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特別展「道教の美術」を観ました

 24、5年ほど前、駒田信二(こまだ・しんじ)の「中国怪奇物語」(講談社文庫)というシリーズを読みました。その中の一つ<神仙編>は、「捜神記」「広異記」「聊斎志異」等の書物から、道士、仙人、天界の神々、桃源郷や山上の別世界といった、道教にまつわるキャラクターや空間が登場する物語77篇が収められていました。

 その中には「杜子春」(芥川龍之介の「杜子春」とは趣きを異にする)や、不思議な日本人が命令通りに動く禽獣や虫のからくり人形達を操る「黄金の蝶」(「杜陽雑編」より)という1篇もありました。収録された77篇の全てに、変幻自在な想像力の世界を感じました。

 月に足跡を残し、太陽系の諸惑星に探査機を送るようになった今日の我々の意識から見ても、時空の遠大さを想わずにはいられない内容でした。

 しかしながら「中国怪奇物語<神仙編>」を読んでいた当時、道教的世界のビジュアルイメージのヒントになるようなものが私の近くに無く、掛け軸の仙人やテレビドラマの「西遊記」のイメージだけが脳裡に立ち上がっていました。

 そして今回、特別展「道教の美術」を観て、かつて読んだ「中国怪奇物語<神仙編>」に視覚的なイメージを持たせることができるようになりました。

 ただ、特別展「道教の美術」には閻魔大王の政庁や地獄を描いたもの等、極彩色に彩られた騒々しげな世界ものもあったのですが、全体的にはむしろ静かな空間を描いたものが多かったような気がします。高校の漢文の授業で習った老子の「無為自然」という考えに通ずる作品に、むしろ今回の特別展「道教の美術」のカラーが出ていたと感じました。

 そういえば喜多郎さんのアルバム「敦煌」(NHK特集「シルクロード」オリジナルサントラ盤)の中に、「TAO(タオ:道)」という曲があります。おそらく取材班が撮影した敦煌莫高窟の道教関連の壁画の映像に添えることを企図して作られたと思うのですが、アイリッシュハープのグリッサンドやFM音源キーボードYAMAHA GS1の「ポーン」という減退系の音のフレーズにminiKORG 700Sリードのメロディが絡んでいくという構成で、アルバム中、最も静謐感を漂わせたナンバーです。

 道教はそのまま日本に根付くことはありませんでしたが、神道や仏教等に取り込まれる形で、我々にとって身近な存在であることが、今回の特別展を観れば分かると思います。

 特別展「道教の美術」は、平成21(2009)年9月15日から10月25日まで大阪市立美術館で開かれています。展示品は全期間展示されるものと、前期(9月15日〜10月4日)と後期(10月6日〜25日)で入れ替えられるものとがあります。またパンフレットの表紙になっている「天帝図」(重文。14世紀元代。東京・霊雲寺蔵)は、9月15日から27日までの展示です。

 後期の展示作品が観たいのと、今回買い損ねた豪華な図録を手にする為に、もう一度参観したいと思っています。

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「道教の美術」公式ページ
http://taoism-art.main.jp/concept.html

大阪市立美術館
http://www.city.osaka.lg.jp/museum/

by manewyemong | 2009-09-22 10:20 | | Comments(0)