「飛天」(アルバム「絲綢之路」より)

 「飛天(ひてん)」というタイトルがついていますが、NHK特集「シルクロード」では、敦煌莫高窟内の壁画の飛天の映像よりも、莫高窟前から鳴沙山、そしてその周囲に広がる荒漠とした沙漠(さばく)を俯瞰(ふかん)した空撮映像のバックに流れていました。

 河西回廊の軍事都市敦煌として誕生したこの町は、その歴史の大半を沙州(さしゅう)と呼ばれてきました。ベネチアの商人マルコ・ポーロは「東方見聞録」においてこの町をサチューと紹介しています。井上靖の小説「敦煌」の舞台も沙州と呼ばれた時代(北宋)でした。

 「飛天」は、現代の敦煌莫高窟内の飛天画を描いたというより、沙漠の上空に舞う飛天、およびその目線で見たかつてのシルクロード交易の要衝のオアシス都市、沙州そのものを描いた曲なのかもしれません。

 SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5のリコーダー風の音、Roland VP-330のヒューマンボイス部、ステレオ音場の両端に各々別の演奏が配されているアコースティックギターのストラミングと、この頃の喜多郎さんが多用した音の要素が詰め込まれています。

 この「飛天」という曲の中で、リコーダー風の音は軽やかに天空を舞う飛天を、ヒューマンボイスは荒漠とした沙漠を、アコースティックギターは吹く風を表現しているように思えます。

 昭和55(1980)年12月、ポール・バックマスターさんの指揮、ロンドン交響楽団の演奏による2枚組LP「シルクロード組曲」が出たのですが、その中に「飛天」も収録されていました。純粋なクラシックスタイルのオーケストラ演奏ではなく、ディレイのかかったフェンダー・ローズ社のエレクトリックピアノやエレクトリックベース、ドラムセットが加わっていました。

 昭和63(1988)年のなら・シルクロード博の会場で「絲綢之路」とならんでこの「飛天」をよく耳にしました。アルバム「絲綢之路」を聴いた、あるいはNHK特集「シルクロード」を見たシルクロード博関係者の脳裡にこの曲の印象が残っていて、BGMを使用するにあたってこの曲を思い出したというケースがあったのかもしれません。

 NHKが平成10(1998)年から平成12(2000)年まで放映した「四国八十八か所」で、キース・ハフナーさん編曲、ユー・シャオカンさんの二胡(アルフー)演奏による「飛天」の変奏曲が、テーマ曲として使われました。ちなみに、同番組の第43番から第46番札所の回のリポーターは喜多郎さんでした。

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by manewyemong | 2006-09-10 10:10 | 音楽 | Comments(0)