「白い川」(アルバム「姫神」より)

 初めて姫神せんせいしょんのレコードを買うにあたって、当時リリースされていたアルバム「奥の細道」から映画「遠野物語」オリジナルサントラ盤までの中からアルバム「姫神」を選んだ理由は、ジャケット画の良さと併せて、この「白い川」が収録されている事でした。

 私が姫神せんせいしょんの曲の中で最も気に入っている曲であり、そして姫神・星吉昭さんがお作りになった全ての作品の中で、「東日流笛」「星が降る」と並んで最も好きな曲です。

 この曲は姫神せんせいしょんが音楽を担当した映画「遠野物語」(村野鐵太郎監督作品)の冒頭テーマとして使用され、劇中、映画の為に制作された多くの変奏曲が使われました。

 笛、さまざま(1)で採り上げた笛、同じくRoland SH-2と思われる曲終盤のリード音、曲中繰り返され続ける撥弦風とマレット系の音色によるオスティナート、KORG Polysixによる内蔵エフェクトのアンサンブルを使ったストリングス、Roland VP-330のヒューマンボイス部(フェイザーはかかかっていない)、E・ベース、ドラムセットといったパートから構成されています。

 「白い川」というタイトルがついていますが、私は紅(あか)や黒といった色彩を感じました。それも陽光や電灯ではなく、ろうそくや行灯(あんどん)の明かりの中に浮かび上がる、深紅と漆黒。この紅は、五社英雄監督の映画によく出てくる娼婦の襦袢だとか、旧赤線地帯(大阪や京都には空襲で焼けなかったが故に現存しています)の毛氈の紅…。人間の妖しい心を象徴するような紅を思い浮かべました。

 平成7(1995)年2月5日、岩手県遠野市の民宿、曲り家(まがりや)さんで一泊した朝、近くの卯子酉(うねどり)神社に行ったのですが、祠や周囲の木の枝におびただしい数の赤い布がくくり付けられていました。朝の銀世界の中の暗い木立の奥に映える紅。白い息をはきながらこの妖しい紅達に見入りつつ、この時も「白い川」の旋律を思い出していました。

 また、鶴田一郎さんというイラストレーターの美人画の雰囲気にも「白い川」はぴったりのような気がします。以前、ノエビア化粧品のテレビCMで彼の絵が使われていたのですが、BGMは西城秀樹さんやもんたよしのりさんでした。「白い川」もいいのにな、と思ったものです。

 平成6(1994)年8〜9月、岩手県下で数回上演された「姫神音語り・遠野物語」という、劇と姫神の演奏で構成された公演の中で、遠野市在住の語り部、阿部ヤエさんが、笛吹峠(ふえふきとうげ)の名の由来を語られた後、「白い川」が「白い川〜笛吹峠〜」として演奏されました。

 継母の放った炎の中で少年が笛を吹くという光景を、舞台では真っ赤な照明と人影で表現していたのですが、私がこの曲に感じていた色彩感とあまりにも合致していたことや、終盤のフレーズの笛(原曲ではリード音)の演奏が情熱的で、驚きと感動をおぼえました。

 私はこの公演をNHKの衛星放送で見たのですが、その場で体験できなかった事が心残りです。


卯子酉様(遠野市サイトより)
http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/19,2495,80,html

鶴田一郎公式サイト
http://www.tsuruta-bijinga.com/
worksの中に「白い川」のよく似合う女性達を発見しました。
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by manewyemong | 2006-10-26 10:05 | 音楽 | Comments(0)