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 平成21(2009)年冬に公開されたアニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト復活篇」(「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形参照)の再構成版が、ディレクターズカットとしてブルーレイ/DVDで発売、そして東京と大阪の劇場でレイトショー公開されます。

 先の公開時にカットされた要素が加わったり、ラストシーンの展開が違ったものになるようなのですが、私が大歓迎したいのは、効果音が、旧作群を担当された柏原満さんの手によるものに復されたという事です。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音で、次作は柏原さんのものをと希求したのですが、こういう形で実現しました。

 既に予告編が公開されていてあの効果音も聴こえるのですが、昭和49(1974)年の第1作から使われていたとは思えないほど全く古めかしさを感じない、コンピュータグラフィクスに負けていない事が実感できました。「楽をしたら、しただけの音しかしない」は冨田勲さんのお言葉ですが、それは楽音だけでなく効果音も同じだと思います。

 minimoogの修理が成って一つ分った事があります。ヤマトの主砲の射撃音の、弾道が放たれている「ブズズズズズ…」という所、minimoogによる喜多郎効果音をつぶやくで触れた効果音と同じ方法で作られていると思います。もちろんヤマトの射撃音は、冒頭、生肉を拳で殴打したような音等様々な音の素片が多重録音されて構成されているとは思うのですが…。
 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」ブルーレイとDVDの発売は、平成24年3月23日。劇場でのレイトショー公開は1月28日から2月3日、東京がシネマート新宿、大阪がシネマート心斎橋。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形に続きます。
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 約1年前、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形の最後に、

 かつて「宇宙戦艦ヤマト」が放映されていた昭和49(1974)年頃、ゲイラカイトというアメリカから来た凧(たこ)が流行っていて、私も大きな目玉がトレードマークのスカイスパイを揚げていました。時は流れて平成22(2010)年の正月、淀川の河川敷でスカイスパイが揚がっているのを見て、感慨深いものがありました。

 善きにつけ悪しきにつけ、人間ってそうそう次から次へと新しいものを創っていく力は無いというか、必要としていないのかなと思いました。誰かが思い出したようにゲイラカイトを揚げるのと同じく、今後も「宇宙戦艦ヤマト」は作られていくのかもしれません。

と書きました。私がこんな事を思っていた頃、既に「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」は、俳優さん達の出演部分を撮り終えていたそうです。

 この引用部を象徴するような事が、「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」上映時にありました。本編上映前の他作品の予告編のうち、「あしたのジョー」「トロン:レガシー」は、何らかの形で元になる作品が過去に存在した映画です。私は中学2年の夏に「あしたのジョー2」を、そして「トロン」を翌年の秋に観ました。

 洋/邦画を問わず、全く新しいストーリーやヒーロー/ヒロインを生む事が、難しくなっている事をひしひしと感じます。

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」は現在公開中であり、物語の詳細をここに掲げる事はしません。子供心にも話の齟齬が目について仕方がなかったアニメのヤマトシリーズよりも、はっきり言って完成度は高いと思いました。

 かつて我々は、アンテナの付いたヘルメットをかぶり、ピエール・カルダン風の服を着て、錠剤のような物を食べ、スリッパのような形の空中自動車に乗って移動するといった未来を想像していました。しかし今、そういう未来は来そうにない事を予感しています。「ヤマト」や映画「ブレードランナー」といった映像作品は、むしろ我々の文明がそうそう劇的に進化しない事を予想し始めた、はしりではないでしょうか。  

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」が描く西暦2199年の人々の文明の利器は、基本的に平成22(2010)年のそれと変わっていません。第一艦橋や波動エンジンの機関室等の様々な機器の操作子は、我々が扱っているものと全く変わらない。2199年の人々が見たらおそらく相当滑稽でしょう。

 しかしながら、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で、“ついこの間の過去”をやや詩情を織り込みつつ緻密に再現した山崎貴(やまざき・たかし)監督は、未来に突拍子もない文明を構築するくらいなら、我々の“今ここ”を未来に据えようと考えたのかもしれません。

 登場するメカに関して地球側のものは、ヤマトをはじめ概ねアニメでのデザインが踏襲されています。

 ヤマトは手描きのアニメではとてもできない作り込みが為されていて存在感があり、艦橋の窓から中で働く乗組員が見えるまでになっています。

 艦載機の格納庫の場面は、一見してフェリーボートでのロケだと判るのですが、少しも貧相な感じがありませんでした。また、火星でガミラスに敗れ帰還した沖田艦長と司令長官が建造中のヤマトへ向かうシーン、おそらく東京都内に造られた雨水を一時的に貯める為の巨大な縦穴(名称や所在地等を忘れました)で撮ったものではないでしょうか。二人の台詞にかかるリバーブも、エフェクターではなく生録されたものかもしれません。全編通じて、場面撮影を特撮かセットかロケかのアサインが絶妙だと思いました。

 艦載機ブラックタイガーが、アニメでは後継機であるコスモタイガーよりも格好よく見えました。また木村拓哉さん演じる主人公古代進の愛機コスモゼロは、劇中ちょっとした変身をするのですが、なんだか愛嬌を感じました。

 昨年の「宇宙戦艦ヤマト復活篇」もそうだったのですが、CGで描かれた戦闘機のドッグファイトシーン、後厄を過ぎた私の動態視力では、何が起こっているのか捉える事ができませんでした。

 沖田艦長が搭乗する旗艦等の戦艦の姿は、アニメのガミラス艦を艦首艦尾逆にし、地球風の艤装(ぎそう)を施した感があります。火星の脇を航行する地球艦隊を後ろから捉えた映像は、どうもそのことをかつての「ヤマト」を知る観客にアピールしているように思えました。

 「ヤマト」シリーズ第1、2、3作の敵側のプロダクトデザイン?は、およそ我々地球人の感覚から離れた生物的なフォルムを持っていましたが、今回はより怪異感を増しています。「ヤマト」というより、恩地日出男監督のアニメ映画「地球(テラ)へ…」のそれに少し近い気がしました。

 ヤマトに拿捕されたガミラス機から現れたガミラス兵のポージングが、なんだか金田伊功さんのアニメのように見えました。

 「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」のパンフレットには、監督やスタッフから、設定デザインやVFXに使用したアプリケーションの品名が明かされています。ちなみにガミラス兵のデザインは、“ZBrush”というコンピュータのデスクトップ上で粘度を扱うようにして造形できるものが使われたそうです。

 音楽や音についても少し記しておきます。

 佐藤直紀(さとう・なおき)さんの手によるBGMには、かつて宮川泰(みやがわ・ひろし)さんが作曲したアニメ版の主題歌や「無限に広がる大宇宙」(「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音参照)が、モチーフとして織り込まれていました。

 川島和子さんの歴史的なスキャットによる「無限に広がる大宇宙」は、先の小惑星探査機はやぶさ帰還を特集したテレビの映像で、滑稽なまでに多用されていました。「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」でのスキャットはYuccaさんです。先般放映が終了した、同じく佐藤直紀さん音楽担当の大河ドラマ「龍馬伝」でも、Yuccaさんのスキャットが聴けました。

 効果音に関して一つだけ記すと、アナライザーから出る電子音、「スターウォーズ」のR2D2と似ています。アナライザーがR2D2から影響を受けていると思っている人が、外国人はもとより若い日本人にもいるのですが、もちろん実際は逆です。しかしながら今回のアナライザーの音のおかげで、また誤解されてしまうような気がします。「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」で唯一、納得のいかなかった個所です。ただ、声をアニメ版と同じく緒方賢一さんが担当したのは嬉しかった。


SPACE BATTLE SHIP ヤマト
http://yamato-movie.net/index.html

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 「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」リリースの後、作曲者東海林修さんご自身の手によって、この作品をシンセサイザーでアダプトしたアルバム、「DEGITAL TRIP さよなら銀河鉄道999シンセサイザーファンタジー」が発表されました。

 手弾きよりもデジタルシーケンサーRoland MC-8のテンキーによるステップ入力での打ち込みがメインの無機的な演奏、ざらついた質感の金属的な音、空気感が感じられない空間系エフェクトの処理…。当時私が聴いていた冨田勲さんや喜多郎さん、あるいは後に聴き始める姫神せんせいしょんとは全く違う、およそ一般的な意味での情緒らしい情緒が排された音世界が広がっています。

 私にとって繰り返し聴く性質の音楽ではありません。しかしながら時々無性に聴きたくなる音楽であり、その機会を待っていたのですが、今回のCD化によって実現しました。

 収録曲は「未知への旅」「幽玄なるラーメタル」「最後の審判」「青春の幻影」「光と影のオブジェ」「運命の女」「約束の地」「サヨナラ」。「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」とはタイトルが異なっているナンバーがあります。

 使用機材はシンセサイザーARP 2600(電氣蕎麦さん参照)、Oberheim Synthesizer Expander Module(Tom Oberheim SEM-PRO、SEM with MIDI to CVを見ました参照)、Roland SYSTEM-700、JUPITER-8。ボコーダーRoland VP-330 Vocoder Plus(うねりを帯びた男声風パッド音参照)。ストリングスキーボードRoland RS-505、Solina String Ensemble。エレクトリックピアノFender Rhodes、YAMAHA CP80、リズムマシンRoland TR-808。デジタルシーケンサーRoland MC-8。

 コロムビアレコードはこの後、東海林さんはじめ錚々(そうそう)たるシンセサイザー/キーボード奏者によるアニメーション作品のBGMのシンセ化アルバム、「デジタルトリップ」シリーズを発表していきます。“デジタル”の語彙を冠していますが、実際はまだアナログシンセサイザーが全盛期であり、今日的に表現すればアナログトリップということになるのかもしれません。このシリーズのCDによる再発を待ちたいと思います。

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 LP時代を彷彿とさせる紙ジャケット、帯、そしてCDのデザイン。

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 Roland SYSTEM-700とMC-8。左端にはローランドのテープエコーとヤオヤ(Roland TR-808)。


DIGITAL TRIP ~さよなら銀河鉄道999 シンセサイザー・ファンタジー~
(Colombia Myusic Entertainnmenntより)
http://columbia.jp/prod-info/COCX-36079/

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 「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」は、昭和56(1981)年夏に公開されたアニメーション映画「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」のオリジナルサントラ盤です。2枚組のLPレコード及びカセットテープが発売され、後年、1部の曲を収録しない形でCD化されました。そして平成22(2010)年2月24日、今度は完全な形でのCDです。メディアにはHQCDが使われています。

 作曲は東海林修(しょうじ・おさむ)さん。「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」では、THE GALAXY名義で自らシンセサイザーを演奏しています。

 東映動画からBGM担当の話が来たおり、全曲をシンセサイザーでと申し入れたものの、東海林さん自身の危惧から1曲だけ効果的に、ということになり、純粋なクラシックスタイルの編成のオーケストラによる作品になったのだそうです。「序曲~パルチザンの戦士たち~」にはハーモニカが入ります。

 収録曲は、ディスク1が「序曲~パルチザンの戦士たち~」「若者に未来を託して」「メインテーマ~新しい旅へ~」「謎の幽霊列車」「車中にて~LOVE LIGHT~」「メーテルの故郷、ラーメタル」「再会~LOVE THEME~」「黒騎士ファウスト」「過去の時間への旅」。

 そしてディスク2が「青春の幻影」「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」「惑星大アンドロメダ」「生命の火」「崩壊する大寺院」「サイレンの魔女」「黒騎士との対決」「戦士の血」「終曲~戦いの歌~」「さよなら銀河鉄道999~SAYONARA~」。

 「LOVE LIGHT」「SAYONARA」は、メアリー・マッグレガーさんが唄ったボーカルナンバーです。映画ではエンディングタイトルロールに「SAYONARA」が流れました。これらの曲に東海林修さんは関わっていませんが、アルバム「DEGITAL TRIP さよなら銀河鉄道999シンセサイザーファンタジー」において東海林さんのシンセサイザーによってインストナンバーとしてカバーされました。

 「メインテーマ~新しい旅へ~」は、999号が地球の駅(戦争であらかた破壊されている)から発車するシーンに流れました。空へ伸びているカタパルトレールが崩落していく上を999が走っていくという緊迫感、そしてその危機を脱して宇宙へ飛び出すと太陽が顔を出すという緩急ある描写に沿って曲想が変わっていきます。

 この「メインテーマ~新しい旅へ~」は、平成17(2005)年7月から9月にかけてフジテレビ系列で放映されたドラマ「電車男」で、なぜかBGMとして頻繁に用いられました。

 「再会~LOVE THEME~」は、命からがら危機を脱してきた主人公星野鉄郎が、早朝のラーメタル駅のホームでメーテルと再会するシーンに流れました。

 メーテルのデザインは前作と全く変わりがないはずなのですが、今作品ではより美しくなっていて、作画監督小松原一男さん(故人)は周囲の人から女性観が変わったのかの冷やかされたそうです。このシーンの蒸気機関車の湯気の向こうに見えたメーテルは、当時13歳だった私にもたしかにまぶしかった記憶があります。

 そしてこのシーンが甘美でどこかほろ苦い感じがしたのは、ストーリーやビジュアルだけではなく「再会~LOVE THEME~」の効果もあると思います。東海林さん自らライナーノーツにおいてアルバム中屈指の佳曲としています。「再会~LOVE THEME~」は再会のシーンだけでなく、終盤の鉄郎とメーテルの別離のシーンにも流れました。

 ちなみに「再会~LOVE THEME~」をはじめ「交響詩さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」のピアノ演奏は、羽田健太郎(はねだ・けんたろう)さん(故人)です。

 「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」は、アルバム中唯一シンセサイザーによる多重録音作品です。999号が終着駅惑星大アンドロメダに近づいたシーンに流れました。このシーンの唯一はBGMだけでなく、アニメーションそのものも通常のセル画のものとは異質の、グラフィックアニメーションが使われました。画面の1点から絵の具のようなものが吹き出してきてそれが鉱物やガラス片を思わせる映像へとめまぐるしく変わってきます。

 「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」で使われたシンセサイザーの紹介はありませんが、曲中、ミキシングコンソールのオートパンポット機能を駆使して、終始ステレオ音場を左右に移動し続ける「ヒーン」という音は、ライナーノーツによるとコルグのシンセで作ったとの事です。

 映画の予告編のBGMはシンセサイザーのよるもので、おそらく「大宇宙の涯へ~光と影のオブジェ~」のプロトタイプではないでしょうか。

 曲中、「パピパーピッ、ポピパーパッ、パピポーピッ、ポピパピポッ…」と聴こえるフレーズがあるのですが、この音を聴いた当時、冨田勲さんがシステムシンセサイザーmoog III p(モーグスリーポータブル)で出している“パピプペ親父”(「ゴリウォーグのケークウォーク」「火星」「木星」「パゴダの女王レドロネット」等)に似ていると思いました。

 「崩壊する大寺院」は、退避していく999号を追って戦闘衛星が浮上し、後ろから車両を次々と撃ち落とし、救援に来たアルカディア号と激しく砲戦を繰り広げるというシーンに流れました。めまぐるしく変わっていく映像に曲の展開が完全に合致しています。編集して曲を合わせるのではなく、譜面、つまり編曲の段階で既に完全に合わせているのです。

 またこのシーンを描いたのは金田伊功さんで、映画「1000年女王」についてで「信貴山縁起絵巻」の「飛倉巻」に似ているとしたカットもあります。ビームの照り返しや爆発の描写は、金田伊功さんの特徴がよく出ています。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形でも触れましたが、ソフトウェアによる演算ではこんな動きは導き出せないと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト」の編集版の劇場公開に始まるアニメブームの頃、BGMがとても大掛かりなものでした。シンセサイザーを始めた頃、私は様々な音を模写したのですが、この頃のアニメーション映画の音楽は大編成のオーケストラが多く、ストリングスのトレモロ奏等各楽器の様々なテクニックが、クラシックよりも大げさに強調されていて分りやすく、本当に勉強になりました。

 何もかもが、小ぶりな、あるいは小作りな、そして姑息な感じのする今の時代に、この頃のアニメーション映画のありとあらゆる要素が、なんだか新鮮に感じます。

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 CDを引っ張り出して思わず笑みが…。アナログレコードを彷彿とさせます。今の時代、思い出は、時にアイディアへと変わるのだということを、ひしひしと感じます。

 「DEGITAL TRIP さよなら銀河鉄道999シンセサイザーファンタジー」へ続きます。


交響詩 さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-
(Colombia Myusic Entertainnmenntより)
http://columbia.jp/prod-info/COCX-36077-8/

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 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音からの続きです。

 これまで宇宙戦艦ヤマトの姿は、波動砲の砲門とバルバスバウ(球状艦首)に目線を置いてデフォルメしたアングルが多く、それは今回の映画のポスターや波動砲発射時のカットに踏襲されているのですが、私は子供の頃からこの構図が好きではありませんでした。小学生の頃、作ったプラモデルを様々にかざしながら、動くヤマトをこんな角度から観てみたいなと夢想したものです。

 今回のCGで描かれたヤマトは、デフォルメを排した現実的な見え方が多く、子供の私がプラモデルのヤマトを手にして見ていたアングルがスクリーンで展開していて本当に驚きました。あるいは今回ヤマトを描いたスタッフも、子供の頃、私と同じようなことをしていたのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト」のメカの姿は、(あくまで空想上の)宇宙船のデザインの流れを変えたと思います。それまで大阪万博のパビリオンのような滑らかなものが主流だったのが、無骨でいて生物的なものへと変わっていったと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」は、これまでの松本零士さんの漫画の雰囲気から外れたものになっています。CGで描き動かすという前提があるからか、緻密に“設計”されたものになっていると思います。

 地球艦隊の艦艇は、これまでのヤマトのものがある程度踏襲されています。テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト2」に出てきた、旗艦アンドロメダや主力戦艦の形状やカラーリングが取り入れられています。セル画時代よりも遥かに存在感を持ってスクリーンに浮かんでいました。

 1隻あたり10万人を収容できる地球の宇宙移民船の姿は、大阪市立科学館か大阪梅田及び東京秋葉原にあるヨドバシカメラさんの建物に似ています。スクリーンではこの移民船の大船団が、何だか湾岸3丁目で働いていた頃、東京湾に面した川でよく見かけたボラの大群のように見えました。

 ベルデルやフリーデの戦艦や艦載機はいずれもプランクトンや腸内菌のような姿をしています。後に記す航海灯の描き方が一考されていて、どんな形状をしているのかスクリーンでははっきりとは捉え難かったのですが、それゆえ異様な存在感がありました。

 SUSの要塞を守る大量破壊兵器の形状が、東京都庁に似ています。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の原案者の方は、現在都知事をされています

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」のメカは、CGで描かれつつもかつてのセル画の風合いも継承しています。映画パンフレットによると、セルシェードという技術を駆使したそうです。かつてのヤマトも動くセル画だけでなく、1枚の背景画として描かれたりしたのですが、今回はより様々な質感のヤマトが見られました。省略して描かれがちだった部分(パルスレーザー等)も緻密に描かれています。

 地球やSUS以外の宇宙艦の放つビームの弾道に関して、セル画時代の粘着感と、弧を描いて意外にゆっくりと目標に到達する描き方が継承されています。しかしSUSのビームだけは、鉱物質というか、光というより光る石の槍が飛んでいる感がありました。極めて不確かな記憶なのですが、映画「ヤマトよ永遠に」冒頭の戦闘爆撃機が地球の都市を空爆するシーンの、通常の透過光ではなく、たしかアルゴンレーザーを光源にして撮影されたビームが、このSUSのビームに少し似ていたような気がします。

 宇宙艦の航海灯や窓の灯りの見え方が、セル画時代よりも鮮明になっています。ソフトウェア上で光源を指定すると、光だけでなく影まで付けてくれるそうで、立体感が出ています。劇中に登場する宇宙艦に関して、その形状と光る部分がリアルだからか、なんだか宇宙船というより高層ビルが宇宙空間に浮かんでいるような感じがしました。

 形状や性質、光源、動き等に関する情報を打ち込むとソフトウェアがシミュレーションしてくれるというのは、映像に現実感を持たせたり、手描きのムラを排することができるといったメリットはあると思うのですが、その一方で、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」を観ていて、手描き故の非現実的な動きや視点が無くなっていることの寂しさも感じました。

 昨夏亡くなったアニメーターの金田伊功(かなだよしのり)さんの炎や光、人物やメカの動きは、時に物理的には絶対にあり得ないものがありました。

 例えば映画「1000女王」で、ラーメタル機が画面中央奥から右手前に突進してくるカット、一瞬、機体の右半分がせり出しています。こういうことは物理的には絶対に起こらないのですが、画面に独特の加速感が出ていました。

 また映画「銀河鉄道999」の同じく金田伊功さんが担当した惑星メーテルでの戦闘シーンにおいて、射撃や爆発等の照り返しや火炎の動きが実に細かく描き込まれているのですが、これはこの場所で射撃や爆発が起こればどう光るか、ではなく、描き手の、どう光らせたいか、という意図が反映された映像でした。

 物事には、揺り返し、反動が必ずあると思うのですが、今挙げた物理ではなく意図を体するスタイルに対する欲求が高まった時のことを考えると、あまり今何もかもを性急にCG化してしまうと、将来、金田伊功さんのような人が現れる素地が完全に失われるような気がします。

 アナログシンセサイザーが大嫌いな私が、時にアナログシンセの記事を書くのも、私が知っていることをネット上に置いておけば、将来アナログシンセサイザーに興味を持った人の役に立つのではないかという意図があるからです。蒐集癖系シンセ趣味人の物欲譚や思い入れ話なんか見聞きしても、全く役に立ちませんから。

 かつて「宇宙戦艦ヤマト」が放映されていた昭和49(1974)年頃、ゲイラカイトというアメリカから来た凧(たこ)が流行っていて、私も大きな目玉がトレードマークのスカイスパイを揚げていました。時は流れて平成22(2010)年の正月、淀川の河川敷でスカイスパイが揚がっているのを見て、感慨深いものがありました。

 善きにつけ悪しきにつけ、人間ってそうそう次から次へと新しいものを創っていく力は無いというか、必要としていないのかなと思いました。誰かが思い出したようにゲイラカイトを揚げるのと同じく、今後も「宇宙戦艦ヤマト」は作られていくのかもしれません。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」が発売されます「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形に続きます。


ゲイラカイト(株式会社AG)
http://www.agport.co.jp/products/toy/gayla.html
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 アニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト復活篇」を観ました。

 かつて小学生の頃、「宇宙戦艦ヤマト」の本放映及び再放映、そして劇場公開作品を観た人間として、この作品の公開を過ぎ越すことはできませんでした。

 物語そのものは、主人公古代進(こだい・すすむ)が、復元されたヤマトを駆って3億人の移民船団を目的地に到達させるまでのスリルは良かったのですが、相変わらず全体的に齟齬が著しく(「宇宙戦艦ヤマト」にこれを言っても仕方ないか…)、かつて“いい人”だった古代進が家庭を顧みない男になっているのは新鮮なものの、他の登場人物が今まで以上に浪花節的で生々しさが無く、楽しめませんでした。

 しかしながら「宇宙戦艦ヤマト復活篇」は、歴代「宇宙戦艦ヤマト」同様、音楽や音響の空間として、またデザインや美術の画廊として、様々思うところの湧いてくる作品でした。

 このブログでは旧作をも併せる形で、音楽や音に関する事柄を「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音、そして視覚上の事柄を「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の形として記したいと思います。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の音は、BGMとヤマトの特徴的な効果音を混在させる形で記したいと思います。本来、音の無い宇宙空間に鳴り響く砲声や航行音等の効果音は、ノイズ音楽なるカテゴリーが存在する今日に於いて、音楽の一種として考えていいのではないかと思ったからです。

 私が音楽や音を特に意識して聴くようになったのは「宇宙戦艦ヤマト」テレビシリーズ第1作からです。今日に至るまでインストゥルメンタルの音楽を嗜好することや、音を脳裡でカタカナの擬音に置き換えたり、文章で書き表す癖がついたのは、文字通りヤマトの影響によるものなのですが、その後、シンセサイザーを知ることによって、それらをひとくくりに捉えるようになりました。脳裡でカタカナの擬音に置き換えたり、文章で書き表す等の鍛錬のおかげで、音の径時変化を具体的にシナリオ化できるようになり、数多のパラメーターを有するデジタルシンセを自らの意のままに使えるようになりました。

 BGMに関して、宮川泰(みやがわ・ひろし)さんがこの世にいない事の影響は、今更ながらあまりにも甚大だと思いました。ヤマトの音楽は、登場する人物やメカや現象等に対して、各々メロディが作られることが多く、さらにそのメロディを宮川さんが用途に応じて変幻自在に編曲し、情景描写や心理描写に深味を加えていました。しかしながら今回は既製の曲でBGMが構成されていて、何だか民放の旅番組みたいな、至極適当な選曲が為された感があります。

 ただ、冒頭の宇宙空間のシーンで、川島和子さんのスキャットが聴こえてきたときは、やはり感動しました。漆黒の闇と煌めく光芒の充満する空間を、こんな簡素なメロディで表現できている曲を他に知りません。またこの曲は私の世代の一部にとって、ある種、郷愁を帯びた曲でもあります。ヤマトを観ていた時代の空気感をも想い起こさせてくれます。小学生の時に耳にして以来今日に至るまで、夜空を見上げた時に最も頻繁に私の脳裡に鳴り響く音楽は、冨田勲さんでも喜多郎さんでも姫神の「星が降る」(アルバム「まほろば」より)でもなく、川島和子さんの歴史的なスキャットによるこの「無限に広がる大宇宙」です。

 SUS軍の巨大要塞の登場シーンに、エドバルド・グリーグのピアノ協奏曲が使われていたのですが、この曲、私の中ではかなり以前にコントのBGMに頻繁に使われていたことが染み付いていて、冒頭のあのピアノのフレーズを聴いただけで吹き出しそうになりました。吉本新喜劇のオープニング「Somebody Stole My Gal」、手品で使われる「オリーブの首飾り」(ポール・モーリア)、成人男性向けの劇場や加藤茶さんのコントで使われる「タブー」(マルガリータ・レクオーナ)同様、本来とは違う形で私の脳裡に組み込まれてしまった曲なのと、このあたりからストーリーの崩壊具合が加速することとも相まって、妙に印象に残ったシーンでした。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」で特に印象に残った効果音は、地球の第1次移民船団を奇襲攻撃する為にSUSの艦隊がワープアウトして来る時のミステリアスな音でした。まだ映画が公開中であり、詳しくは書けないのですが、SUSはこの映画に登場する地球その他の星の人類とは異なった存在であり、この効果音は、単にメカの音ではなく、SUSに対する印象を他の星々の人類とは違う感じを与える効果も加味できているような気がします。

 ただ、全体的に一つ一つの音の作りに旧作のような手間が感じられませんでした。例えば「宇宙戦艦ヤマト復活篇」のヤマトの主砲の砲声は、「バスーン!」という単純なものでした。しかしながら旧作は砲門が光ってから射撃が終わるまでの砲声の径時変化が複雑で、砲声という一つの音を作る為の手間がうかがえるものでした。また砲塔が目標へ向けられる時の動作音が、そもそも「宇宙戦艦ヤマト復活篇」では入っていないのですが、初期のヤマトには実際の機械のものと思われる鈍い音が付けられていて、生々しさがありました。また旧作では砲身の上下角を固定する、「ギキュキュキュッ」という音が添えられていました。

 効果音の迫力に関して、やはり柏原満(かしわばら・みつる)さんの手による旧作に軍配を上げざるを得ません。ジョージ・ルーカス監督の「スターウォーズ」が公開された時、効果音はハリウッドより日本のアニメーションの方が優れていると、子供心に感じたものです。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」でも、一部旧作群で柏原満さんの手によって作られた効果音が使われていました。きしむような音と機関音とノイズで構成されたヤマトの航行音、ヤマト艦内の環境ノイズ、波動砲のエネルギーの充填音がそれです。「宇宙戦艦ヤマト復活篇」のエンディングタイトルロールに、“協力”という形で柏原満さんのお名前がありました。

 「宇宙戦艦ヤマト」以前の異星人の宇宙船の音、例えば「ウルトラセブン」等は、おそらくハモンド等の電気オルガンを使ったであろう「キーン」という金属的な音だったのですが、ガミラスや彗星帝国の宇宙艦の航行音は、オートレースのバイクや競艇のエンジン音のピッチを下げたような音で、存在感を与えていました。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」には全く無いのですが、旧作にはガミラスや彗星帝国などの基地や政庁の中に、絶えず独特の環境ノイズが流れていました。例えばガミラスの場合、「ドゥーン、ドゥーン、…」という音と水泡のような音が多重録音されたものが流れていました。こういった音、今ならノイズ音楽のカテゴリーに入るのではないでしょうか。

 「宇宙戦艦ヤマト」の頃、効果音に使われたシンセサイザーはminimoog(ミニモーグ)、松田昭彦さんによる「銀河鉄道999」「1000年女王」「機動戦士ガンダム」等の効果音のシンセはARP 2600(電氣蕎麦さん参照)だそうです。

 ちなみに「宇宙戦艦ヤマト」の放映が始まった昭和49(1974)年、冨田勲さんのアルバム「月の光」が日本より先にアメリカで「SNOWFLAKES ARE DANCING(雪は踊っている)」としてリリースされ、またアナログシンセサイザーmini KORG 700S(喜多郎mini KORG 700Sリード参照)及び800DV、Roland SH-3が発売されました。

 ガミラス軍の冥王星基地から、超大型ミサイル(旅館によくあるエアホッケーのスマッシャーのような姿をしている)が発射されるシーンの音楽(「宇宙戦艦ヤマト」BGM集の「サスペンスB」)に、救急車のサイレンのような音が入っているのですが、おそらくこれもminimoogで作ったと思われます。

 「宇宙戦艦ヤマト2」の初回始端カット(白色彗星が飛来してあのパイプオルガンの音楽が流れ出す前)と、最終回の終端のカット等で流れた“宇宙の音”は、これも今なら音楽として位置づけられるのではないでしょうか。“宇宙の音”は絶対に存在しない音であり、作り手の感性に依拠した抽象的な音なのですが、そのことが結果的に音楽的な仕上がりになってしまうのだと思います。

 そういえば私が高校生の時に観た映画「海に降る雪」の主人公は、テレビ番組の効果音を作る人なのですが、“地球が回転する音”を求められて苦悩する場面がありました。映画の最後にその“地球が回転する音”が鳴ったのですが、どんな音だったか完全に忘れてしまいました。ちなみに劇中、主人公が使っていたのはアナログシンセサイザーKORG MS-20でした。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」のエンドタイトルには、たしか「宇宙戦艦ヤマト復活篇第一部完」と出ました。次作の効果音は柏原満さんを起用していただきたいと思います。私が次作を観るかどうかはわからないのですが…。


平成22(2010)年1月15日追記。

 本文中、異星人の基地や政庁内の環境ノイズに関して、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」には全く無いとしたのですが、その後、ご覧になった方から、SUSの巨大要塞の司令部のような部屋に、環境ノイズが流れていたとのご指摘がありました。


平成23(2011年)11月9日追記。

 まず訂正を。

 文中で

砲塔が目標へ向けられる時の動作音が、そもそも「宇宙戦艦ヤマト復活篇」では入っていない

としたのですが、入っていました。以下の動画投稿サイトの映像にあります。

http://www.youtube.com/watch?v=uvFM-GFhp7E&feature=related

 また、ヤマトの主砲の射撃音の新旧を比較した投稿を見つけました。

http://www.youtube.com/watch?v=IddppU8p2qs

 それと、既に廃盤になっているようなのですが、平成8(1996)年3月、コロムビアレコードから出たサウンドファンタジアシリーズの「宇宙戦艦ヤマト」に、音楽と併せて柏原満さんの手による効果音が収められています。Amazonさんで試聴する事もできました。

 本文中の

砲門が光ってから射撃が終わるまでの砲声
砲塔が目標へ向けられる時の動作音
砲身の上下角を固定する「ギキュキュキュッ」という音

が「11.主砲」として、また、

ヤマト艦内の環境ノイズ

が「21.第一艦橋」、

波動砲のエネルギーの充填音

が「10.波動砲」、

ガミラスの政庁や基地内の「ドゥーン、ドゥーン、…」という音と水泡のような音が多重録音されたもの

が「32.ガミラス基地」、

宇宙の音

が「01.オープニング」として収められています。

 「11.主砲」はNHK「ダーウィンが来た!」で、カンムリブダイが脱糞する効果音として使われていました。


劇場用アニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト復活篇」
http://yamato2009.jp/index.html


平成24(2012)年1月10日追記。

 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」が、DVD/ブルーレイで発売されます。また東京と大阪の劇場レイトショー公開されます。ストーリーや映像等の再構成に加え、当ブログとして特筆すべきは、柏原満さんの手によるあの効果音が復活するという事です。

 以下で予告編が公開されています。

http://yamatocrew.jp/crew/dc/pv02


 「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」が発売されます「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の音「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」の形に続きます。


平成25(2013)年2月13日追記。

 「Sound Fantasia 宇宙戦艦ヤマト」(2枚組)が、平成26(2014)年3月「ETERNAL EDITION YAMATO SOUND ALMANAC」の一つとして再発されます。


ETERNAL EDITION YAMATO SOUND ALMANAC
http://columbia.jp/yamato/

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 アニメーターの金田伊功(かなだ・よしのり)さんが、7月21日、心筋梗塞で亡くなりました。57歳。

 このブログではかつてアニメーション映画「1000年女王」についてで、金田伊功さんについて触れています。

 私が小学校高学年のころ、テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」を劇場用に編集した作品が大ヒットしたことに端を発した、所謂アニメブームが起こっていました。私もそれに煽られる形で「銀河鉄道999(スリーナイン)」や「地球(テラ)へ…」「ヤマトよ永遠(とわ)に」といったアニメーション映画を観に行きました。ストーリーは全く楽しめなかったのですが、映像や音響、BGMに関して、私の今日に通ずる嗜好を醸成する淵源となりました。

 そして自分が観る作品の中に、ある共通した独特の画風のシーンがあることに気づきました。構図がどこか日本画的なのと、単にアルカディア号やコスモタイガーといった対象物が動くだけでなく、観る側の視点のみならず身体そのものの移動も考慮したようなスピード感のあるアニメーション…。私が意識した頃にはもうその筋の月刊誌では特集が組まれていて、その画風の主は金田伊功さんという有名人であることが判りました。

 中学から高校にかけて、興味の対象がシンセサイザーを駆使した音楽や音響に移ってしまったので、その後、アニメーション映画がどういう風に変わっているのか知らない(宮崎駿さんの作品をテレビで観る程度)のですが、かつて私が興味を憶えた金田伊功さんのシーンは、おそらく今観ても色あせていないと思います。

 先に挙げたアニメーション映画のDVDを買って観てみようかなと思います。私が気に入っていたのは「銀河鉄道999」の惑星メーテルでの終盤、「地球へ…」のミュウと地球軍の戦闘、「ヤマトよ永遠に」のコスモタイガーが基地を空爆するシーン、「さよなら銀河鉄道999」での星野鉄郎と黒騎士ファウストの最初の決闘(鉄郎の表情が秀逸。金田伊功さんはメカだけでなく人物の心理描写にも長けていました)、及びアニメーション映画「1000年女王」についてでも触れた戦闘衛星が999号の客車を1両ずつ撃ち落としていくシーン、「幻魔大戦」の終盤(ちなみにこのシーンのBGM担当は“シンセサイザーの巨人”キース・エマーソンさんです)といったところです。

 10代初めの私に刺激を与えてくれた金田伊功さんに、心から感謝したいと思います。おそらく私は金田伊功さんが絵でやっていたようなことを、シンセサイザーを使って音でやりたいのだと思います。


7月25日追記。

 来る平成21(2009)年8月30日(日)東京都杉並区の杉並公会堂で、「金田伊功を送る会」が催されます。アニメーション制作業の関係者だけでなく、一般の人の参加もできます。詳しくは、以下で。


「金田伊功を送る会」(アニドウ・ホームページより)
http://www.anido.com/html-j/kanada-j.html
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 私が喜多郎さんの作品の中で最も気に入っている「1000女王」オリジナルサントラ盤とそこに収録された楽曲、あるいは劇中でのみ使用されたBGMに関する記事を予定しているのですが、その前に東映動画制作のアニメーション映画「1000年女王」について、あくまで断片的にですが雑感を記したいと思います。

 この映画のBGMへの喜多郎さんの起用は、アルバム「OASIS」のライナーノーツを松本零士さんが担当した事が縁だと聞きました。またこの頃、NHK特集「シルクロード」の音楽の成功でちょっとした喜多郎ブームが起こっていた事も起用の理由の一つだと思います。

 この映画公開の数ヶ月後、喜多郎さんは初めての全国ツアーを敢行するのですが、チケットを手に入れる為に発売日にかなり早めにチケット売り場へ行った所、すでに長い行列が出来ていました。このツアーに関して大阪では追加公演も行われました。今日とは隔世の感があります。

 映画「1000年女王」は昭和57(1982)年3月に公開されました。原作は松本零士さんが産経新聞に連載していた漫画です。また連載と平行する形でテレビアニメも放映されていたのですが、劇場版はこの頃流行っていたテレビシリーズを編集構成したものとは違い、完全なオリジナル制作でスタッフもテレビとは別編成でした。

 舞台は1999年の東京や筑波山麓なのですが、都内は自動操縦の浮遊自動車が透明チューブ道路の中を走り、筑波市街中心には巨大な塔(原作ではたしか1000メートルタワーとなっている)がそびえていました。

 平成11(1999)年、私は東京に住んでいましたが、浮遊自動車も透明チューブ道路も見る事はありませんでした。ただ林立する高層ビル群は西新宿や臨海副都心でこの映画そのままに実現しています。

 アニメーション部分の絵柄に関して「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」よりも、松本零士さんの漫画のタッチにより近いものがありました。背景画は春霞みのラーメタル星の都市の淡い景観や硬質な東京の景色、銀河系とそれと同規模の小宇宙が交差するシーンが印象に残っています。

 私はこの映画が公開された頃日本画に興味を持っていたのですが、白いマスクをかけピントをぼかして撮影したと思われるラーメタル星の都市の遠景や主人公雪野弥生の居室が、およそ日本とはかけ離れたモチーフであるにも関わらず日本画に似ているような印象を持ちました。

 そういえばラーメタル星を発進した巨大な宇宙移民船が画面右奥の地球に向かって進んでいくカット、構図が広重の浮世絵的な感じがしました。このシーンを描いたのは金田伊功(かなだ・よしのり)さんというアニメーターなのですが、この人が描いた「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」での、戦闘衛星が999号の客車を後ろから1両ずつ撃ち落としていくシーンの乗客が前の車両に退避していくカットが、「大絵巻展」で触れた「信貴山縁起」の「飛倉巻」での慌てふためく人々の動きに酷似しています。ちなみに金田伊功さんは奈良県の出身だそうです。信貴山は奈良県にあります。

 多くの小説や映画等で異星人と地球人の戦いが描かれる場合、たいてい終盤あたりまで科学力に勝る異星人側が優位に立っているものなのですが、この「1000年女王」は開戦当初から地球側が圧倒的に優勢で、主人公の中学生が博物館に動態保存展示されていた零式艦上戦闘機(ゼロ戦)を駆って、ハイテクの塊であるラーメタル星の戦闘機と戦ったり、弩(ど:据え付け式の弓。射手の声を松本零士さんが担当していました)や投石機、銃を手に戦う地球人(関東平野在住の人々、その中には松本零士さんのお姿もありました)が、あっという間にラーメタル星のエスタブリッシュメント達が乗った巨大な宇宙船になだれ込んでいきました。

 科学力では遥かに勝るものの戦争を知らないラーメタル人を地球人が殺しまくるというシチュエーションは、松本零士さんの人類への痛烈な皮肉と、しかしこういう局面では断固戦わなければならないという二つの考えが込められているような気がしました。二つの星の共生を願った1000年女王はその仲裁の最中に負った怪我がもとで命を落とし、生き残ったラーメタル人はその棺を奉じて宇宙の彼方へ去っていきました。

 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」などという間抜けな前文の憲法を推し頂き、安直に共生を口にする平和ボケした日本人(インターネットのおかげでかなり減りましたが)を見るにつけ、現実はこの映画のようにはいかないと思います。日本を窺(うかが)う特定アジア人は、ラーメタル人のように理知的でも謙虚でも心優しくもありませんから。

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 映画「1000年女王」パンフレット。

 「1000年女王」オリジナルサントラ盤について(1)に続きます。

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