「1000年女王」オリジナルサントラ盤について(1)

 昭和57(1982)年3月に東映系で公開されたアニメーション映画「1000年女王」のオリジナルサントラ盤は、同年2月21日に発売されました。喜多郎さんが映画音楽を担当したのはこれが初めてです。

 ちなみに同日、冨田勲さんはアルバム「大峡谷」(作曲フェルデ・グローフェ)を、そして姫神せんせいしょんはアルバム「遠野」をリリースしました。

 この昭和57年という年は、その2年前のNHK特集「シルクロード」放映開始及びアルバム「絲綢之路」リリース以来続いていた、ちょっとした喜多郎ブームが頂点に達した年ではなかったでしょうか。

 ざっと思い浮かぶだけでも、正月恒例のフジテレビの新春かくし芸大会でザ・ドリフターズがシンセサイザーで「絲綢之路」を演奏、リットーミュージック社の月刊誌キーボードマガジン2月号及びサウンド&レコーディングマガジン同月号(創刊2号)での巻頭特集、4月からFM東京系でその後10年間にわたって放送される「サントリーサウンドマーケット」のテーマ曲担当、日本武道館を含む初の全国30都市ツアー敢行(ちなみに私が初めて喜多郎さんの公演を聴いたのもこのツアーでした。大阪では追加公演もありました)等々…。

 平成4(1992)年3月、「〜サウンドマーケット」がその月いっぱいで放送を終了することがアナウンスされた日のゲストは奇しくも喜多郎さんだったのですが、「〜サウンドマーケット」が始まった昭和57年当時を、「アクティブに仕事をしていた時期だった」と振り返っていました。

 そのちょっとした喜多郎ブームの中でのアニメーション映画「1000年女王」のBGM担当は、ファン層をより若年層、というか幼年層にまで広げたのではないでしょうか。昭和59(1984)年に出版された「天界から飛雲までの集大成と喜多郎語録」の「1000年女王」の章の中で喜多郎さんは、
「僕の音楽を子供達が知ってくれたという意味でこの仕事は大きかった。子供からのファンレターは結構シビアではっきり書いて来る、しかしそれは検討材料になる」(要約)
とコメントされています。

 映画「1000年女王」のパンフレットには、昭和56(1981)年7月に音楽担当が喜多郎さんに決定したこと、翌月に零時社(原作者松本零士さんのスタジオ)に喜多郎さんが訪れて松本さんと打ち合わせをしている場面や、東映動画とおぼしき場所で絵コンテを見ている喜多郎さんの様子、翌年1月には音楽が完成していたこと等が載っていました。「〜喜多郎語録」によると、締め切りまでの時間が短かったにもかかわらず完成が速かったので、東映動画側が驚いたとのことです。 

 「〜喜多郎語録」によると、映像は完成しておらず絵コンテだけ見て制作したということです。現在はどうなのか知りませんが、1970年代後期から1980年代初頭のいわゆるアニメブームの頃の制作ではそれが通常のことでした。先日買ったアニメ映画「地球(テラ)へ…」のパンフレットにも、音楽担当の佐藤勝さんの「映像を見ていないのでイメージがつかみにくかった」というコメントがありました。

 収録曲は「プロローグ〜スペースクイーン」「星雲」「光の園」「まぼろし」「コズミックラブ」「自由への架橋」「プロメシュームの想い」「未来への讃歌〜エピローグ」。デラ・セダカさんが唄った主題歌「星空のエンジェルクイーン」(作詞:南里元子、作曲:喜多郎、編曲デイビッド・フォスター/喜多郎)は収録されていません。

 映画「1000女王」に関して、あるシーンでBGMに違和感のある編集が為されていたり、アルバム収録分と同じ音源であるにも関わらず、映画本編内で音の印象が変わっているケースがあるのですが、それは各々の楽曲に関する記事内で触れたいと思います。

 このアルバムの特徴は、サウンドデザイン時代のほとんどの作品と同様、曲の終盤と次の曲の序盤がややかぶってはいるものの、それでも各々の曲が他のアルバムよりも比較的独立した形で収録されていることではないでしょうか。

 また音色に関してデジタルシンセ導入やMIDI規格登場以前なのですが、近作よりむしろバリエーションが豊富で、曲想も音色もアルバム「天空」以降の多くの作品のような一本調子ではありません。音に関してメロディからバッキング、効果音に至るまで喜多郎さんが細やかに手を入れていました。

 使用した電子楽器はFM音源キーボードYAMAHA GS1以外全てアナログシンセであり、またSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5Roland JUPITER-4以外プログラマブルではなく、音色を自分で作らざるを得なかったからだと思います。デジタルシンセやMIDI導入以降、いわゆる喜多郎サウンドはアナログ期にアナログ機で作ったものしかなくなっていきます。

 それとつくづく思うのですが喜多郎さんは、NHK特集「シルクロード」やこの「1000年女王」を含むサウンドデザイン時代、グレイトフルデッドのミッキー・ハートさんがプロデュースした「THE LIGHT OF THE SPILIT」、ミュージカル形式のサーカス「CIRQUE INGENIEUX」、NHKスペシャル「四大文明」等、プロデューサーやクライアントがいるという一見軛(くびき)をかけられた状況の方が、かえって作風を劇的に変えたり、曲想のバリエーションが豊かな作品を仕上げることができるような気がします。

 映画「1000年女王」関係のレコードはこのオリジナルサントラ盤の他、デラ・セダカさんが唄った主題歌シングル、ロサンジェルスシンフォニーオーケストラが演奏した「SYMPHONIC SUIT Queen Millennia」、映画の音声部分を収録した2枚組の「ドラマ編」が発売されました。

 「SYMPHONIC〜」収録曲は映画本編では使用されなかったのですが、本編終了後に上映された一般公募のはがきイラストを紹介する短編映像のBGMとして「まぼろし」が使用されました。また映画「1000年女王」の初号予告編のBGMはアルバム「敦煌」の「風神」「飛翔」が使われました。

 後に発売された映画「1000年女王」の音声は、ビデオテープ、DVDともモノラルなのですが、ドラマ編LP及びカセットテープはステレオです。

 この映画「1000年女王」オリジナルサントラ盤は、日本国内では正式な形でのCD化はされていません。私は知人が香港で買って来てくれたものを所有しています。

 私はこの「1000年女王」オリジナルサントラ盤を、喜多郎さんの作品の中で最も愛しています。

 「1000年女王」オリジナルサントラ盤について(2)に続きます。主に使用機材関係の内容になります。

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by manewyemong | 2007-02-22 09:04 | 音楽 | Comments(0)