるという所、とありました。北上山地を往(ゆ)く旅人が、笛吹、界木、立丸、五輪、小、蕨、赤羽根、荷沢といった峠を越えて進むと、目の前に開けゆく遠野郷の人界の懐かしさ、安堵感。逆に遠野を発(た)って北上山地に分け入ってゆく旅人にとって峠は、人界から出て行く寂寥感を、ひとしお感ずる場なのかもしれません。

 「峠」は、峠を越えて遠野郷へ出入りした人々の気持ち、ひいては遠野の辿ってきた歴史や負ってきた役割を想って制作された楽曲と思います。錦絵武者的な英雄だけが歴史を育むのではなく、名も無い多くの人々の営々とした働きの中で歴史は刻まれ時は流れていく…。「峠」はそういった人々への鎮魂歌のような気がします。

 「奥の細道」後半の裏メロや「岩清水」(作曲は姫神せんせいしょんのドラム/パーカッション奏者の佐藤将展さん)の間奏、「やませ」のリフ等で聴こえるトラベルソ(ルネサンスフルート)か尺八のような音が、この曲ではメロディを奏でています。まさに峠に立って眼下の遠野郷に向かって吹き鳴らしているかのような雄大な旋律と音色が印象的です。使用したシンセはおそらくRoland JUPITER-4ではないかと思われます。バックのオルガンの音はKORG CX-3(オリジナルモデル)です。


KORG CX-3
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/CX-3/
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by manewyemong | 2006-02-07 22:10 | 音楽 | Comments(0)