「動植綵絵」、相国寺に帰る(3)

 「動植綵絵」、相国寺に帰る(1)「動植綵絵」、相国寺に帰る(2)からの続きです。

 「動植綵絵」の中から私の好きなもの、興味を持ったものをいくつかピックアップして雑感を記したいと思います。何回かに分けて書きます。

 姫神せんせいしょんのアルバム「姫神」で触れた、袴田一夫(はかまだ・かずお)さんの手によるジャケット画の鳥のモデルになったと思われる「老松白鳳図(ろうしょうはくおうず)」は、「釈迦三尊像」の左横にありました。私は平成11(1999)年末の東京国立博物館での特別展「皇室の名宝」以来の観賞です。

 鳳凰(ほうおう)はもちろん実在の鳥ではなく、それ故、伊藤若冲の想念を込めやすいモチーフだと思うのですが、それにしてもこの白い鳳凰の目つきは艶っぽいと思います。ライオンのオスがメスの尿を嗅いだ時にこんな目つきをするのを、NHK「ダーウィンが来た」で観ました。

 長岡秀星さんの「迷宮のアンドローラ」の中に、男性の陰茎や陰嚢のような形のグロテスクな物体が、アンドローラや女性達を翻弄するというシーンがいくつかあるのですが、「老松白鳳図」の画面左から中央へ向かって湾曲しながら挑発的にのびている幾本もの尾羽の先のハートマークは、あるいは陰嚢のシンボライズかもしれません。

 キジやヤマドリ、クジャクの尾羽はまっすぐ後ろに突き出ているのですが、「老松白鳳図」のそれは異様に湾曲していて、もしかすると白鳳のお尻からのびているというより、白鳳を追って、白鳳のお尻に向かって突き刺さっているのかもしれません。白鳳が恍惚とした目をし、羽を広げ、駈けてだしているのは、実はそういったことを織り込んでいるのかなとも思えます。そういえば若冲は妻帯せず、春画を描くことはなく、また私が知る限り女性を描いたものを思い出せません。

 羽の描き方が必ずしも現実の鳥に即したものではなく、まるでDTPソフトで幾何学的な線画のパーツを描き、さらにそれをコピー&ペースト機能を使って組み合わせたような感があります。

 羽毛も何だかペルシャ絨毯の布地のような、単に想像上の鳥を描いたということだけでなく、非現実感が何だか他の「動植綵絵」よりも強調されている作品のような気がします。「動植綵絵」の鳥達の白い部分は、実に凝った技法とコストがかけられています。図録に詳らかに記されていますので、購入をお勧めします。

 「老松白鳳図」は白い鳳凰に関して、先程触れたある凝った技法とコストがかけられていることに加え周囲を暗く描いているので、白鳳にスポットライトを当てたかのような効果が出ています。

 「動植綵絵」、相国寺に帰る(2)で、
今回そばに行ってじっくり見ることができたが故にいくつか気付いたことがあります。帰宅して画集や美術雑誌を見直すとそこでも確かにそれらの要素を視認できるのですが、やはり実物を見ないと気付かないことがあることを思い知りました
としました。

 学校の図書室にあった画集で「老松白鳳図」を見て以来役25年、何度となく画集や美術雑誌、そして平成11年には現物を見ていたにも関わらず、今回画面右上から下りて来ている松の枝にカッコウかホトトギスと思われる鳥がとまっていることに気付きました。

 この25年間ひたすらスポットライトを浴びた白鳳を見続けて来て、今回、相国寺承天閣美術館でやっと「老松白鳳図」全体を眺めることができるようになりました。

 「若冲になったアメリカ人/ジョー・D・プライス物語」へ続きます。
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by manewyemong | 2007-05-24 20:51 | | Comments(0)