KORG MS2000B導入記(2)

 KORG MS2000B導入記(1)の続きです。アナログモデリングシンセサイザーKORG MS2000Bに関する雑感を記したいと思います。

 KORG MS2000Bは既に製造が終わって時間が経っており、今回私の手許に来たのは、ある方に売っていただいた中古品です。

 まず、奏者/マニピュレータとの接点部分から書いていきます。

 鍵盤のベロシティでのコントロールは、とてもワークステーション機のように繊細には行なえません。それはベロシティでコントロールできるパラメーターがワークステーション機に比べて少ないという事以外に、鍵盤の構造がそもそもそういう事を主眼に置いたものではないからだと思います。まあベロシティで多岐にわたるコントロールがしたければワークステーション機を使えばいいだけの話なのですけど。

 エディットモードでは、動かしたつまみや押したボタンに関するパラメーターが液晶画面に表示されるようになっています。また、-NO/+YESボタンで各パラメーターの内容を1づつ増減できます。-NO/+YESボタン、つまりDEC/INCボタンがあることは、MS2000Bを購入した決め手の一つでした。

 RADIASの場合はボタンではなくダイヤルなのですが、数値を1づつ細かく増減する時、少し注意しないと行き過ぎが生じます。R3microKORG XLの場合、演奏時のアサイナブルつまみがエディットモード時の操作子も兼ねているのですが、RADIASのダイヤル以上に行き過ぎが生じやすいです。

 私は音を考える時に、単に音響やシナリオとしてだけでなく、イメージの段階で脳裡でパラメーターの内容まで出来上がっている事も多いので、これらのダイヤルやつまみの操作がかえってかったるいと感じる事があります。つまみで近似値を入れ、-NO/+YESボタンで決定値に達するというのが、MS2000Bでの私のやり方です。

 ちなみに私がワークステーション機に関してテンキー入力が出来るか否かにこだわるのも、イメージの段階で脳裡で数値まで出来上がっている事があるからです。

 以下からはMS2000Bのシンセサイザーエンジン部分に関する記述です。

 オシレータ1の波形のうち、サイン波選択時のコントロール1の役割に関して、MS2000シリーズ及びmicro KORGとMMT音源機(RADIAS、R3、microKORG XL)とで違いがあります。後者の場合、コントロール1の値が000で純粋なサイン波、そして数値を増やしていく毎に倍音の出方が変化するのですが、前者の場合、オシレータ2に対してかけるクロスモジュレーションのデプスを設定することが役目です。

 アナログシンセの中にはVCOの波形にサイン波を持つモデルがあるのですが、たいていの場合、これがVCFの自己発振で作られるような純粋なサイン波ではなく、ゆがんだ形になっています。しかしながら純粋なサイン波よりも温かみが感じられるのでシンセリード音によく使われます。

 シンセサイザーの音色関連の記事は、基本的にはワークステーション機の使用を前提に書いているので、女声ハミングのようなリード音に関してオクターブ違いの二つのオシレータのサイン波を使ったのですが、せんせいしょんはおそらくソフトウェアベースのアナログモデリングシンセのオシレータを一つだけ使い、RADIAS、R3、microKORG XLのコントロール1を操作するような要領でサイン波をアナログシンセのVCOのようなゆがんだ形にしていると思います。楽器店のR3で試したところ、先の女声ハミングのようなリード音の記事よりも元ネタに近い音になりました。

 残念ながらMS2000シリーズやmicro KORGでは同じことはできません。また、そもそもオシレータ2にサイン波が無い故に、女声ハミングのようなリード音の方法で音色を作る為には、ティンバーを二つ使う、つまりボイスモードをデュアルにする必要があります。私は以上の事に、MS2000Bを手にして初めて気づきました。

 フィルターやアンプ部のキーボードトラックに関して、ワークステーション機のような緻密な設定はできませんが、かつてのアナログシンセのVCFにあるような、いったい何の為についているのか首をかしげたくなるような緩慢さとは違い、動かした分だけきちんと効果が確認できます。

 EGは二つ。EG1はフィルターと、そしてEG2はアンプ部と繋がれています。RADIAS、R3、microKORG XLのEG3は役割が完全フレキシブルなのですが、MS2000シリーズやmicro KORGの場合、完全フレキシブルのEGはありません。ただし、KORG MS2000B導入記(1)でも書いたのですが、EG1はフィルターのEGデプスを0にする事によって見かけ上接続を切る事はできます。

 例えばEG1をオートベンドに用いる場合、EGデプスを0、バーチャルパッチでEG1→ピッチ、さらにEG2→カットオフと接続します。ちょうどVCF/VCAでEGを共有する多くのアナログシンセの廉価機と同じ流れになります。かつてのコンボタイプのアナログシンセや他社のアナログモデリングシンセの多くが、ピッチEGに関して簡便なものが多いのですが、コルグのアナログモデリング機の場合、この方法を用いてオートベンドをADSRタイプのEGで行なう事ができます。

 それとアンプ部には、コンボタイプのアナログシンセや他の多くのアナログモデリングシンセと同様、EGのかかり具合に関するパラメーターが無いのですが、私は吹奏系や擦弦系そして人声(独唱)系等の音に関して、バーチャルパッチでEG2→アンプレベルをつないでデプスを調整しています。元々EG2とアンプ部はつながっているにもかかわらず、あえてバーチャルパッチでつなぎなおしているわけです。

 EGに関して、ベロシティの強弱によるコントロールに関するパラメーターが、MS2000シリーズやmicro KORGにはありません。RADIASやR3、microKORG XLにはEG VELO INTというパラメーターがあり、ベロシティでEGの変化の幅をコントロールできます。またRADIAS 2.0及びmicroKORG XLのバーチャルパッチのディスティネーションには三つのEGの全要素が組まれています。このあたりはコルグのアナログモデリングシンセの新旧を分かつ、つまり力の差の最も顕著な部分だと思います。

 LFOのレイトは最大値、つまり最速値がワークステーション機のそれよりもかなり速く(LFOのオルタネートモジュレーションを一考した場合をのぞく)、モジュレーションのかけ具合で金属的な響きの音を作ったりする事ができます。LFOのレイトが速い事に関して私はMS2000が出た頃から注目していて、手にする事があれば試そうと思っていた事柄がいくつかあったのですが、今回作ってみて私の狙っていた効果のことごとくが出せました。

 MS2000シリーズやmicro KORGのバーチャルパッチの数が4系統なのに対して、RADIASやR3、microKORG XLは6、さらにソフトウェアシンセKORG Legacy Collection Mono/Polyは8系統を備えています。

 またバーチャルパッチのソースやディスティネーションは、RADIAS、R3、microKORG XLとは違い、項目がフロントパネル上に露出していて、セレクトボタンを押し送っていくと選ばれた項目の赤ランプが点灯するようになっています。つまりバーチャルパッチのソースやディスティネーションの項目は、最初からシステムのバージョンアップに際して増装される設計になっていないという事です。RADIASの場合2.0でディスティネーションが増装されました。

 バーチャルパッチはコルグのアナログモデリングシンセの特徴の一つであり、これも新旧の力の差が歴然としています。かつてMS2000が登場してその仕様が明らかになった頃、私はさまざまに使い道を思いめぐらせたものですが、これもその通りの事ができました。

 モッドシーケンスもMS2000の登場以来私が最も興味を持ってきた機能であり、もし手にする事があれば試してみたい事が数多ありました。いずれも私が期待した通りの効果でした。モッドシーケンスが1チャンネルしかないR3ではなく、3チャンネルあるMS2000Bを選んだのは本当に正解でした。奇をてらったことに使うよりも、微妙な音変化に使うことの方が多くなりそうです。

 ちなみに私はかつてKORG WAVESTATION EXを2台持っていたことがあるのですが、このシンセサイザーの特徴であるウェーブシーケンスやベクターシンセシスに関しても、やはり微妙な音変化に使うことの方が多かったです。「チャッチャカチャッチャッポコペンポコペン…」(WAVESTATIONを使ったことがある方なら何のことか分かっていただけると思います)といった、いかにもウェーブ〜/ベクタ〜な使い方は好みではありませんでした。

 内蔵エフェクトは、ワークステーション機のそれを使い慣れた身には簡便過ぎてかゆい所に手が届かない感じがするので、アンサンブル(笛、さまざま2参照)以外は再び長期借用中のMTRのものを使っています。それとディレイに関して、フィードバック数とダイレクト音/エフェクト音のバランスに関するパラメーターが統合されているのですが、深くかければかけるほど音全体が引っ込んでしまう感じがします。

 アルペジエータにはかつて私が所有していたアナログシンセRoland SH-101やKORG Mono/Poly(KORG Legacy Collection Mono/Poly参照)には無かったトリガーモードがあり、撥弦や擦弦等のトレモロ奏のシミュレーション等に使っています。

 またランダムモードはLFOのサンプル&ホールドとは別の形でランダムノートを作る事ができます。アルペジエータのランダムモードはかつてプログラマブルアナログポリフォニックシンセサイザーRoland JUPITER-4や8に搭載されていて、使用する演奏家も多かったようです。

 KORG MS2000BはMS2000と仕様上の違いは無く、その意味ではこのシンセサイザーの事を知って9年余になります。内容に関して理解はしていたつもりでした。しかしながら実際に自室で音を作りつつ弾いてみて、音の経時変化に関して、EGがADSRタイプである事やベロシティによるコントロールができない事から来るのっぺり感は、アナログシンセより遥かにましとはいえやはり拭いようがないなと思いました。楽音を弾く事に使う機会は多くはないと思います。ディケイタイムやリリースタイムが短い打系や撥弦系、装飾音、そしてMIDIを介してKORG TRITON Le 61に重ねる形での使い方がメインになりそうです。

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 MS2000Bをどこに置くか決めかねたので、とりあえず空いている机の上に起きました。ケーブル(オーディオ/MIDI/ペダル)の結線はこの撮影の後に行ないました。


KORG MS2000B
http://www.korg.co.jp/Product/Discontinued/MS2000B/

KORG WAVESTATION
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/WAVESTATION/

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by manewyemong | 2009-04-11 10:17 | シンセワールド | Comments(0)