平成28(2016)年5月5日、作曲家・シンセサイザー奏者の冨田勲さんが亡くなりました。

 冨田勲さんは、昭和7(1932)年4月22日東京生まれ。慶応大学在学中から作曲活動を始めました。テレビや映画のBGMを書く、所謂劇伴音楽家としてのキャリアが、量及び期間とも大と思われます。

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 ただ、私が冨田勲(とみた・いさお)さんのお名前と成果物をはっきり意識したのは、moog III p、system 55、Roland SYSTEM-700といったシステムシンセサイザー(KYOTO FESTIVAL of MODULAR 2015に行ってきました 参照)等とMTR(マルチトラックレコーダー)を駆使して、一人多重録音という形で制作されたアルバム「ダフニスとクロエ」(作曲:モーリス・ラヴェル)でした。

 その事もあり、私としてはこの記事において、シンセサイザー奏者としての冨田勲さんについて触れたいと思います。

 なお、冨田さんは1980年代初頭、ご自身の職業というか肩書きを、“サウンドパフォーマー”(音の演出家)としていました。古山俊一さんの「シンセサイザーここがポイント」(昭和57:1982年音楽之友社刊)の裏表紙のコメント等で、その表記が見えます。

 昭和54(1979)年のクリスマスに知人宅に行ったおり、そのかなり年上の兄上の部屋で、冨田さんの「ダフニスとクロエ」を聴きました。音に誘われるように勝手に部屋に入ってきた私が神妙に聴いている事に気付いた兄上が、「この鳥のさえずりやらバイオリンやら口笛やら清流の音やら…みんなシンセサイザーっていう楽器から出てるんや。たくさんの音が同時に鳴ってるけど、弾いている人は一人なんや」と説明してくれました。

 これがシンセサイザー奏者としての冨田勲さんの作品、そして、シンセサイザーという楽器や一人多重録音という手法に興味を持った瞬間でした。

 小学6年生だったその冬休みを、私はもっぱら冨田さんやシンセサイザーについて調べる事に費やしました。件の兄上にレコードを借りたり、本屋でシンセ関連の書籍を立ち読みし、そして、生まれて初めて楽器店に出かけてシンセサイザーに触れました。昭和55(1980)年、1980年代の幕開けを、冨田さんやシンセサイザーに対する関心が脳裏に満ちた形で迎えました。

 アルバムライナーノーツでの冨田さんの言葉や実際にシンセに触れてみて、他の楽器と根本的に異なり、この楽器には固有の音が無く、自分で作る事ができる、そして多重録音という方法を使えば、自分一人でバンドやオーケストラを持つ事ができるという事を理解しました。それまで楽器演奏に全く興味がありませんでしたが、自分の楽器はこれしかないと思いました。

 そして、意識してテレビやラジオから流れてくる音楽や効果音を聴いてみると、実はその時点で既にシンセサイザーはかなり使われていました。しかしながら、それらが私の心に響かなかったのは、冨田さんのシンセと異なり、それらの音がシンセ音である事を誇示するような、特性を押し出す、あるいはそれに依拠した感のあるものばかりだったからでした。

 本来“有機的”という言葉に対義語は無かったはずなのですが、シンセ関連の書籍で“無機的”という言葉が使われ始めていました。いつの間にか私の周りにあふれていたシンセサイザーを使った音楽や音は、遺憾ながら無機的でした。

 冨田さんのシンセ演奏には、音色の径時変化の緻密なシナリオ、丁寧な音量のコントロール、擦弦楽器風の音色で弓の返し時のような音の途切れが入れられていて、マニュアル感がありました。また、最初に気づかされたのは東祥高さんや姫神せんせいしょんの吹奏楽器風の音色でしたが、冨田さんのそれにも、息継ぎの間(ま)がありました。シンセには弓の返しも息継ぎも物理的に全く必要ありませんが、冨田さんの脳裏で鳴っている音色は、弓は上げ下げされ、息を吹き込めば今度は吸いたくなるという現象が起きていて、それをシンセに込めたのではないかと思いました。

 平成10(1998)年のある深夜、野村芳太郎監督の映画「しなの川」(昭和48:1973年)のテレビ放映を観ました。冒頭鳴りだしたオーケストラとコーラスの音楽が、なんだか冨田さんのシンセ作品のような雰囲気だったのですが、オープニングスタッフロールに「音楽 冨田勲」と出ました。楽器が変わっても冨田さんの音の特徴は現れるという事を知りました。

 また、私は聴けていないのですが、かつて冨田さんが編曲した「展覧会の絵」(作曲:モデスト・ムソルグスキー)が、後のシンセ版アルバム「展覧会の絵」とそっくりだという話も目にしました。

 minimoog(ミニモーグ、否、この場合、ミニムーグと発した方がいいでしょうね)の音、prophet-5の音…あるはずの無い“シンセサイザーの音”とやらが汎世間的に凝固して、皆で仲良く使いだして今に至っているのですが、冨田さんはアコースティック楽器や人声ですら、音にご自分をにじませる事ができていました。

 そういえば、冨田さんの有名な言葉、
このシンセサイザーはどんな音がするのかという質問は、このバーベキューセットはどんな味がするのかと言っているのと同じ事
は、シンセサイザーの音はその奏者の中にあるはずという考えを、端的に表現していると思います。

 私が冨田さんやシンセに興味を持った頃、デジタルシーケンサーは世に出ていたのですが、それを使った音楽のことごとくが、いかにも打ち込みといったものばかりでした。冨田さんの「ダフニスとクロエ」は、その演奏の多くをデジタルシーケンサーRoland MC-8で行なっていたのですが、手弾き以上の繊細な表現が為されています。デジタルシーケンサーの特性に乗っかった無機的な表現ではなく、脳裏で起こっている事をMC-8に打ち込んだという事だと思います。

 ちなみに1980年代初頭、ご自身をキーボーディストだと思いますか、という問いに対して冨田さんは、
キーボードを鍵盤だけでなくMC-8のテンキーも含めるという事でしたら、私はキーボーディストでしょうね
と答えています。

 それにしても冨田勲さんが、なぜかくもオリジナリティを発露させ続ける事ができたか…もちろん先天的な適性が大だとは思うのですが、それ以外に、冨田さんが昭和7(1932)年生まれ、つまり、所謂昭和ヒトケタであるという事も関わりがあると思います。

 冨田勲さんは、昭和20(1945)年8月15日の終戦を13歳で迎えました。この世代は、あの日を境の世の中の価値観の変化をうまく受け入れられず、その後、種々のセオリーを信じきれないところがあるといいます。

 こうだと決まっていたものが、ある日突然覆(くつがえ)された、という体験は、その後、少なくとも音楽家としての冨田さんに、むしろプラスに働いたのではないでしょうか。

 クラシックはこういう形で演奏されなければならない、オーケストラの各楽器は音場上この位置に配されて聴こえていなければならない、シンセサイザー等電子楽器の音は「ピコピコ」「ブー」「ジュイ〜ン」「トキオ!」でなければならない…明確に定められた形(かた)であれ、世間がいつの間にか作り上げた“なんとなく”なお約束であれ、それらは自分の外での事であって、クラシック音楽をシンセで弾く、シンセに弓の上げ下げをさせる、息継ぎをさせるといった事は、自分がしたいからするのだ、という事なのだと思います。

 私から見て、シンセサイザーの音色で自分の世界を構築できたプロの演奏家のことごとくが日本人なのですが、その幾人かは既に奥津城の人になってしまいました。今、この訃報に接して、作品が残る限り冨田さんが精力的に活動している音楽家である事に変わりはないと思いつつも、シンセサイザーの使われ方に、残念ながら一つの終わりが来たという事を実感せざるをえません。

 子供の頃から今に至るまで何をやっても長続きしない私が、シンセサイザーとだけはこうしてつきあっている事、あげくこんなブログを10年以上書いている事は、原点が冨田勲さんだったからだと思います。

 私が持っている冨田作品の中で最も新しいものは、アルバム「惑星 ULTIMATE EDITION」なのですが、「銀河鉄道の夜」や、私が冨田さん、否、人類がシンセサイザーで演奏した音楽の中で最も美しい作品だと思っている「亡き王女のためのパヴァーヌ」を収めたアルバム「オホーツク幻想」等、冨田さんの近作も手にしたいと思います。

 素晴らしい音楽を聴かせてくれた事に感謝いたします。冨田勲さんのご冥福を祈ります。

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# by manewyemong | 2016-05-10 22:57 | 音楽 | Comments(0)
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 平成28(2016)年4月9日から5月22日まで奈良国立博物館で催されている、特別展「信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」を観てきました。

 私にとって絵巻というテーマの特別展は、平成18(2006)年4月24日から6月4日まで京都国立博物館で催された「大絵巻展」以来です。

 「信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)」は、平安時代中期、信貴山に修行した命蓮(みょうれん)という僧の、仏教説話というよりは多分に神仙譚のような伝説的なエピソードを絵巻に描いたものです。

 「信貴山縁起絵巻」は、平安時代後期に成立し、永く信貴山の朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)に伝わり、現在は奈良国立博物館に寄託されています。

 私と「信貴山縁起絵巻」の出会いは、私が小学校へ入学したおり、親からプレゼントされた学習百科大事典(学研)第1巻「日本の歴史」の、奈良~平安時代の記述の中に使われた数点の資料画像でした。「尼公巻」の大仏殿の場面等がありました。

 また、それより後、澁澤龍彦(しぶさわ・たつひこ)の「東西不思議物語」(河出文庫)19章「リモコンの鉢のこと」で、「山崎長者巻」の、空を飛び、物を運ぶ鉢の話を知りました。

 その後、中学校の図書室の美術関係の蔵書の中に、「信貴山縁起絵巻」に関するものを見つけました。

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 「信貴山縁起絵巻」は、「山崎長者巻」「延喜加持巻」「尼公巻」の3巻から成っています。今回の特別展では、この3巻を期間中入れ替えなく同時に観る事ができます。

 「山崎長者巻(やまざきちょうじゃのまき)」は、「飛倉巻(とびくらのまき)」とも呼ばれ、信貴山から飛来する托鉢鉢へのお布施を長者が渋ったところ、鉢が長者の蔵ごと運び去ってしまい、長者達が命蓮の元へ行き、蔵の返還を要求すると、今度は蔵の中の米俵群が長者の家へ飛び帰る、という顛末を描いています。澁澤龍彦の「リモコンの鉢のこと」はこれです。

 ちなみに山崎とは、後世、羽柴秀吉と明智光秀が合戦した場所。山崎から信貴山までは直線で約34kmあります。

 空飛ぶ鉢が倉を運び去る、あるいは米俵群が飛来する光景に慌てふためく人々の表情が、どこか面白おかしく、そして、いきいきと表現されています。

 昭和56(1981)年夏に公開されたアニメーション映画「さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅」終盤、主人公によって救出された“生身の人間”達を乗せて発車した999号が、追って来た戦闘衛星によって最後尾から1両づつ客車が撃ち落とされていく場面、前の車両へと退避していく生身の人間達の描写が、この「山崎長者巻」の人々の動きや表情にそっくりです。ほんの一瞬のカットだったのですが、スクリーンを見ながら思わず「これ飛倉巻や」とつぶやいたのを憶えています。

 このカットを含め、この一連の場面を描いたアニメーター金田伊功(かなだ・よしのり)さんの作風に浮世絵等日本画との類似を指摘する、村上隆(むらかみ・たかし)さんのような人達がいる事を、インターネットを使い始めて知りました。絵巻と似ていると感じた私の感性も、それなりに先見の明はあったという事でしょうか。

 「延喜加持巻(えんぎかじのまき)」は、醍醐天皇(延喜帝:えんぎのみかど)が病を得たおり、信貴山へ勅使が派され、命蓮自らは信貴山から出ずに加持祈祷し、帝の病気平癒時に剣の護法が姿を表し、それを嘉(よみ)すため再派された勅使に、命蓮は何も望まない旨を奉る、という顛末を描いています。

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 あまりにも有名な剣の護法のフライトシーンや、剣の護法が空から御所敷地内へ降下して一瞬だけ醍醐天皇の前に姿を見せる場面も素晴らしいのですが、私は「延喜加持巻」において描かれている洛中の人々や牛馬が好きです。

 袈裟を着た高僧達が宮中の門に入っていく場面、僧達の後ろに従う者の中に、後ろを振り返っている長髪を束ねた髭面の男がいます。なんだか20余年前に凶悪な事件を起こした某カルト教団の教祖に似ています。さらにその後ろからついてくる格子縞の衣の少年の容貌、まるで昭和のアニメの脇役みたいです。私が初めて「信貴山縁起絵巻」を観て以来、気に入っている登場人物の一人です。

 醍醐天皇快癒を嘉す勅使が命蓮の庵で会談している場面、庭で控えている従者の中に、爪先立って中の様子をうかがおうとしている者がいます。この男も私が気にっている登場人物の一人です。

 登場人物各々のポーズに、何かしらのストーリーが込められている気がします。「信貴山縁起絵巻」の魅力の一つは、貴賎問わず全てのキャラクター達に対する、描き手の優しい目線が感じられる事だと思います。

 「尼公巻(あまぎみのまき)」は、幼少時に東大寺授戒の為に故郷信濃を出て、そのまま消息を絶った命蓮を探しに、姉の尼公が信濃から大和まで旅して、東大寺大仏殿の毘盧遮那仏のお告げで信貴山中に命蓮を探し当て、共に暮らすという顛末を描いています。

 深い山道から人里に下り、民家の縁側で尼公がブーツのような履物を脱いでいる場面、馬の背から直接縁側へ降りた事を示しています。また、尼公を乗せてきた馬が、鞍を外されるのを嬉々として待っている表情が、何だか現代の漫画やアニメに見えてしまいます。

 この後、尼公がこことは別の民家の土間で休む場面、土間奥に猫が描かれているのですが、この猫、本邦初の、絵に描かれた猫なのだそうです。

 旅が進むにつれ、馬、二人の従者が絵巻に登場しなくなり、尼公の旅装も軽くなっていきます。あからさまな表現ではないものの、この旅が辛苦に満ちたものである事をうかがい知る事ができます。場面毎の登場人物たちの表情がいずれも明るい故に、かえってその事が胸に迫ってきます。描き手が登場人物達を愛しているのは間違い無いと思います。

 大仏殿での毘盧遮那仏のお告げに従い、霞の中を時に立ち止まりながら杖をついて一人歩む小さな尼公、やがて行く手に見えてきた信貴山…絵巻の内容同様、絵巻の描き手も己が仕事のエピローグが近づいている事を意識したかもしれません。

 信貴山へたどり着いた尼公が、命蓮と再会し、それを喜び、共に修行し、暮らしていくという顛末が、所謂異時同図で表現されています。異時同図(いじどうず)とは、その場面での異なった時間に起きた事柄を1カットの中に描きこむ表現方法です。この「尼公巻」において、大仏殿の場面でも採られています。そちらの方が有名だと思います。

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 特別展「信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」は、「信貴山縁起絵巻」 の他に、「粉河寺縁起(こかわでらえんぎ)」や奈良国立博物館所蔵の「地獄草紙」等の絵巻、毘沙門天信仰、朝護孫子寺と縁の深い聖徳太子や後世の武家に関するもの等が展示されています。

 これらを含めて、この特別展「信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」そのものが、10年前の「大絵巻展」同様、まるで一巻の長大な絵巻を観ているような感覚にとらわれました。

 特別展「信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」の会期は、5月22日まで。私は「躍動する絵に舌を巻く 信貴山縁起絵巻」(泉武夫著、小学館刊)を持っているので、図録を諦めたのですが、何だか欲しくなってきました。会期中にもう一度この特別展を参観し、図録も買おうかと思っています。また信貴山朝護孫子寺もお詣りできればと思っています。


特別展「信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2016toku/shigisan/shigisan_index.html

「躍動する絵に舌を巻く 信貴山縁起絵巻」(泉武夫著、小学館刊)
http://www.shogakukan.co.jp/books/09607020

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# by manewyemong | 2016-04-24 11:21 | | Comments(0)
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 平成28(2016)年3月25日、moog MOTHER-32が発売されました。価格は79,488円(税込)。

 moog WERKSTATT-01 MOOGFEST 2014 Kitの時も思ったのですが、モーグのシンセサイザーを10万円を切る価格で買える時代が来る事を、MIDIもYAMAHA DX7も登場していなかったあの頃、全く想像していませんでした。隔世の感があります。

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 わずかな時間であり、一切パッチングをしなかったものの、moog MOTHER-32を試奏してきました。本体のフロントパネルに白鍵黒鍵のように配された13個のボタン型鍵盤による発声のみ試しました。

 既に公開されている日本語の取扱説明書を参考にしつつ、記したいと思います。

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 minimoog VOYAGER XLやKORG MS-20 mini等のセミシステムシンセと同様、パッチングの端子群がパッチパネルという形で集約されています。

 この端子群は、32個あります。moog MOTHER-32の名の由来かもしれません。

 端子のうち、白い文字で名称が書かれているものは、ディスティネーションへの入力、白地の黒文字はソースからの出力です。

 出力、つまりソースの中に、アサイン(アサイナブルアウトプット)という端子があります。様々なソースをこの端子へ充てる事ができるのですが、中には内蔵シーケンサーを走らせると、ステップ1〜最終ステップで、ランプ波(傾斜波)、鋸歯状波、三角波、ランダムの1セグメントといった形で電圧を変化させるものがあります。

 WERKSTATT-01にも似たものが載っていたのですが、フロントパネル下方に、白鍵黒鍵のように配された13個のボタン型鍵盤があります。moog MOTHER-32本体での試奏はこれで行う事ができました。

 白鍵にあたるボタン鍵盤の下にある八つのランプは、内蔵シーケンサーの実行ステップの所が灯るようになっています。

 また、このボタン型鍵盤群の左横に、オクターブの状態を示す八つのランプと、オクターブトランスポーズの操作子である左右二つの矢印ボタンがあります。

 発声中にこのボタンを操作した場合、発声が途切れるか否かをチェックし忘れました。

 VCOは一つ。フリケンシーつまみで上と下にピッチを約1オクターブチューニングできます。“約”とした理由は、センター位置から左端右端とも若干1オクターブよりはみ出る、つまり余裕を持たせているという事です。

 ポルタメントはオン/オフは無くグライドつまみがあるだけです。カーブはリニア変化ではなく、アナログ的な始めは速くてだんだん間延びしてくれるタイプでした。

 波形は、トグルスイッチで鋸歯状波かパルス波かどちらか一つを選択します。ただ、ここで選択したのと反対の波形を、パッチパネルのVCO鋸歯状波/パルス波端子からパッチコードを引いて音声入力端子へ送り、ミックスつまみで波形のブレンド具合を設定することができます。

 発声中にトグルスイッチで波形を変えた場合、音が途切れるか否かのチェックを忘れました。

 パルスウィズ(取扱説明書ではパルスウィズでもパルスワイズでもないパルス・ウィズスという珍しい表記が為されています)を調整するつまみがあります。センター付近で矩形波になり、最大値だけではなく最低値でも音が聴こえなくなります。

 VCOモジュレーションソースは、VCOの変調をLFOかEG/外部入力かをトグルスイッチで選択します。どれか一つだけという事です。後者を選んだ場合、パッチパネルのVCOモジュレーション端子に、外部ソースからのパッチケーブルが引かれていれば、それがVCO変調のソースになります。

 VCOモジュレーションアマウントつまみでデプスを設定します。

 VCOモジュレーションのディスティネーションとして、ピッチ(フリケンシー)かパルスウィズかを選択します。

 LFOはレイトと波形(矩形波/三角波)を設定します。正逆鋸歯状波はありません。

 LFOの矩形波、三角波は、パッチパネルにソースとしての出力端子もあります。

 VCFはハイパスフィルター、ローパスフィルターがあり、どちらかを選択します。

 カットオフフリケンシーの変調のソースとして、EG(径時変化)かLFO(周期変化)かを選びます。変調の効果の深度はVCFモジュレーションアマウントつまみで調整します。また、この効果の正逆をポラリティスイッチで選択する事もできます。

 レゾナンスを上げていくと自己発振します。VCOの波形にパルス波を選び、パルスウィズを最低値か最大値に設定するとVCOを黙らせる事ができます。

 VCFの自己発振させた音を平均律で鳴らす方法は、パッチパネルのキーボードアウトとVCFカットオフを、そして、VCF端子と音声入力を接続します。これはあくまで、moog MOTHER-32のボタン型鍵盤でのお話です。

 moog MOTHER-32のEGは、アタックタイム、サスティン(オン/オフ)、ディケイタイムで構成されています。サスティンスイッチをオン状態にすると、押鍵中、アタックレベル(最大値固定)が維持され続けます。オフの場合、アタックタイム実行終了後すぐにディケイタイム実行に入ります。

 VCAモードのトグルスイッチは、音量に径時変化(EG)を付けるか、あるいはARP ODYSSEYでいうVCAゲインを最大値に設定したのと同じ状態、つまり音声信号が常時最大値で通り続ける、要するに鳴りっ放しにするかの選択をします。

 今回、内蔵シーケンサーを試す事ができませんでした。いずれ機会があればと思っています。

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 手のひらに乗る小型の廉価機とはいえ、モーグらしいつまみやその周りの目盛り、古めかしい感じのトグルスイッチ、側面の木の化粧板等、愛嬌の中にそこはかとなく風格を感じてしまいました。

 複数のオシレータをディチューンしてアンサンブル感を出すといった事をあまりしない身には、minimoogの三つのVCOのうち、VCO2を使う事が滅多にない(VCO3はLFOとして使う)のですが、moog MOTHER-32は1VCOながら、パッチングを併用して二つの波形を採る事ができるという点も気に入りました。

 カットオフやEGの各タイム等、私が所有している比較的古い形式のminimoogとは異なり、もっと素直に変化してくれました。そのシンセ独特の妙味とやらを、単に奏者やマニピュレータの音色の発想の具現化を阻害する要因としかみない私には、安心して使えるアナログシンセだと思いました。

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 セミシステムシンセながらも、基本的にパッチングせずとも単体で音色を作る事ができるmoog MOTHER-32は、ユーロラックのシステムシンセを始める橋頭堡(きょうとうほ)、つまり初めの第一歩として、Roland AIRA SYSTEM-1mとならんで適当なモデルかもしれません。


平成28(2016)年9月1日追記。

 implant4さんで撮らせていただいた画像を添付いたしました。


平成28(2016)年11月7日追記。

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 平成28(2016)年11月4日から6日まで東京ビッグサイト催された2016楽器フェアで撮影した、moog MOTHER-32三連装の画像を載せました。


moog MOTHER-32
http://www.korg-kid.com/moog/product-details/mother-32/

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 KORG minilogue試奏記(1)の続きです。シンセサイザーエンジン部分について触れていきます。

 まず驚いたのが、各パラメーターが4桁で表示され、微細な設定が可能だという事です。

 私はアナログシンセサイザーはプログラマブルではない方が良いと思っているのですが、その理由はプログラマブル化する事によって、各パラメーターの変化のキメが荒くなる事を危惧するからです。しかしながら、ワークステーション機をも凌ぐきめ細かさ故、minilogueに関しては杞憂だと思います。

 KORG minilogueはキーアサイナー方式の4声ポリフォニックシンセであり、1声は2VCO、1VCF、1VCA、1LFOで構成されています。

 かつて、アナログポリシンセのLFOをつぶやくで、アナログシンセ時代、ポリフォニックを謳いながら、ポリフォニックシンセのLFOが発声数分ではなく一つしか載っていないことについて触れたのですが、公開されているブロックダイアグラムを信じる限り、minilogueには4声分あるという事になります。

 もし4声分無ければ、例えばLFOのレイトにEGで径時変化を付けた音色でボイスモードをディレイにした場合、四つの発声毎に全声にLFOのリトリガーがかかる故に、径時変化がやり直されてしまいます。

 遺憾ながら、今回の試奏の折、この事に関するチェックを忘れてしまいました。次の機会にと思っています。

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 オクターブキートランスポーズや、

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 VCO1、2のオクターブは、ボタンで押し送るのではなく、レバーで選択できるので、演奏操作という形でオクターブを変える事ができます。

 オクターブトランスポーズスイッチの操作は、押鍵した状態では発声に反映されず、次の押鍵からオクターブが変わります。したがって、ARP ODYSSEYとは異なり、押鍵状態でポルタメントをオンにし、オクターブトランスポーズを操作しても、オクターブポルタメントをかける事はできません。

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 オシレータはVCOで、チューニングの安定度は流石にDCOのようなわけにはいかないのですが、シフトキー+RECボタンを押すと、画面上にチューニング中である事を示すメッセージが表示され、終わると消えます。10余秒かかったと思います。

 VCO1、2の波形は、鋸歯状波、三角波、パルス波。

 コルグのアナログモデリングシンセのオシレータのコントロール1に相当する、シェイプというパラメーターによって、パルス波のパルスウィズのデューティー比を変える事はもちろん、鋸歯状波や三角波も変調する事ができます。

 シェイプが0で純粋な鋸歯状波、三角波、そしてパルス波はデューティー比が50:50の非対称矩形波、つまり矩形波になります。

 鋸歯状波のシェイプを最大値にすると、

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 なぜか矩形波になりました。

 minilogueで恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードを真似てみたのですが、シェイプの位置をKORG MS-20 miniのPWと同じく時計の短針10時過ぎでポイントを探すと似ました。シェイプのバリューはパルスウィズの%と合致しているのですが、パルスウィズ330ときちんと設定した時点で最も似ます。この値が、
幅の比によって倍音構成が大きく変化する、上部の幅が全体のn分の1の時n倍音系列が欠落するという性質があり、33%の場合、3、6、9倍音が抜ける
ポイントなのだと思われます。

 また、パルスウィズが1000を超える(最大値は1023)と、音が聴こえなくなります。

 シェイプにEGによる径時変化を加えることはできません。LFOによる周期変化だけです。

 VCOのオクターブスイッチは、先に触れたオクターブトランスポーズスイッチとは異なり、押鍵した状態でも変更が、即、発声に反映されます。

 VCO2をVCO1へのモジュレータにしてクロスモジュレーションやシンクロ、リングモジュレーションをかける事ができます。

 VCO2にのみ、ピッチにEGをかける事ができます。もちろんオートベンドとして使えますが、むしろクロスモジュレーションやシンクロ使用時の径時変化でユニークさを発揮すると思います。

 オシレータミキサーはVCO1、2各々のレベル、そしてホワイトノイズのレベルを設定します。VCO1/2のバランスではないところがミソです。

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 VCFはローパスフィルターのみで、2ポール、4ポールの選択ができます。

 レゾナンスを上げていくと自己発振します。オシレータミキサーがVCO1/2の割合ではなく各々のレベルである、つまりVCOを使わない選択が可能です。したがって、VCOのパルスウィズ(シェイプ)のデューティー比を100:0にしてVCOを聴こえなくする必要はありません。

 VCFと接続されたEGがあり、EGデプスを0にする事で事実上接続を解除する事ができます。また、マイナス値もあるので、リバース曲線にすることもできます。EGデプスつまみのセンター位置にクリック感は無く、感触で−/0/+の分水嶺を探ることはできません。しかしながら、画面に0%が出るので視認することはできます。

 VCFには3段階変化ですが、キーボードトラックがあります。VCFの自己発振でスケールをドレミ…つまり平均律に設定する場合、100%を選びます。

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 これが私が思うminilogueのウィークポイントの一つなのですが、VCA EGは、文字どおりVCA専用、音量の径時変化のソースのみで、VCFと共用する事ができません。

 例えば、EGを、ビブラートデプスの径時変化等、他の事と共用できないような目的に回した場合、VCFのカットオフポイントは発声の始端から終端まで変化させる事ができなくなります。

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 VCA EGの下のEGは、ディスティネーション側のオン/オフやデプスの設定で、ソースとして使用できます。

 minilogueの価格帯のプログラマブルアナログポリフォニックシンセで、VCF/VCA個別にEGを設定できるのは画期的な事です。昭和58(1983)年秋、KORG POLY-800が100,000円を切って以来の快挙だと思います。POLY-800の場合、EGはADSRではなく、より複雑な設定ができるADBSSRですけどね。

 VCA EG、EGともに、パラメーターのきめ細かさと併せて、SEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5とまではいかないものの、アタックタイムの変化のカーブがこれまでのコルグのアナログ/アナログモデリングシンセよりも緩やかなので、吹奏、特に金管系の設定を緻密に行えます。時計の短針でいえば8時あたりでも「コツッ」という感触が残っています。

 また、リリースタイムも同じく緻密な設定ができるカーブです。リリースタイム0にすればハサミで切ったような終わり方になるのですが、このバリューを少々あげてもタッチノイズが入らない形で歯切れよくEGの実行を終了させることができます。

 EGは私にとって最も重要なパラメーターですが、minilogueはこの点でも気に入りました。

 LFOの波形は、下降型鋸歯状波、三角波、矩形波で、サンプル&ホールド、ランダム、ノイズの類はありません。また、デプスにマイナス値を設定できないので、上昇型鋸歯状波はありません。

 EGをLFOデプスの径時変化に充てる事ができるのは珍しくないのですが、minilogueはLFOのレイトのソースにも使う事ができます。

 LFOはEGと異なり、ソース側(LFO)からディスティネーションを選びます。ただし、ディスティネーションを、カットオフフリケンシー、VCOのシェイプ、ビブラートデプスのうちのどれか一つしか選ぶ事ができません。ディスティネーションの中にVCAはありません。

 内蔵エフェクターとしてディレイがあります。ディレイタイム、フィードバック数に加えて、ハイパスフィルターがあります。

 minilogueのパラメーターには概ね専用の操作子があるのですが、一部デジタルアクセスコントロール、つまりエディットモードに入って設定する必要があります。例えば、スライダーのディスティネーションの選択(一つのみ)、左右個別のベンドレンジ等々。

 その中の一つ、ポルタメントは、タイムを、オフ、0~127の範囲で設定できます。また、レガートの時のみポルタメントがかかるオートモードもあります。

 大変遺憾ながら、minilogueのポルタメントのカーブは、多くのアナログシンセのような、始まりは速く、そして実行終了が近づくにつれて遅くなっていくフィーリングではなく、デジタルシンセのようなリニア変化です。考えようによっては、VCOのポルタメントをリニア変化でかける事ができるのは画期的な事ともいえます。

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 KORG minilogueは、低価格のプログラマブルポリフォニックアナログシンセサイザーながら、豊富なパラメーターを持っています。ただ、いくつか触れたように、意外にかゆい所に手が届かない面もあります。

 KORG minilogueに、KORG MS-20 miniARP ODYSSEYを併せると、私の中でうまい具合にピースが揃って、楽音用のアナログシンセサイザーのパズルが完成する感があります。

 あるいはコルグさんは、それを企図した製品開発を行っているのかなと思ってしまいました。


平成29(2017)年12月1日追記。

 KORG minilogueの数量限定カラーバリエーション機、minilogue PG(ポリッシュドグレーカラー)が発表されました。

 筐体のアルミ部分はポリッシュドグレーカラー、そして、リアパネルのピンカド材の部分は光沢のあるシースルーブラックに塗装されています。黒く塗られているにもかかわらず、ピンカド材の木目が活きています。

 平成29年12月3日発売。minilogue PG、minilogue量産型機とも税込価格49,800円。


KORG minilogue
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/minilogue/

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 implant4さんで、プログラマブルアナログポリフォニックシンセサイザーKORG minilogueを試奏させていただきました。

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 KORG minilogue(ミニローグ)は、平成28(2016)年1月15日に発表され、同30日に発売されました。implant4さんには既に中古機が入荷していて、ウェブサイトの在庫リストにもアップされています。

 今回試奏させていただいたminilogueは、発売から一ヶ月を経ていない事もあり、新品としか思えない美品でした。

 全くの余談ですが、implant4さんには、このminilogue以外にも、Roland Boutique JP-08JU-06YAMAHA refaceと、発売からさほど日を経ていないモデルが入荷しています。バブルの頃、発売直後のシンセサイザー及びその周辺機器の新製品を中古で探す事は、特段難しい事ではありませんでした。今、もしかしたら、消費マインドが上向いて、多少なりともその頃に近づいているのかなとも思えます。

 このKORG minilogue試奏記(1)では、奏者やマニピュレータとの接点や、シンセサイザーエンジン以外の諸機能を、そして、KORG minilogue試奏記(2)では、シンセサイザーエンジン部分について記したいと思います。

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 KORG minilogueは、他に類例の無い不思議な姿をしています。少し反ったフロントパネルに、操作子群や鍵盤が配されていて、本体部分はその下に隠れる形になっています。

 奏者側と演奏を聴く側の視点によって、minilogueの印象はずいぶん変わります。かつてKORG RADIASM3のデザインに、演奏を観る側の視点の不在を感じたのですが、minilogueは双方の目線を意識したデザインになっていると思います。

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 リアパネルは木(ピンカド材)でできています。

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 フロントパネル右に有機ELディスプレイがあり、minilogueを発声させると、オシロスコープが、また、音色をエディットするとその内容が表示されます。

 店頭での試奏の折、つまみを動かしてもEG INT等一部のパラメーターしか表示されない場合、エディットモードのグローバルエディットを選び、ボタン5を1回押し、

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 パラメーターディスプレイを「Normal」から

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 「All」にすると、エディットされたパラメーターが表示されます。

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 鍵盤はKORG MS-20 miniRK-100SARP ODYSSEYと同じスリム鍵盤。

 ベロシティはカットオフフリケンシーの開きと音量のソースになります。これ以外の目的にベロシティを充てる事はできません。

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 コントローラーはコルグ伝統のジョイスティックでもホイールでもなく、右下がりに斜めに配されたスライダーです。ピッチベンド以外にも様々なディスティネーションを、ただし一つだけを選んでアサインできます。

 このスライダーは手指を緩めると勝手にニュートラル位置へ帰ってくれます。スライダーはニュートラル位置で左右をバネに挟まれた状態になっていて、左へ動かすと左側のバネが、右へ動かすと右側のバネが押されて動きます。このバネはニュートラル位置から遠くなるにつれて抵抗が強くなっています。

 コルグ伝統のジョイスティック、ローランドのベンダーレバー、そして、多くのメーカーが採っているホイールが、いずれも弧を描いて動くのに対し、minilogueのコントローラーはスライダー型故に、文字通り水平に滑って動きます。

 また、このスライダーは、ピッチベンドに使う場合、

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 ニュートラル位置から右(右下)へ動かす時と、

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 左(左上)へ動かす時で、バリューを個別に設定できます。これは私にとって非常にありがたい事です。私が知る限り、アナログシンセでこれができるのは、Roland JD-Xiのアナログシンセトーンだけでした。ただし、正逆の逆転は出来ません。

 また、例えばビブラートデプスを充てた場合、

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 ニュートラル位置でビブラートデプスの中間値が入った形になります。したがって、デプスを0にする場合、

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 スライダーを左端に持ってきておく必要があります。

 勝手にニュートラル位置に戻ってくるが故に、このスライダーでビブラートやグロウル効果をコントロールする場合、終始指を離す事ができないという事を念頭に置く必要があります。

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 音色設定操作子はつまみとレバーで、ボタンや上下に動かすタイプのスライダーはありません。選択設定操作子は全てレバーで、ボタンを押し送る形と異なり、往きつ戻りつができるので素早く選択できます。

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 操作子群の配置も、音色設定時、演奏時を問わず、動線的に実に合理的だと思います。例えば、フレキシブルEGはVCA EGより奏者側に、そしてそれに接する形でLFOが配されています。

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 音色プログラムはプログラム/バリューつまみを回して選びます。シフトキーを押しながら操作すると10音色跳ばせます。

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 フロントパネル右端奏者寄りに八つの自照型ボタンが並んでいます。局面によって役割が変わる(画像はグローバルモードのパラメーター表示に関するもの)のですが、その一つに、かつてKORG PolysixMono/PolyPOLY-800等でキーアサインモードと呼ばれたボイスモードの選択があります。

 このボイスモードは、キーアサインモードよりも素晴らしく進化しています。minilogueのシンセサイザーエンジン以外の機能で、私が最も気に入ったのがここです。

 ボイスモードは八つのボタン直下に語彙とアイコンが配されていて、上のボイスモードデプスつまみと併せて使う事で、キーアサインモードでは考えられなかった効果が出せます。

 コード弾きを左手でしかできない私としては、ボイスモード関連の操作子群がこの位置にある事は、大変都合が良いです。

 ポリの場合、4声のポリフォニックなのですが、ボイスモードデプスの操作によって、押さえた和音の転回形が発声されます。例えば「ドミソ」が「ミソド」「ソドミ」といった具合。

 デュオやユニゾンは、文字通り、4声を、2声やモノフォニックのユニゾンに振って発声させるのですが、ボイスモードデプスがディチューンになります。

 モノは、ボイスモードデプスが0だとモノフォニックの、いわゆるソロモードなのですが、このバリューを変えるごとに1オクターブ下、2オクターブ下の音が加味されます。

 ユニゾンやモノの時にポルタメントが、

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 オフだとトリガーモードはマルチ、

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 0だとシングルになります。

 ボイスモードのアルペジエータは、micro KORGmicroKORG XLといったコルグのアナログモデリングシンセに搭載されてきたものよりも進化しています。

 例えばマニュアルというタイプでは「ド」「レ」「ミ」と弾くと「ドレミドレミ…」と発声し、「ミ」「レ」「ド」では「ミレドミレド…」と発声します。つまりアップにもダウンにもなります。

 KORG minilogueには、16ステップのシーケンサーが載っています。鍵盤によるリアルタイム入力や、モーションシーケンサーとして最大四つのディスティネーションの周期変化/径時変化のソースになるのですが、KORG MS2000、RADIAS、R3のモッドシーケンス機能や、Roland V-synthのマルチステップモジュレータのように、押鍵すると1回実行される、あるいは押鍵中実行が繰り返されるといった使い方ができず、私としては特段興味が湧きませんでした。

 minilogueのLFO波形には、サンプル&ホールドあるいはランダムの類が無いので、私の場合、この16ステップシーケンサーにでたらめな音階を打ち込んで、それらしく使う事ぐらいしかなさそうです。

 なお、この16ステップシーケンサーを走らせるおり、先の八つの黒いボタンが1~8、9~16の実行中のステップを示してランプを灯します。ここはモッドシーケンス機能と同じです。

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 アルペジエータや16ステップシーケンサーのテンポの操作子が、なぜか遠く離れたフロントパネル左端にあります。

 音色設定操作子群の現状を発声に反映させる、要するにPolysixのマニュアルボタンに類する専用の操作子はありませんが、パネルロード機能(プレイボタン+シフトキー)で同じ事ができます。

 端子群について。音声出力はモノラル。音声入力端子があり、VCFへ通じています。MIDI端子は平成期のコルグアナログシンセとしては初めて、OUTがあります。シンクロイン/アウトがあります。

 KORG minilogue試奏記(2)に続きます。


平成29(2017)年12月1日追記。

 KORG minilogueの数量限定カラーバリエーション機、minilogue PG(ポリッシュドグレーカラー)が発表されました。

 筐体のアルミ部分はポリッシュドグレーカラー、そして、リアパネルのピンカド材の部分は光沢のあるシースルーブラックに塗装されています。黒く塗られているにもかかわらず、ピンカド材の木目が活きています。

 平成29年12月3日発売。minilogue PG、minilogue量産型機とも税込価格49,800円。


KORG minilogue
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/minilogue/

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平成28(2016)年1月22から催されたNAMM 2016に、コルグはFM音源シンセサイザーKORG volca fmを参考出品しました。

 volca fmはあくまで参考出品機ですが、かつて、同じく楽器フェスティバル2008において参考出品機だったmicroKORG XLが、さほど日を経ずして発売されたという先例から、volca fmの今後の正式発表~新発売の流れは間違いないものと思われます。

 本稿は今後、その流れに応じて大幅な加筆、改訂、あるいは新たに一稿を上げる可能性があります。

 現時点でネットに上がっている、先のNAMM 2016で撮られたと思われる画像や動画を元に記していきます。

 KORG volca fmは3声ポリフォニック。6オペレータのFM音源を持っています。音色プログラムは32記憶します。

 ワークステーション機KORG OASYSやKRONOSのシンセサイザーエンジンの一つ、MOD-7同様、システムエクスクルーシブを介して、YAMAHA DX7の音色データを持ってくることができます。

 内蔵エフェクターとして、コーラスがあります。

 volca fmの筐体の姿や寸法は、これまでのKORG volcaシリーズを踏襲しています。

 volca keysのように27ある鍵盤型リボンコントローラーは、演奏以外にいくつかの設定操作子を兼ねていることや、16ステップシーケンサー使用時、実行中のステップのランプが灯る事も同じです。

 フロントパネルを見ていきます。

 赤い表示のLEDがあります。音色の名や、選択されたFMアルゴリズムやパラメーター等が表示されます。

 左端に2本のスライダーがあり、演奏モード時は、左がキートランスポーズ、右がベロシティの操作子なのですが、右のベロシティの操作子は、エディットモード時は各パラメーターの入力に使います。

 これらスライダーのキャップには、YAMAHA DX7の32個の音色プログラムボタンを思わせる青色のラインが入っています。この青色、DX7の実機を見ると緑色に見えるのですが、印刷物や画像だとなぜか青になってしまいます。DX7の筐体のチョコレート色が、印刷物や画像だと黒くなる事と併せて、不思議な事だと思います。

 volca fmのデザイナーが、印刷物や画像のみを見てこの色をつけたのか、あるいは同じくvolca fmも、実機ではまた違って見えるのかもしれません。

 volca fmのボタンの色に関して、もう一つ気付いたことがあります。この後その都度、記します。

 二本のスライダーの右に、縦二つがセットになったつまみが並んでいます。アルゴリズムのモジュレータのEGのアタックタイム、ディケイタイム。キャリアのEGのアタックタイム、ディケイタイム。LFOのレイトとデプス。音色プログラムのパラメーター呼び出し、アルゴリズムの選択。

 これらつまみの下にボタンが横に三つ並んでいて、やはりDX7を思わせる色になっています。左からオクターブトランスポーズのダウン、アップ、音色プログラムのセーブ。これらはエディットモード時、別の役目を負います。

 この右横にエディットボタンがあるのですが、色はなぜかDX7のファンクションモードボタンと同じ薄茶色です。ちなみにDX7のエディットボタンは藤色です。

 フロントパネル右の部分は、これまでのKORG volcaシリーズの機能が踏襲されています。

 MIDI IN端子があります。またシンクロイン/アウトがあり、外部機器との同期演奏が可能です。

 volca fmにはアルペジエータがあり、その操作子のつまみが二つ並んでいます。

 その下にステップシーケンサー関連のボタンが四つ並んでいて、三つは先のスライダーと同じ色、そして、右端のファンクションボタンの色はDX7のストアボタンと同じ赤になっています。DX7のファンクションボタンは薄茶色です。

 昭和58(1983)年春に現れたYAMAHA DX7以降、FM音源シンセサイザーや同モジュール、リズムマシン、シーケンサー、ショルダー型を含むMIDIコントロールキーボードを、「X」の型番とロゴ字体で統一したXシリーズの怒涛のような席捲ぶりと、同時期の他社に漂っていた、出遅れ感、そこはかとない格下感を嗅いだ身には、コルグが国際見本市に、手のひらサイズのDXともいうべきvolca fmを出した事に、世の無常を感じます。

 昭和61(1986)年、コルグはヤマハからFM音源の部材の提供を受けて、KORG DS-8、続いて707を出しました。それから30年後というタイミングで、まるで前年のYAMAHA reface DXに当てるが如くKORG volca fmを出す事にも、多少の感慨を覚えずに入られません。


平成28(2016)年3月10日追記。

 コルグのサイトにKORG volca fmに関する情報がアップされています。また取扱説明書のダウンロードもできます。

 volca fmの筐体の色、DX7のチョコレート色を踏襲しているようです。

 FM音源を簡便にエディットするために、複数のパラメーターが当てられたモジュレータ、キャリアつまみがあります。

 また、プロエディットのために、パラメーターのリストと32種のアルゴリズム図が載ったパラメーターリストカードが付きます。似たもの(もっと大きかったですが…)が、かつてKORG M1及びTシリーズにも付属しました。

 KORG volca fm、発売日平成28(2016)年3月27日、価格14,580円(税込)。


KORG volca fm
http://www.korg.com/jp/products/dj/volca_fm/
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