アルバム「桃源郷」(3)

 アルバム「桃源郷」(2)からの続きです。

 せんせいしょんのアルバム「桃源郷」に添付されている冊子の中に、演奏中のミュージシャン達や楽器、録音機材、そしてパソコンのデスクトップ画面に関する画像が見開きで掲載されています。もちろん画像がアルバム「桃源郷」制作で実際に使われたことを示しているとは限りませんが、これを元に記事を書いていきたいと思います。極めて不確かな記述であることをご了承ください。あくまで、参考までに。

 アルバムが制作されたオッドイーブンスタジオは、右ページ中央のコンソールYAMAHA 02Rの上に乗った二つのパソコンキーボードからすると、WindowsとMacが混在するシステムのようです。録音に使ったアプリケーションはおそらく業界定番のdigidesign Pro Tools(最上段右から2番目、及び最下段右から三つ目の画像)で、インターフェイスは同社Digi 002(右から2番目上から2番目)です。

 ソフトウェアシンセサイザーKORG Legacy Collection ANALOG EDITIONのMS-20(最上段右から4番目)、Polysix(最上段左端)、そしてMono/Poly(最下段右から4番目)。「みみずく」の1分13秒あたりから始まるリード音と酷似した音が、昭和60(1985)年に放映されたNHK教育「ベストサウンド」で、講師の難波弘之さんが披露した「時計の匂い」の間奏でKORG MS-20の実機から出ていました。「みみずく」のこのリード音はLegacy MS-20かもしれません。また笛、さまざま(2)によく似た涼しげな音が収録曲のいくつかで聴くことが出来るのですが、これらはLegacy Polysixかもしれません。KORG OASYS EXi LAC-1 PolysixEXにもよく似たプリセット音がありました。

 左端上から2番目のARTURIA JUPITER-8Vは、コンボタイプの国産アナログシンセの高級機Roland JUPITER-8のモデリングシンセです。「錦秋」のメロディラインで聴くことが出来る「ピーン」という撥弦系の音に使われたかもしれません。そう思った理由に関して、この音がデジタルシンセ/ソフトシンセが無かった姫神せんせいしょんの頃から使われていた事実と併せて「錦秋」で書きます。

 同じくARTURIA moog modular V(右端上から3番目)は、アルバム「桃源郷」で使用された中でおそらく最も幅広い音作りが出来るソフトシンセです。「リ・ア・ス」の始端と終端の波の音が自然の音なのか電子音なのか判然としないのですが、もし後者だとしたら使われたのはmoog modular Vではないでしょうか。20数年前、Roland SYSTEM 100Mで作った「水洗トイレの音」というのを聴かせていただいたことがあります。タンクの栓が開かれて水が落ちだす「ジャッ!」という音、そして水が流れる「ザー…」というノイズとそれに混じった水滴の音が、連続的に表現されていました。あるいは「リ・ア・ス」のあの波の音も、moog modular Vを使って、打ち寄せる音、コポコポという水音等を連続的に出しているのかもしれません。もちろん海の実況音の可能性が高いのですが…。

 最上段右端はソフトウェアベースのワークステーションpropellerhead REASONのアナログモデリングシンセSUBTRACTOR。REASONは「みみずく」「リ・ア・ス」等の無機的なオスティナート等のバッキングからメロディラインに至るまで、アルバム「桃源郷」中、最も多用されたと思われます。「みみずく」の1分13秒あたりから始まるリード音と同時にその後ろで、世代によって受け取り方が違う、懐かしくそしてどこかコミカルなシーケンス音が鳴りだしますが、この件は「みみずく」で記します。

 右から四つ下から2番目に、モジュールのシンセサイザー/サンプラーの画像があります。下からRoland VP-9000、YAMAHA MOTIF-RACK、E-MU PROTEUS ORCHESTRA。「夏まつり」のステレオ音場の両端で鳴っている2本のフルートはMOTIFのような気がします。

 右ページ中央及びその斜め右下の画像のキーボードは、USB/MIDIマスターキーボードEDIROL PCR-80です。最上段右から5番目の画像でアルバムプロデューサー柴田晃一さんが弾いているのもおそらくこれだと思います。PCRシリーズは割当可能なつまみやスライダーが多く、ソフトウェアベースのアナログモデリングシンセのリアルタイム演奏時、特に重宝します。

 「奥の細道」「郷の踊り子」に北田了一さんによるエレクトリックピアノが収録されています。アルバム「桃源郷」の他の曲ではシンセサイザーによるエレクトリックピアノのプリセット音も使用されていますが、やはり本物の“コツッ”という打撃の感触が違います。ちなみに私はYAMAHA DX7のプリセット音“E.PIANO”にズブズブに毒された人間なので、今回使われたエレクトリックピアノがFender Rhodes(フェンダーローズ)なのかWurlitzer(ウーリッツァー)なのかわかりません。ちなみに画像下から2番目右から4番目の人物が北田了一さんです。NHK「のど自慢」でシンセを演奏されています。

 バイオリン(下から3番、右から4番目)はオッドイーブンスタジオのホームページの“other instrument”にクレジットされているものだと思います。「月見坂」のバイオリンはシンセサイザーやサンプラーではなくこのバイオリンではないでしょうか。そして弓を当てたのはおそらくオッドイーブンスタジオのオーナー、せんせいしょんのシンセサイザー/ドラム佐藤将展さんと思われます。

 YAMAHA AW4416(右端下から2番目)は、おそらく民生機レベルのマルチトラックレコーダーとしてはKORG D32XDとならんで国産機最高の性能を誇るモデルです。ムービングフェーダーを採用しているので、フェーダーの位置や動きをパラメーターの数値上だけではなく物理的に再現できます。YAMAHA AW4416やKORG D32XDの店頭でのデモンストレーション機は、いずれもムービングフェーダーを誇示する為かやたらとニョロニョロ動いていたのを憶えています。現在、ソフトウェアベースのMTRに押されてこのクラスのモデルは市場から消えました。打ち込みや録音にパソコンを使うことを未だ躊躇している私にとっては残念な話です。大阪では10万円を切るお値段で中古品が店頭にあります。

 左から4、下から2番目の画像は、1970年代にアメリカで製造されたフェイズシフター、MU-TRON BI-PHASE(ミュートロン・バイフェイズ)というビンテージエフェクターです。アルバム「桃源郷」にはフェイザーを使った音が数多入っているのですが、どれがDAWのエフェクターによるものなのかMU-TRON BI-PHASEなのかはわかりません。「錦秋」のEギターにかかっているのはMU-TRON BI-PHASEだと思います。かつて姫神せんせいしょんがうねりを帯びた男声風パッド音等で使ったフェイザーは、あるいはこのMU-TRON BI-PHASEかもしれません。

 コンパクトエフェクターBOSS VB-2 Vibrato(最下段左から2番目)は、ギター等にビブラートをかけるエフェクターです。アルバム「桃源郷」のどこで使用されたかはわかりません。ボスは既にこのビブラートのコンパクトエフェクターの製造を行っておらず、VB-2は中古が高値で取引されているようです。


KORG Legacy Collection ANALOG EDITION 2007
http://www.korg.co.jp/Product/Synthesizer/
LegacyCollection/AnalogEdition2007/


ARTURIA JUPITER-8V
http://www.dirigent.jp/products/arturia/jupiter8v/index.html

ARTURIA moog modular V
http://www.dirigent.jp/products/arturia/moogmodularv/index.html

propellerhead REASON
http://www.propellerheads.jp/products/reason4/main.html

Roland VP-9000
http://www.roland.co.jp/products/mi/VP-9000.html

YAMAHA MOTIF-RACK
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/tonesamp/motif-r/

EDIROL PCR-80
http://www.roland.co.jp/products/dtm/PCR-80.html
ここのPCR-80はCD「桃源郷」の画像や私が店頭で見かけたものとは若干カラーリングが違います。

YAMAHA AW4416
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/rec/aw4416/

BOSS VB-2(「BOSSギターエフェクター情報局」より)
http://blog.boss-effects.com/?eid=25162
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by manewyemong | 2008-02-17 09:01 | 音楽 | Comments(0)