「菩薩」(アルバム「絲綢之路」より)

 敦煌莫高窟(ばっこうくつ)は、世界最大規模の壁画の画廊であり、三千体の塑像が収められた博物館でもあります。

 NHK特集「シルクロード」では、照明や編集の技術を駆使して、塑像の表情を多角的に捉えてました。そしてその映像のバックにはこの「菩薩」が流れました。

 様々なパーカッションの音、アナログシンセサイザーRoland SH-3かJUPITER-4による効果音、ボコーダーRoland VP-330のヒューマンボイス部の和声という構成で、明確なメロディはありません。おそらく喜多郎さんは旋律らしい旋律を省くことで、仏像たちの姿形の楽曲化ではなく、仏像たちの放つ気配(けはい)を捉え描くことを企図したのではないでしょうか。

 また、アルバム「絲綢之路」の「菩薩」は、次の曲「永遠の路(とわのみち)」のイントロも兼ねていると思われます。

 昭和63(1988)年の「なら・シルクロード博」では、テーマ館で敦煌莫高窟第45窟の菩薩像、井上靖のパビリオンで第275窟の交脚弥勒菩薩がリアルに再現されていたのですが、私が見学したおり、それらにお賽銭が供えられていました。

 シルクロード博主催者や莫高窟再現に携わった人々は、おそらくそれらの菩薩像を純粋に展示物と考えたはずですが、参観者がお賽銭を供えた時点で、菩薩像達は生きた信仰の対象となったわけです。

 かまどや人形、縫い針にも神が宿ると考える我々日本人の自然観を、あらためて垣間見た思いがしました。

 「菩薩」は沙漠(さばく)の国の仏たちの映像のBGMですが、地方博のパビリオンの展示物にお賽銭を供える心性と似た、喜多郎さんの日本的な感性を感じました。
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by manewyemong | 2005-12-25 21:27 | 音楽 | Comments(0)