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 implant4さんで、Roland Boutique JP-08及びBoutique用キーボードRoland K-25mを試奏させていただきました。

 Boutique発売から日が浅いこともあると思うのですが、美品でした。早ければ次回の在庫リスト更新の折、アップされると思います。

 なお本稿は、先にアップしたRoland Boutique JP-08、JX-03、JU-06が出ますと、併わせてお読みいただくことが前提の内容になっています。

 今回の試奏は、implant4さんのこたつの上にあるスピーカーからのみの音出しです。内蔵スピーカーの音は確認しませんでした。電源はUSBアダプタを使いました。

 また、ポルタメントやステップシーケンサー、内蔵デジタルディレイを試すのを忘れました。専用の操作子が無い故、うっかりしてしまいました。

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 Roland Boutique JP-08を試奏してみて思ったのは、操作子の大きさや形状が異なる故に操作感は完全に異質なのですが、それでも、Roland JUPITER-8でのマニピュレーションの経験値が活きるということです。例えば、JUPITER-8でのENVのアタックタイムのスライダーの設定位置が、JP-08に於いても反映されました。

 1980年代初頭、楽器店や家電量販店の店頭でJUPITER-8を触っていたのですが、今回、Boutique JP-08を触れているうちに、当時自分が作っていた音色のことを思い出しました。結局、今回の試奏はJP-08を試すというより、単に“あの頃”に浸っていた感があります。

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 フロントパネルの音色設定操作子群は、JUPITER-8が横一列に並んでいたのに対し、LFO~オシレータと、フィルター~アンプ部~二つのENVで二段に並べられています。

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 スライダーにはオレンジ色の光が灯っています。上げ下げの感触には意外に適度な剛性があります。つまみも同様でした。

 しかしながら、いずれもその小ささ故、豪快に動かしたい向きには、やや難ありかと思われます。JP-08が、Boutiqueよりも扱いやすい操作子を持つRoland AIRA SYSTEM-1SYSTEM-1m用のPLUG-OUTシンセになってくれればと思います。

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 Roland K-25mの鍵盤。Roland JD-Xiのそれと同じものと思われます。静粛性に優れています。

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 リボンコントローラー。

 左がピッチベンド用、右がモジュレーション用。

 ピッチベンド用リボンコントローラーはニュートラル位置に光が灯っていて、ピッチベンドをすると、

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 光が追従します。

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 モジュレーション用リボンコントローラーは、指の位置、つまりデプスの位置まで光が伸びてきます。

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 リアパネル側。

 電源をUSBから取っています。専用の電源アダプタは無く、USBか電池のみです。

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 音色設定操作子群を見ていきます。

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 LFO。

 三角波とノイズが加わっています。ノイズ波形の効果は、Roland SH-101のLFO波形をノイズにした時と同じです。

 鋸歯状波は下降型のみで、モジュレーションデプスにマイナス値が無いので、ノコギリの刃の向きを変える、つまり上昇型にすることはできません。

 ディレイタイムとありますが、押鍵からモジュレーションがかかり始めるまでの時間ではなく、多くのアナログシンセがそうであるように、実際は押鍵からモジュレーションデプスが設定値になるまでの時間、つまりフェイドインタイムです。

 このディレイタイムことフェイドインタイムは、ビブラート(オシレータ)、グロウル効果(フィルター)、トレモロ(アンプ)だけでなく、LFOをソースにしたPWMでも作用します。

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 VCO MOD。

 ビブラートデプスやオートベンド、パルスウィズに関する設定を行います。オシレータ1、2で共有しています。

 ENVデプス、つまりオートベンドデプスはプラス値のみで、正逆はオートベンドのソースであるENV-1で決めます。

 フリケンシーモジュレーションスイッチで、ディスティネーションをオシレータ1のみ、両方、2のみかを選択します。

 パルスウィズのソースは、マニュアル、LFO、そしてENV-1があります。パルスウィズを上げきっても音は消えません。つまり、デューティー比100:0にはなりません。

 かつて、店頭のJUPITER-8で、ENVによるPWMで撥弦系の音色をよく作ったのですが、フィルターとアンプ部で独立してENVを設定できることと併わせて、今回、あくまで記憶の内のお話なのですが、寸分たがわぬ効果が出せていました。

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 VCO。無論、実際はVCOではなく、モデリングシンセACBのオシレータです。

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 VCO-1。

 VCO2をモジュレータとして、クロスモジュレーションがかけられます。厳かな鐘の音も作ることができました。

 JUPITER-8よりもVCOのレンジは広くなっています。VCO1のレンジは切り替える形です。

 波形はサイン波とノイズが加わっています。パルスウィズは下げ切ると矩形波になりました。二つのVCOの波形をパルス波と矩形波にする場合を考えて、JUPITER-8もJP-08もVCO1にパルス波と矩形波を持っていると思われます。

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 VCO-2。

 VCO-1と異なり、レンジのつまみ(コースチューン)にクリック感が無く、切り替えではなく連続的に変化させることができます。大雑把なディチューンはここで行えます。

 チューンつまみ(ファインチューン)で微細なディチューンを行います。センター位置にクリック感があります。

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 ソースミックス。

 JP-08のVCFは自己発振せず、音源は常にオシレータです。二つのオシレータの各々のレベルでは無く、割合を決めます。

 センター位置にクリック感があります。

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 VCF(デジタルフィルター)。

 ソースミックスの所でも書きましたが、レゾナンスを上げても自己発振しません。サイン波はオシレータで得ることになります。

 ENV-1を使うかVCA(アンプ部)とENV-2を共用するかを選ぶことができます。

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 VCA(デジタルアンプ)。

 レベルスライダーがこのシンセサイザーのボリュームになります。

 トレモロのデプスを0~3で段階的に設定できます。

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 ENV-1。

 オートベンド、PWM、フィルターの径時変化のソースに充てられます。リバース曲線に設定することもできます。

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 ENV-2。

 VCA単独で使う場合と、フィルターと共用する場合とがあります。

 右のキーボードフォロースイッチは、キーボードフォローをどのENVにかけるかを選択します。

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 パッチナンバーボタン。

 1~8のボタンの二桁の組み合わせ、つまり、11~88で64音色を呼び出します。

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 パッチプリセットボタン。

 JP-08にはパッチ二つをレイヤー発声させるデュアルモードがあります。八つの組み合わせをこの1~8で呼び出します。 

 今回試し忘れたのですが、ポルタメントに関して、オン/オフはこの画像右端のデュアルボタンを押しながらリボンコントローラー左を、ポルタメントタイムはデュアルボタンを押しながらリボンコントローラー右で設定します。

 また、発声モードは、ソロをデュアルボタン+パッチプリセットボタン6、ユニゾンをデュアルボタン+パッチプリセットボタン7、ポリフォニックをデュアルボタン+パッチプリセットボタン8で指定します。

 マニュアルボタンは、音色設定操作子群の現状を、発声に反映させます。

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 この画像は、恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードの設定です。

 リバース曲線のENV-1をオートベンドのソースに使い、VCF、VCAでENV-2を共用しています。

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 Boutique JP-08での喜多郎mini KORG 700Sリードのシミュレーションの肝になるパルスウィズの設定。上の方で書きましたがJUPITER-8での経験値そのままです。

 もっとも、かつてのローランドのアナログシンセ及びアナログモデリングシンセRoland JP-8000、JP-8080のパルスウィズの変化は、共通しています。

 Roland JD-Xiが来ましたで書きましたが、JD-XiのSuperNATURALシンセトーンのパルスウィズでこのリード音をシミュレーションすると、Roland JUPITER-80JUPITER-50のトラブルの一つ、
高い鍵域を演奏すると鳴り方がおかしくなる
の現象が出ます。しかしながら、Boutique JP-08の場合、至極自然に発声してくれます。

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 Roland Boutique JP-08、JX-03JU-06は限定生産であり、早晩、現行機ではなくなると思うのですが、ローランドさんにはその意を曲げて、もう少し後にこのシンセサイザーを手に入れる状況に至る人間の為の決断を下していただけたらと思います。


Roland Boutique JP-08
http://www.roland.co.jp/products/jp-08/

Roland K-25m
http://www.roland.co.jp/products/k-25m/

Roland Boutique
http://www.roland.co.jp/promos/roland_boutique/

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 implant4さんで、YAMAHA CS-15を試奏させていただきました。

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 フロントパネルや鍵盤に傷らしい傷が無く、つまみを動かした時のガリも出ない、良品といっていい個体でした。既にimplant4さんサイトの在庫リストにアップされています。

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 アナログモノフォニックシンセサイザーYAMAHA CS-15は、昭和52(1977)年に登場しました。

 この年ヤマハは、YAMAHA CS-50、CS-60、CS-80といった上級ポリフォニックシンセから、YAMAHA CS-5、CS-10、CS-30といった比較的安価なモノフォニックシンセまでを一気に発表し、アナログシンセサイザーCSシリーズをスタートさせました。

 私がシンセサイザーに興味を持ち、楽器店に足を運んだ1980年代初頭、大阪市内の楽器店や電気店では、CS-5やCS-10はもちろん、CS-15も10万円を切っていた記憶があります。

 YAMAHA CS-5、CS-10、CS-15、KORG MS-10、MS-20、MS-50、Roland SH-1SH-2、SH-09は、いずれも高校生がアルバイトで買える程度の価格だったため、雑誌やシンセの解説本で詳らかに取り上げられていました。読者が使う現実的なシンセサイザーはこれらだったからだと思います。

 当時、これらのシンセサイザーが、まるで互いを補完するかのような性能だったが故に、あるいはメーカー3社が談合しているのではないかと疑った事があります。後年、私と同じような考えを持った人が何人もいる事を知りました。

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 マニピュレーションの可能性としては、私は当初、KORG MSシリーズに軍配ありと思ったのですが、VCFとVCAが本格的なEGを独立した形で持っているのは、KORG POLY-800が登場するまでCS-10、CS-15だけだった事や、後述するオートベンドに関して、このCS-15だけがVCO1、2でデプスを別設定できるといった理由から、やがて、最初のシンセサイザーはYAMAHA CS-10、CS-15にと思うようになっていました。

 しかしながら結局、最初のシンセがRoland SH-101になった顛末は、Roland SH-101回顧記YAMAHA CS-5試奏記に書きました。

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 YAMAHA CS-15は、VCO、VCF、VCA、EGを2系統持っています。各々で別の音色を作りレイヤーするといった事ができます。ただし、KORG 800DVやARP ODYSSEYのようなデュオフォニック演奏はできません。あくまでモノフォニックシンセです。

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 コントローラー群。

 ポルタメント、VCFのカットオフポイントをVCFセクションのつまみではなく手許のスライダーで変えるブリリアント、そしてベンダーレバー。

 ブリリアントは、二つのVCFのカットオフの片方だけに作用させる事もできますが、特に一つの操作子で両方を変えたい時や、つまみよりスライダーの方が演奏操作子として使いやすい向きに特に有用だと思います。

 ベンダーレバーは手指を離すとニュートラル位置に帰ってくるタイプです。リミッターでピッチベンドのレンジを指定します。ニュートラル位置から押し切るか引き切るかすると、Nで2度、Mで3度、Wで1オクターブ音程が変化します。

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 鍵盤。

 当時の国産シンセサイザーの鍵盤では、群を抜いて好感触だと思います。

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 後のFS鍵盤のような仕切り等はありません。

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 電源のオン/オフは、鍵盤の右にあるこのスイッチで行います。電源が入っている時はランプが灯ります。

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 マスターチューン及びディチューンつまみ。

 VCO1、2とも、電源投入時からピッチは安定しています。ただ両者のピッチを完全に合わせる事はできませんでした。それがアナログシンセのVCOの良いところではあると思います。

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 LFO。

 レイト、そしてサイン波、鋸歯状波、サンプル&ホールドといった波形群。ディレイタイムやフェイドタイムは無く、モジュレーションの径時変化をつける方法は、奏者やマニピュレータが各ディスティネーション側のデプスつまみを手操作する事しかありません。

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 グライド。CS-15の場合、オートベンド(ピッチEG)の事です。

 Roland SH-2のオートベンド、KORG MS-20のEG1をピッチEGとして使った場合とは異なり、かけるか否かだけではなく、VCO1/2でデプスを独立して設定できます。デプスの向きを正逆とも設定できるので、ピッチをしゃくり下げる/しゃくり上げるができます。

 タイムとは、設定したデプス、つまりオートベンドのスタートレベルから0固定のサスティンレベルに到達するまでの時間です。こちらはVCO1/2共用です。

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 VCO1、2。二つのVCOの構成は同じです。

 VCOのオクターブを変える時、たしか音が途切れなかったと思います。

 ビブラートデプスは音色設定操作子としてだけでなく、演奏操作子としての役目もあります。

 波形は、三角波、鋸歯状波、パルス波です。

 パルス波はパルスウィズを左へ回し切ると矩形波になります。ここで恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードのヒントを書くと、パルスウィズをセンター前後で探すとパルス33%が見つかります。

 パルスウィズモジュレーションのソースはLFOだけです。

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 ミキサー。

 ミキサー1は外部入力ないしノイズとVCO1をVCF1へ、ミキサー2はVCO1、2をVCF2へ送ります。

 ミキサー1のVCO1の最大値と、ミキサー2のVCO1、2を合わせた最大値は等しいレベルになります。したがって、時にミキサー1のVCO1のレベルを間引かなければならない局面が出てくると思います。

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 VCF。二つのVCFの構成はほとんど同じです。

 ローパスフィルター、バンドパスフィルター、ハイパスフィルターを切り替える形で使えます。

 EGセレクタースイッチで、どのEGをソースにするかを選択するのですが、リバース曲線に関して、VCF1はEG1、VCF2はEG2のみです。

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 VCA。二つの構成は同じです。

 イニシャルレベルは常にVCAから出力されるレベルを設定します。ARP ODYSSEY試奏記(2)で採り上げた同機のVCAゲインと同じです。また、考えようによっては本来0固定のVCA EGのスタートレベル/リリースレベルに相等するともいえます。ちなみにYAMAHA CS-10ではVCF EGにイニシャルレベルがあります。いずれにしても、通常は0にしておくと思います。

 廉価アナログシンセ及びアナログモデリングシンセでは珍しいと思うのですが、VCAにもEGデプスがあります。アンプ部にもEGデプスを持たせるという考えは、今夏発売されたアナログモデリングシンセサイザーYAMAHA reface CSにも継承されています。

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 EG。

 このセクションは操作子がつまみではなく、スライダーです。

 トリガー発生時、ランプが灯ります。

 タイム×5に関して、てっきりEGを5回実行し直してくれるのかと思ったのですが、実際はEGの各タイムが通常の5倍になるという事です。

 PSE騒動の頃、YAMAHA CS-10やCS-15は、他の同年代同価格帯のシンセほどには顧みられなかったと聞きました。現在も中古機の価格は比較的安いと思いいます。ただし、海外での評価はすこぶる高いとも聞きました。

 今回、数十年ぶりに試奏してみて、EGをVCF、VCAで独立して設定できる、VCAにもEGデプスがある、といった要素故に、金管系の音色時のフィルターが遅れて開いていく感じや撥弦系の径時変化を同価格帯のシンセよりも作り込む事ができました。二つのオシレータ個別にオートベンドのデプスを設定できる事と併せて、reface CSの上級機が出るとしたら、採り入れていただければと思います。

 あるいはいっその事、ヤマハさんがYAMAHA CS-10やCS-15、CS-30あたりを、当時のアナログシンセサイザーそのままに復刻してくれないかなとも思っています。

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YAMAHA CS-15
http://jp.yamaha.com/products/
music-production/synthesizers/cs15/?mode=model

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 implant4さんで、KORG Mono/Polyを試奏させていただきました。

 平成27(2015)年11月27日現在、implant4さんには、今回試奏させていただいた個体を含め、3台のMono/Polyの在庫があります。そのうちの1台はMIDI化の改造が施されています。

 今回、平成19(2007)年1月31日にアップしたKORG Legacy Collection Mono/Polyに関する記事を大幅に改訂し、実機試奏の雑感を主軸にしたKORG Mono/Poly試奏記とさせていただきます。

 パソコンベースのソフトウェアシンセサイザーKORG Legacy Collection Mono/Polyについては、本稿後半に記述を残しています。

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 アナログシンセサイザーKORG Mono/Polyは、昭和56(1981)年の秋か暮れ頃の発売だったと思います。

 私は昭和58(1983)年9月に手に入れました。夏休みにアルバイトをして得た、生まれて初めての給料を充てました。既に前年に発売直後のRoland SH-101を手に入れていて、私にとって2台目のシンセサイザーでした。

 その年の春にYAMAHA DX7が出ていたのですが、高校生では少々手を出しづらい値段だったこと、とにかく製造が追いつかないほど売れていて、ものが手許に届くまで日数がかかること、そして、日本のメーカーが一通りデジタルシンセを出すまで待ってみようという考えから、アナログシンセを買う事にしました。

 機種候補の条件として、VCFとVCAに独立して完全なADSRタイプのEGがあること、VCOが複数あること、店頭価格が10万円代前半までとしたのですが、結果的にそれらの条件を満たすKORG Mono/Polyを買いました。価格は既に10万円を切っていました。

 しかしながら、たしかその翌月のキーボードマガジンの最終ページのコルグの広告に、プログラマブルポリフォニックシンセサイザーの新製品KORG POLY-800が出た時は愕然としましたけど…。

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 筐体、化粧板、操作子群のデザインは、いずれもKORG Polysixと同系統です。筐体のこのカラーリングは、両機独特のものです。

 KORG Polysix試奏記にも書いたのですが、両機のどちらが良いかという議論が、現行機当時も、そして今も仄聞します。あの頃はPolysixが、そして今はMono/Polyが評価が高いそうですが、この二つのシンセ、比べようが無いと思うのですけどね。

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 Mono/PolyやPolysixの合板の化粧板、角の部分から崩壊が始まっているものをよく見かけるのですが、今回、implant4さんの3台の在庫は、いずれも美しい状態を保っています。

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 ホイール、鍵盤。

 いずれも、KORG Polysixと同じものと思われます。

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 ホイールのベンドレンジ及びモジュレーションデプスの設定操作子。

 ディスティネーションはともに、VCO1のみのピッチ、四つのVCOピッチを一括、カットオフポイントで、VCA、つまり音量に関するものはありません。

 また、モジュレーションに関して、MG(LFO)、VCO、VCF側に、デプスやその径時変化に関するパラメーターは無く、手操作子によるホイールの位置や動きがその全てを決めます。

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 フロントパネルを見ていきます。

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 MG(LFO)。

 MG1はレイトと波形(三角波、下降/上昇型鋸歯状波、矩形波)、MG2はレイトのみ。

 シンセサイザーエンジン部分の変調関係とアルペジエータでレイトを別設定したい場合、MGが二つあることは都合が良い。Roland SH-101の場合、LFOのレイトを内蔵デジタルシーケンサーやアルペジエータが共用していました。

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 PWM(パルスウィズモジュレーション)/PW(パルスウィズ)。

 パルス幅を、周期変化や径時変化を持たせる場合とマニュアル設定の場合で、独立した値を設定する事ができます。

 PWMのソースには、VCF EG 、MG1、MG2があります。MG1/MG2の選択肢がある事は、PWMの周期変化のレイトを、ビブラートやグロウル効果、クロスモジュレーション関連のレイトと別設定にしたい場合、便利です。

 Mono/PolyのVCF EGをソースにしたPWMは、特に撥弦系の音色で独特の渋味を醸し出してくれます。ギターやベースのシミュレーションに有効だと思います。

 昭和58(1983)年の春休みに公開されたアニメ映画「幻魔大戦」の音楽のうち、キース・エマーソンさんの担当分はコルグの機材協力を受けているのですが、ローズマリー・バトラーさんが唄った主題歌「光の天使」のシンセベース、おそらくMono/PolyのVCF EG変調のPWMを使っていると思われます。かつてMono/Polyを所有していた頃も、そして今回の試奏でも、そっくりに作る事ができました。

 また映画「トップガン」挿入歌「愛は吐息のように」のシンセベースも、この方法を使って真似るといい線いっているような気がします。ちなみにこのシンセベースのパート、落語家の桂文珍さんがあるラジオ番組で、「べーぼーばーぼーべーん」と唄っているのをお聴きして以来、私は「ベボバボベン」と呼んでいます。文珍さんは自ら操縦桿を握られるのですが、夜間飛行中、室内灯が輝く大型旅客機が雲間から上昇してくる姿を見ると、思わず「べーぼーばーぼーべーん」と唄ってしまうのだそうです。

 恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードに関するヒントは、パルスウィズを6を過ぎたあたりで探すと、3、6、9倍音が抜けたパルス波33%が見つかると思います。VCOは一つだけ使うか、四つのVCOの設定を同じにして次に触れるするシンクロ機能を使います。

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 シンクロ/シンクロ&クロスモジュレーション/クロスモジュレーション。

 Mono/Polyの特徴的な機能の一つです。当時の同価格帯のシンセには簡便なリングモジュレーション機能はあっても、クロスモジュレーションはありませんでした。後年、近い価格帯として、クロスモジュレーションが使えるRoland JX-3P(Roland BoutiqueJP-08、JX-03、JU-06が出ます参照)が登場します。

 私はクロスモジュレーションを使って姫神せんせいしょんの「行秋(ゆくあき)」(アルバム「奥の細道」より)の鐘や「風光る」(アルバム「姫神」より)の効果音等を作っていました。

 また、取扱説明書のセッティングチャートに銅鑼(たしかKING GONGという名だった)に関するものがあり、なかなか厳かな音がしました。今回は取扱説明書を見なかったので、King Gongは作りませんでした。

 1980年代に活躍したC-C-Bというグループの「Romanticが止まらない」という曲の、Roland JUPITER-8で出していたイントロの音、Mono/PolyのEG変調のPWMとたしかシンクロ&クロスモジュレーションでかなり近い音を作る事ができました。今回の試奏でこの音色を鳴らすのを忘れました。

 センスオブワンダーの「サディスティックサイキックタイガー」(アルバム「真幻魔大戦」より)で、難波弘之さんがSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5で作った電気ギター風の音色を出しているのですが、この音もシンクロ/クロスモジュレーションで真似したことがあります。私が当時使っていたモニタースピーカーKORG MM-25に載っていたオーバードライブを使ったり、知人からBOSS Heavy Metalというコンパクトエフェクターを借りてかけてみたりしました。

 私はシンクロを、変調ではなく、単に四つのVCOのピッチを強制的に同期させることにのみ使うことも多かった。得られる効果はVCO一つだけ鳴らすより、音量が大きくなることぐらいなのですけど。先に触れた喜多郎mini KORG 700Sリードやprophet-5ホルンを、Mono/Polyで真似る等に使いました。

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 ポルタメント。

 タイム設定のつまみだけでオン/オフボタンは無いのですが、フットスイッチKORG PS-1やPS-2を使うと足でポルタメントのオン/オフができます。PS-2の生産は終わっています。

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 四つのVCO。四つとも同じ構成です。

 ユニゾンモード時のディチューンの方法として、ディチューンつまみを使う場合と、各VCOのチューニングを独立して行う場合とがあります。

 かつて私が所有していたMono/Polyは、電源投入時からチューニングが使える状態になるまで、特に冬はそれなりに時間がかかったのですが、今回試奏させていただいた個体は、さほど時を経ずに使える状態になりました。もちろん、その後熱暴走する事も無く、至極安定していました。

 波形は、三角波、鋸歯状波、PWM、PW。

 姫神せんせいしょんの「七時雨」(アルバム「姫神より)メロディ音、おそらくこの三角波で作っていると思います。姫神せんせいしょんはコルグの機材協力を受けていて、アルバムジャケット裏に「KORG」のロゴが入っています。今回の試奏でも、うまく似せることができました。

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 ホワイトノイズジェネレータ。

 Roland SH-101が「ゴーッ」という迫力あるノイズなのに比して、Mono/Polyのそれは、どこか軽やかな感じがします。かつて私は、蒸気機関車や突風をSH-101、そよ風のイメージ音をMono/Polyで作りました。

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 VCF。ローパスフィルターのみです。

 完全なADSRタイプのEGを、VCAとは別に持っています。特に金管系や撥弦系で威力を発揮してくれます。

 レゾナンスを上げ切って自己発振させる事ができます。そのおり、今回試奏したこの個体は、キーボードトラックをきっちり5にすることで音階を平均率、つまりドレミにする事ができたのですが、かつて私が持っていたMono/Polyは、6少し手前あたりで平均率になりました。

 EGデプスは正逆ともに使えるのですが、Roland SH-2のようにポラリティスイッチで切り替えるのではなく、プラス値/マイナス値があります。

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 VCA。

 モジュレーションに関する設定要素が無く、EGによる音量の径時変化のみのセクションです。

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 トリガーモードスイッチ、オートダンプ。

 Mono/Polyはトリガーモードを、シングルにもマルチにも設定できます。

 オートダンプとは、これをオンした状態の場合、押さえたコードが1声でも押鍵され続けていた場合、他の押鍵分も発声し続けてくれる機能です。

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 アルペジエータ。

 アップ/ダウンは、例えば「ドレミ」と押鍵した場合、「ドレミミレドドレミミレドド…」と実行されます。Roland JUNO-6やSH-101等の場合、「ドレミレドレミレ…」です。

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 キーアサインモード。

 KORG Mono/Polyの特徴であり、名前の由来である、4VCOのモノフォニックシンセ、あるいは4声のポリフォニックシンセの切り替えを行うセクションです。

 ユニゾンシェアは、単声を押鍵した場合は4VCO、2声は1声あたり2VCO、3、4声は1声あたり1VCOを割り当ててくれます。四つのVCOを有効利用して、1、2、4声で音の厚みを損なわないようにすることができます。

 ユニゾンシェアはMono/Poly独特の機能ですが、ワークステーション機時代になってもユーザーからのリクエストが相次いだということや、その声を採らなかった理由に関するコルグスタッフさんのインタビュー記事を雑誌で読みました。ユニゾンシェアを採らない理由は、マスキング効果(音が互いに打ち消し合う)が絡んだ事柄だったと記憶しています。コルグアナログモデリングシンセ現行機には、ユニゾンシェアと似た機能が載っています。

 コードメモリーの、文字通りコードを記憶させる方法は、ポリモードでコードを押鍵してコードメモリーボタンを押す以外に、ホールドボタンを押して1声ずつ押鍵していき、目的とするコードになった所でコードメモリーボタンを押すという方法も考えられます。

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 実機と、パソコンベースのソフトウェアシンセLegacy Collection Mono/Polyの違いについて記します。

 まず二つのMGに関して、三角波、矩形波、向きの違う二つの鋸歯状波といった、実機にもある波形に加え、S&H(サンプルアンドホールド)があります。実機の場合、アナログシーケンサーSQ-10ででたらめなピッチ設定をするか、モジュレーションペダルMS-04使わないとできませんでした。SQ-10もMS-04も私が実際に試したわけではありません。

 そしてこれが実機とLegacy Collection Mono/Polyとの最大の変更点なのですが、コルグのアナログモデリングシンセと同じくバーチャルパッチが使えます。Legacy Collection Mono/Polyのバーチャルパッチ数は8で、KORG RADIASKingKORGの6をも越えています。EGをピッチに送ってオートベンドをかけるといった、実機では不可能だった事ができるようになり、音作りの可能性を大きく広げています。

 発声数はパソコンの処理能力に依拠するようですが最大128で、もちろん実機のように押鍵の度に全てのボイスのフィルターやアンプが作動し直す事はありません。またエフェクターが同時に2種類使えます。もちろんアナログモデリング、つまりデジタルシンセなので電源を入れてオシレータが暖まるまで音程がとれないという事はありません。

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 近年コルグは、単にCMTによる旧機のモデリングではなく、本格的な形での復刻に力を入れていて、KORG MS-20 miniARP ODYSSEYといった成果があります。

 あるいは、今、現行機期以上に評価が高まり、かつて新品を10万円を切る値段で買った私が目を回すほど中古価格が高騰しているKORG Mono/Polyも、復刻されるのではないかと期待しています。

 他のモデル同様、86%の大きさでスリム鍵盤、そして願わくば、化粧板を合板ではなくローズウッドにすることと、アルペジエータをコルグのアナログモデリング機なみのものにしていただけたらと思います。

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KORG Mono/Poly
http://www.korg.co.jp/
SoundMakeup/Museum/Monopoly/


KORG Legacy Collection Mono/Poly
http://www.korg.com/jp/products/software/
korg_legacy_collection/page_3.php

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 implant4さんでアナログモノフォニックシンセサイザー、Roland SH-2を試奏させていただきました。

 未調整のようで、在庫リストへのアップは先の話と思われます。また、後述しますがこの個体にはMIDI対応の改造が施されています。

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 Roland SH-2は、昭和54(1979)年に登場しました。これと入れ替わりに、登場1年余のRoland SH-1の製造が終わったと記憶しています。同機を短命にしたモデルといっていいかもしれません。無論、SH-1も素晴らしいシンセであり、SH-2と補完し合えるモデルだと思います。

 キーアサイナー方式のポリフォニックシンセが一般化する直前であり、各社が、10万円前後、あるいはそれを切る価格の、当時の言葉でいえばリードシンセサイザーに力を入れていた時期でした。

 YAMAHA DX7が出るまで、シンセ関連のムック本や雑誌の音色設定の記事は、KORG MS-20、YAMAHA CS-10やCS-15、そしてこのRoland SH-2のフォーマットで書かれている事が多かったのは、これらが世に多く出回っていた事を物語ると思います。

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 Roland SH-2は同期の他社機に比して、フロントパネルの操作子群のレイアウトが合理的で、シンセサイザーを始める人にとって、最もとっつき易かったのではないでしょうか。

 その操作子群も大きめのスライダーで、形状も手指につまみ易いものだったと思います。ただ、上げ下げの感触がとにかく固く、各パラメーターの値を素早く目指す位置へ持っていくのに、手指に緊張感を持たせてしまい、雑になりがちでした。故に操作感に関して、当時私はYAMAHA CS-10、CS-15に及ばないという評価を下していました。この点は、続くRoland SH-101が解消してくれました。

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 フロントパネルの各セクションを見ていきます。

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 LFO。

 一番上の波形は三角波ではなくサイン波です。

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 ピッチの周期変化(ビブラートデプス)、径時変化(オートベンド)、パルスウィズと、二つのVCOへ作用する機能群。

 ビブラートデプスは、モジュレーションに関する専用のコントローラーが無いSH-2にとって、演奏操作子でもあります。

 オートベンドは、押鍵の音程より下からしゃくり上げるタイプです。

 パルスウィズの変化は、JXシリーズをのぞくローランドの昭和アナログシンセ及びRoland JP-8000、JP-8080に共通していると思われます。その理由は、これまでいくつかのローランドシンセを試奏してきて、後述する喜多郎mini KORG 700Sリードのパルスウィズの設定値が、このSH-2、SH-101、JUNO-6JUPITER-6、はては平成のデジタルシンセJP-8000までが同じだったからです。

 矩形波とパルスウィズを下げ切ったパルス波に、差異は全く感じられませんでした。

 マスターチューンのつまみはこのセクションにあります。小さいです。ただ、SH-2のピッチは素晴らしく安定しているので、このつまみを頻繁に使うという事はなさそうです。

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 VCO1。

 波形の中にサイン波があります。VCOのサイン波は、VCFを自己発振させて出すサイン波よりも温かみがあり、よくボーカルナンバーのイントロや間奏のリード音に使われています。テルミンの妖しい冷たさを模する場合、VCFの自己発振の方が効果的です。

 VCO1にはピッチベンドを無効化するスイッチがあります。VCO2だけにベンドをかけるという演出が可能です。

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 VCO2。

 波形にホワイトノイズがあります。

 VCO1とのディチューンのための、VCO-2チューンという小さなつまみがあります。また、チューンレンジスイッチによって、このレンジを繊細にも大きくも設定できます。

 SH-2のVCOはピッチが本当に素晴らしく安定しているのですが、なまじ安定しているが故に、VCO1/2のディチューンを完全に解消にしてしまうと、互いを打ち消し合い(マスキング効果というのでしょうか)発声がおかしくなります。アナログながら繊細なディチューンができるというのは、SH-2独特の厚みを得る事ができる理由の一つかもしれません。

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 ミキサー。

 VCO1、2及び1オクターブ下の矩形波を加えるサブオシレータのレベルを設定します。

 SH-101のソースミキサーと異なり、ここにノイズジェネレータはありません。

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 VCF。

 ローパスフィルターのみです。

 ENVデプスの正逆は、ポラリティスイッチで切り替えます。

 エンベロープフォロワは、リアパネルにあるエクスターナルインから入ってきた音声信号の大きさでカットオフを変化させる事ができます。

 レゾナンスを上げ切ると自己発振します。またこのおり、キーボードフォローを最大値にすると音階が平均率になります。

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 VCA。

 ホールドボタンはここにあります。

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 ENV。VCFとVCAで共有されています。

 トリガーモードは、マルチ(GATE + TRIG)、シングル(GATE)とも設定できます。また、LFOのレイトに同期してENVを繰り返す(LFO)もあります。

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 「Roland SYNTHESIZER SH-2」のロゴ。

 「SYNTHESIZER」の部分の字体は、1970年代のローランドシンセによく使われていたのですが、「オレたちひょうきん族」に登場したYMOの偽物が弾いていた、たしかPolandなるメーカーのシンセサイザー?のリアパネルのロゴが、この字体でした。

 この字体、後にRoland SH-32、そして、studiologic sledgeでも見る事ができます。

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 ベンダーレバー、ポルタメント。

 ベンダーレバーのピッチ変化の最高値(ニュートラル位置から右へ倒しきる)が、1オクターブ以上あるか否かを試すのを忘れました。

 モジュレーションに関するコントローラーは無く、ビブラートはVCOの、グロウル効果はVCFの、各々モジュレーションデプスのスライダーを演奏操作子として使わなければなりません。

 姫神の公演で姫神・星吉昭さんがRoland SH-2を演奏する時、左手がベンダーレバーの操作以外にフロントパネル上を頻繁に動いているのを見たのですが、あるいはこういった事にお使いだったのかもしれません。

 ポルタメントにはオンオフが無く、PSE騒動の頃に試奏したSH-2やSH-09の中には、ポルタメントのスライダーを下げ切ってもポルタメントがかかってしまうものを何台か見ました。今回の個体にはその現象はありませんでした。

 ベンダーレバーとポルタメントの操作子が近くにある事は、ポルタメントをフットスイッチでオンオフできないモデルの場合、本当にありがたい事だと思います。

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 鍵盤。

 この時代のシンセサイザーの常として、静粛性に優れてるとは言い難いものでした。

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 リアパネル側。

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 端子群。

 VCFで触れたエクスターナルイン、CV、音声出力関係が並んでいます。


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 今回試奏させていただいたSH-2の左側面にには、MIDI対応の改造が施されています。

 向かって左側がMIDI IN、右がTHRUです。

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 MIDIケーブルを接続し、側面のレバーを奥へ倒すとランプが点灯し、ノートデータを受信します。この状態でSH-2の鍵盤は音階を弾けなくなるのですが、トリガー信号を出す事はできます。

 implant4さんでは、将来このMIDI化改造を請け負う可能性があるとの事でした。あくまで、可能性、です。

 以下、ある三つの音色設定のヒントを記します。

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 ぶれて見にくいですが、三つの音色に共通する大まかな設定はこうです。各々VCFのカットオフやENV等を一考してください。また、空間系エフェクターやフットボリューム必須です。

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 既に笛、さまざま(1)として記した、姫神がSH-2で出している笛の音。

 基本的にはVCO1の矩形波のみなのですが、「大地炎ゆ」(アルバム「北天幻想」より)や「海道を行く part 1」(NHK「ぐるっと海道3万キロ」オリジナルサントラ盤「海道」より)の場合、VCO2も使います。ミキサーのレベルはVCO1、2同じで良いのですが、ディチューン(VCO2チューン)の設定を一考してください。ディチューンし過ぎると、この2曲のメロディ音の雰囲気から乖離してしまいます。

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 同じく姫神がSH-2で出した音なのですが、昭和59(1984)年11月に放映されたNHK特集「幻の巨大魚タキタロウを追う~山形・朝日連峰の秋~」の、大鳥池の空撮カットで使われた「白鳥伝説」の変奏曲中、先のSH-2の笛のメロディの後ろで「ブーワワワワワーン」と鳴っているブラストーンリード。

 VCOはどちらも鋸歯状波。輪郭がぼやけているのにコシがあるSH-2の特長が堪能できます。この音色もディチューンの設定を一考してください。さらにサブオシレータ(1オクターブ下の矩形波)も加えます。「ブーワワワワワーン」の「ワワワワワ」の部分は、ベンダーレバーを左右に揺らします。

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 そして恒例の喜多郎さんのmini KORG 700Sリード。パルスウィズの設定が重要です。オートベンドの設定を忘れました。
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 Roland SH-2は今日、Roland AIRA SYSTEM-1SYSTEM-1m用のプラグアウトシンセRoland SH-2 PLUG-OUTとして、復刻されています。

 SH-2の中古価格や操作子の固さ故に、私が導入するとしたら、SH-2 PLUG-OUTの方になると思います。

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 しかしながら、今回の試奏時、implant4さんで並んでいた複数台の調整待ちのSH-2を見た時、61鍵のアナログポリフォニックの名機群とは異質の存在感を放っていた事、そして、シンセサイザーに興味が湧き、それまで行った事の無い楽器店に足を運んでMS-20やCS-10と一緒に音を鳴らして音色作りの方法を手にした昔日の事等を併せて、基本的にシンセを消耗品とみなしながらも、SH-2に対して多少情緒的な気持ちになる事は否めません。

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 implant4さんで、アナログモデリングシンセサイザーYAMAHA reface CSを試奏させていただきました。

 もちろんYAMAHA reface発売から日が浅い事もあるのですが、美品でした。早晩implant4さんサイトの在庫リストにアップされると思います。

 YAMAHA refaceに関して、既にYAMAHA refaceが出ますで取り上げています。refaceシリーズに共通する事柄及びreface CSの仕様に関して、YAMAHA refaceが出ますをお読みいただく事が前提になっています。

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 refae CSの、見た目の小ささに比して1.9kgという重量が、意外に重く感じられます。

 何度も書きますが、ヤマハさんは筐体や操作子の脆弱感がどうこうという話が来ないシンセサイザーメーカーであり、このrefaceも、廉価機とはいえ全体がしっかりした作りになっています。同価格帯の他社機の追従を、全く許していないといっても過言ではないと思います。
 
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 reface CSの筐体は灰色ではなく白いものの、操作子が横一列に並んだスライダー群であることをもって、やはりヤマハアナログシンセCSシリーズの最終モデルYAMAHA CS01を思い出しました。

 そのスライダーも、低価格感の無い、素晴らしい使い心地でした。軽過ぎず重過ぎず、全てが単に音色設定操作子ではなく、演奏操作子として申し分の無いものでした。

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 フロントパネル上を見ていきます。

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 フロントパネル左右に配されたステレオスピーカー。

 YAMAHA reface CS、DX発売時に試奏させていただいた楽器店さんでは、両機とも本体のスピーカーから音を出していました。音量を最大値にしていたからかもしれませんが、騒がしい楽器店の店頭に於いて、普通に音を聴く事ができました。

 reface CS試奏時、オシレータ波形を鋸歯状波にし、テクスチャーを上げていくと、筐体全体がきしみだしました。スピーカーからの振動が伝わったのだと思います。

 いずれにしても、小さいとはいえ、ヤマハに相応しい、素晴らしい内蔵スピーカーだと思います。

 今回はimplant4さんのミキサー/スピーカーにつなげて試奏しました。

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 ベンダーレバー。

 手指を離すとニュートラル位置に戻ってくるタイプです。
 
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 オクターブ。

 押鍵した状態で操作してもオクターブの上げ下げはできません。次の押鍵から変更が反映されます。

 押鍵した状態でオクターブを操作すると、音が途切れる事無く変化させたいというニーズは多いと思うのですが、reface CSはできません。

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 ルーパー。

 リアルタイム入力のみ、最大2000ステップのMIDIシーケンサーです。良くも悪くも奏者やマニピュレータの手弾き演奏を反映します。フレーズの多重打ち込みも可能ですが、最大発声数8を超えると後着の打ち込み分が先着分を打ち消します。

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 LFO。

 LFOにディレイタイムやフェイドタイムが無く、モジュレーションホイールも無いreface CSに、ビブラートの径時変化やリアルタイム変化をかける方法として、Roland JUPITER-8、JUNO-6(白いモジュレーションボタン)、SH-101(ベンダーレバーを押す)より前のローランドシンセサイザーと同じ所作、つまりモジュレーションデプスのスライダーを上げ下げする、ベンダーレバーを前後に小刻みに揺らす、が考えられます。

 しかしながら後者に関して、私にそういう経験が無いからか、今回implant4さんで試してみて、意図した効果を得る事が出来ませんでした。ビブラートではなく、酔っぱらった奏者がピッチベンドを行っているようにしか聞えませんでした。私の場合、スライダーをモジュレーションホイールの代わりに使う事が唯一の方法です。

 そういった意味で、YAMAHA refaceが出ますでも書きましたが、デプススライダーのキャップの大きさを、できればフィルターのカットオフフリケンシーと同じにしていただきたかったと思います。

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 ポルタメント。

 スライダーは、モノフォニックかポリフォニックかの選択操作子も兼ねています。モノフォニック時のトリガーモードは、レガートするとリトリガーしない、つまりシングルです。ポリフォニックポルタメントはかかりません。

 ポルタメントタイムは、モノの位置が0、つまりオフで、一番上の横線から一つ下あたりで、KORG MS-20 miniのポルタメントタイムの8よりやや上と同じくらいになります。喜多郎さんが1オクターブ上へレガートしながらポルタメントをかける所作を真似する場合、ここらが適当かと思います。

 ポルタメントのカーブは、デジタルシンセながらリニア変化ではなく、YAMAHA CS-5等ヤマハアナログシンセのカーブを模していると思われます。

 ポルタメントタイムを設定した状態で押鍵しオクターブスライダーを操作しても、ポルタメントはかかりません。ちなみに、ARP ODYSSEY復刻機はかかります。

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 オシレータ。

 LFOアサインのオシレータモードとの関係を含めた各オシレータタイプに関する事柄は、YAMAHA refaceが出ますをお読みくださればと思います。

 リングモジュレーションは、LFOをオシレータにしてテクスチャーやモジュレータの設定を一考すると、寺の鐘のような厳かな音を作る事ができました。私好みの可愛らしいベルの音も簡単にできました。

 reface CSにはノイズジェネレータは無いのですが、FMの設定如何で文字通りFM音源のYAMAHA DX7のプリセット音のようなノイズを作る事ができました。

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 恒例の喜多郎mini KORG 700Sリードを真似るヒントを一つ書いておくと、オシレータ波形をパルス波にし、テクスチャーを0、モジュレータを4~5あたりで探すと、3、6、9倍音が抜けるポイント、つまりパルス33%が見つかると思います。

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 また、この設定を鋸歯状波にしてモジュレータを若干上げ、オクターブを一つ下げると、喜多郎KORG 800DVブラストーンリードに使えそうな音になります。reface CSのピッチベンドレバーが上下に最大1オクターブづつ変化する事は、手操作による800DVのディレイオートベンドの真似に使えます。

 この二つの音色は、ともに先に書いたポルタメントの設定が活きます。

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 フィルターとアンプでEGを共用しているはずなのですが、EGバランススライダーをフィルター寄りにすると、例えばホルンのような、ちょっと苦しそうに吹いている感じの、音量よりフィルターが遅れて開くアタックタイムを設定できてしまいます。無論、フィルターとアンプでEGを独自に持っているモデルほど完全ではないものの、こういう設定に凝りたい私としては、たいへんありがたい事です。

 なぜこんな事ができるのか。アナログシンセやアナログモデリングシンセの多くは、VCAあるいはデジタルアンプ部にEGデプスがありません。VCA/デジタルアンプ部とEGは繋がっているだけです。しかしながら、なぜか廉価機のYAMAHA CS-5、CS-15には、VCAにもEGデプスがあります。CS-5及び完全2系統として音色設定したCS-15は、reface CS同様、EGを共有しつつもVCF/VCAのかかり具合を個別に設定できます。

 EGのVCF/VCAへのかかり具合の違いを、CS-5、CS-15は各々のデプスのレベル(変な言い回しです…)、reface CSは両者のバランスという形で決める事ができるわけです。これがVCF/VCAでEGを共有する他のシンセとの効果の違いを出せているのかもしれません。

 先にreface CSを、YAMAHA CS01を思い出すとしたのですが、ピッチベンドをレバーで行う事と併せて、むしろCS-5に似ているといえるかもしれません。

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 エフェクター。

 ディレイの直近にオフがある故に、任意の所でディレイの効果をカットアウトしたり、逆にある所でだけ効果をかけるといった事が、演奏中に手操作で簡単にできます。

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 refaceにおいて初お目見えの鍵盤HQ mini。

 ミニ鍵盤とはいえ、素晴らしい感触です。サイズはコルグのスリム鍵盤に近いと思うのですが、スリム鍵盤がしっとりした感触なのに対して、HQ miniは下げ切った時に底に「コツッ」と当たる感触があります。打弦式電気ピアノをシミュレーションしたYAMAHA reface CPに採られる事を念頭に置いて設計されたのかもしれません。MIDIショルダーキーボードの名機、YAMAHA KX5にも似ているような気がしました。

 私がこだわる静粛性について、あくまでimplant4さん店頭でのお話ですが、申し分ないものでした。もっとも、うるさいミニ鍵盤がこの世にあるのか否かはわかりません。

 いずれにしても、昨今ミニ鍵盤を指向しだした私にとって、これほど素晴らしい鍵盤はないと思いました。

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 HQ mini鍵盤の裏面。

 中央にヤマハ製FS鍵盤のようなしきりは走っていません。

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 リアパネル側。

 フットコントローラー端子は音量用です。エクスプレッションペダルYAMAHA FC7をつなぎます。

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 USBを介してiOS用アプリケーションYAMAHA reface captureを使えば、reface CSをプログラマブルシンセのように使えます。

 これ以外に、作る音色の数だけreface CSを買うという、消極性を極めた積極的な方法もあります。

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 YAMAHA reface CSをまとまった時間試奏して気付いた事があります。鍵盤を弾く右手よりも、操作子群を動かすためにフロントパネル上を動き回った左手の方が疲労していたということです。そしてこの感覚、私にとって少々懐かしいものです。

 昭和57(1982)年11月、Roland SH-101を買ってきて、かなり長い時間弾いたのですが、その時も、やはりフロントパネル上を動き回った左手の方が疲れていました。その後、デジタルアクセスコントロールタイプのシンセを使うようになって以降、絶えて久しかった感覚です。


YAHAMA reface CS
http://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/
keyboards/synthesizers/reface/reface_cs/?mode=model#tab=product_lineup


YAHAMA reface
http://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/
keyboards/synthesizers/reface/?mode=series#tab=feature

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 平成27(2015)年10月1日、アナログモデリングシンセサイザーモジュールRoland Boutique JP-08、JX-03、JU-06、そして、それらを搭載できる専用ミニキーボードK-25mが発表されました。

 まず、Boutiqueシリーズに共通する部分について、触れていきます。

 Boutiqueシリーズは各々独立したシンセモジュールとして使えるのですが、K-25mに着脱するためにサイズは統一されています。

 キーボードとシンセモジュールが合体するという発想は、1980年代半ばに出た倍音加算合成方式のデジタルシンセSEIKO DSシリーズを彷彿とさせられます。しかしながら、SEIKO DSとは異なり、K-25mは合体したBoutiqueの傾斜角を、水平も含め3段階に変える事が出来ます。

 K-25mはBoutiqueと併せて使う事が前提のキーボードです。KORG RADIASM3のKYBDアセンブリ同様、K-25mにMIDIやUSBはありません。

 フロントパネル左端に二つのリボンコントローラーがあります。左はピッチベンド及びトリガーの発生(K-25m、MIDI、USBに接続が無い時)、右はモジュレーション用です。

 音色設定操作子群が概ね実体を持った非デジタルアクセスコントロールタイプであり、本体上で各パラメーターを視る事はできません。

 スライダーのキャップやボタンが光ります。

 パネルの現状を音色に反映するマニュアルボタンがあります。

 シンセサイザーエンジンは、Roland AIRA SYSTEM-1SYSTEM-1mにも採られているACBで、各々元になったモデルが解析されています。

 最大同時発声数4。元になったアナログシンセよりも少ないのですが、2台を連結して1台目のBoutiqueからあふれた発声を2台目に回す、チェインモードという機能があります。同じ機能が、かつてKORG M1Rにもありました。また、このチェインモードによって、1台目のマスター機の操作子の動きや設定が、2台目にも反映されます。

 簡便な16ステップシーケンサーがあります。

 各機のオリジナル機から継承したものの他に、Boutique共通の内蔵エフェクターとして、ディレイが搭載されています。

 ミニスピーカーが内蔵されています。

 MIDI IN/OUT端子があります。

 USBは、MIDI、音声の両方を扱えます。

 Roland Boutique JP-08の元になったRoland JUPITER-8は、昭和56(1981)年に登場しました。

 ただ、今回のBoutiqueのティザーではないですが、当時、もう少し早い時期から、今度こういうシンセが出るといった形でアナウンスがあったような憶えがあります。
 
 国産機離れした、大型で派手な、しかし、側面から化粧板が消えて垢抜けた薄い筐体、フロントパネルに並んだ数多のスライダーやつまみ群…加えて私がシンセサイザーに興味を持って以来、初めて新発売を待つ形で目の前に現れたモデルという事もあって、当時、何だか凄いシンセサイザーが出てきたなという印象を持ちました。

 プロの演奏で、私が最もJUPITER-8の使用が明確な形で見聴きする事ができたのは、今から30年余前、テレビの歌謡番組でC-C-Bが披露した「Romanticが止まらない」のイントロでした。当時、私はこの音をKORG Mono/PolyのS/X(シンクロ&クロスモジュレーション)で真似しました。

 Roland Boutique JP-08は、Boutique3機種中、最もパラメーターが多く、若干価格も高くなっています。

 LFOの波形に、三角波とノイズが加わっています。JUPITER-8同様、LFO波形の鋸歯状波は下降型のみです。JUPITER-8もJP-08もモジュレーションデプスにマイナス値を設定できないので、LFOのノコギリの刃の向きを変える事はできません。

 オシレータは1声あたり二つあり、ビブラートデプス、ENV-1をソースにしたオートベンド、パルスウィズ等を共有しています。PWMのソースは、マニュアル、LFO、ENV-1。

 JUPITER-8のVCOは、パルスウィズを下げ切ると矩形波になったのですが、JP-08のオシレータは、パルス波と矩形波を分けています。

 二つのオシレータレベルは各々独立しているのではなく、バランスを取る形です。したがってフィルターの自己発振を使う為にオシレータを無効化する場合、パルスウィズを上げ切る、つまりデューティー比を100:0にする事が考えられるのですが、パルスウィズがデューティー比100:0になるか否かは試奏するまで判りません。そもそもフィルターが自己発振するか否かも分かりませんけど…。

 JP-08はBoutique3機種中、唯一ENVが二つあります。ENV-2はアンプ部と接続されています。フィルター側で、アンプ部とENV-2を共用するか、独立してENV-1を使うかを選ぶ事ができます。また、ENV-1はポラリティスイッチを介してリバース曲線を選ぶ事ができ、例えばオートベンドのソースにした場合、しゃくり上げるか下げるかを設定できます。

 私は撥弦系の音色を作る場合、PWMをENVで変調できる事と、フィルターとアンプがENVを個別に持っている事が望ましいと思っているのですが、Boutique JP-08はその条件を満たしています。JP-08は現行機中、二つのオシレータのPWMのソースにENVを持つモデルの中で、最も安価なシンセです。

 私としては、VCOの波形をどれか一つ選択する形のJUPITER-8よりも、複数の波形を並列使用できるRoland JUPITER-6をACB化していただいた方がよかったのですけどね。

 Boutique JX-03の元になったRoland JX-3Pは、昭和58(1983)年の年明け、JUPITER-6と同時に発表されました。同機と並んで、日本のシンセサイザーメーカー初のMIDI対応機です。

 前年11月、私は最初のシンセサイザーRoland SH-101を手にしたのですが、その縁故か、JX-3P、JUPITER-6発表時にローランドさんからダイレクトメールが郵送されてきました。その最後の記述は、
JUPITER-6、JX-3P、両機の可能性は無限だ!
だった記憶があります。

 JX-3Pの3Pの意味は、Programmable Preset Polyphonicです。

 プリセットとあるので、てっきりJX-3Pは、全パラメーターに対応した操作子群を持つ、プログラマーと呼ばれる別売ユニットRoland PG-200が無ければ、当時まだ存在していたプリセットタイプのシンセ同様、本格的なマニピュレーションはできないものと思っていました、しかしながら、実は本体だけでも音色作りが可能です。私はこの事に、今回この記事を書くにあたってJX-3Pを調べて初めて知りました。

 Roland Boutique JX-03のフロントパネルは、JX-3Pというより、概ねPG-200のレイアウトを踏襲しています。

 1声あたり二つのオシレータを持っています。各々にLFO、ENVをピッチのソースとして使うか否かのスイッチがあります。効果のデプスは共有しています。

 オシレータ波形は1、2ともJX-3Pのものに、サイン波、三角波、そして、オシレータ1にはピンクノイズ、オシレータ2にはホワイトノイズが追加されています。

 クロスモジュレーションの効果の種類が、シンクロ、メタルとも二つに増え、さらにリングモジュレーションが加わっています。JX-3PからJX-03への最大の変更点だと思います。オシレータ波形の増装と併せて、クロスモジュレーションの可能性が広がったと思います。

 LFO波形には、新たに鋸歯状波、そしてノイズが加わっています。モジュレーションのデプスはマイナス値を設定する事はできませんが、LFOのノコギリの刃の向きは、上昇型、下降型ともあります。

 LFO波形にノイズを持つモデルとしては、過去にRoland SH-101がありました。ノイズを選んでビブラートやグロウル効果のデプスを上げていくと、前者にはホワイトノイズ、後者にはピンクノイズが加味されていきます。これもクロスモジュレーションと絡むと、JX-3P以上にユニークなものにしてくれると思います。

 いうまでもない事ですが、minimoogのモジュレーションミックスやSEQUENTIAL CIRCUITS prophet-5のソースミックスとは異なり、ノイズを他の波形と混ぜてディスティネーションへ送る事はできません。

 オシレータ、フィルター、アンプで、一つのENVを共用しています。正逆のポラリティスイッチは、ENVではなく、オシレータ、フィルター側で独立して持っています。

 JX-3Pには無かったポルタメントを使う事ができます。設定方法はコーラスボタンを押しながら、リボンコントローラー左でオン/オフを、右でタイムを設定します。JP-08、JU-06も押すボタンは異なるものの、左右のリボンコントローラーで設定します。試奏するまで判りませんが、ポルタメントのカーブがデジタル的なリニア変化ではない事を祈っています。

 Boutique JU-06の元になったRoland JUNO-106は、昭和59(1984)年の、たしか新学期頃に店頭に現れました。Roland JUNO-6、JUNO-60に続く3機種目のJUNOです。

 筐体の小型軽量化、シリーズ初のMIDI対応、音色記憶数はJUNO-60の56から128に増装、ポルタメント、ユンゾンモード(POLY1、2ボタンを同時に押す)が使えるようになりました。

 後にスピーカーを搭載したJUNO-106Sも登場し、これはTVCMも打たれました。日曜日の午前中によく観ました。全くの余談ですが、日曜日の午前中というこの時間帯、有名なパルナスケーキのCMも頻繁に観ました。

 JUNO-106発売直後、当時月刊誌だったキーボードマガジン7月号の創刊5周年特集「名機大集合! キーボードの未来を探る B-3、ミニムーグからDX、CMIまで」の中に、
JUNO-106は名機として記憶されるだろう
という意味の記述がありました。YAMAHA DX7が世界を席巻し、アナログシンセサイザーにプレミア価格がつく事なんか想像もつかない時代でした。今日JUNO-106の中古機は、高値で取引されていると聞きます。

 Roland Boutique JU-06のパラメーター構成は、概ねJUNO-106と同じです。

 LFOに波形選択は無く、1声1オシレータ、ENVをフィルターとアンプで共用しています。

 オシレータ波形は鋸歯状波とパルス波を同時に使えるのですが、オン/オフのみで、SH-101のソースミキサーのように各々のレベルを設定する事はできません。逆にサブオシレータにはオン/オフのボタンは無いのですが、レベルがあります。

 またパルスウィズはマニュアルとLFOのみで、JUNO-6、JUNO-60にあったENV変調のPWMはできません。

 ハイパスフィルターは、JUNO-60、JUNO-106が四段階なのに対し、Boutique JU-06はJUNO-6同様、通常の設定ができます。

 2種類のコーラスが内蔵されています。JUNO-106とは異なり、JUNO-6、JUNO-60と同様、二つのコーラスを併用する事もできます。試奏するまで判りませんが、仮に有名なジュノーコーラスの効果が再現されているとなると、私のBoutique JU-06を使ってみたいという欲求は、さらに高まってしまいます。Roland JUNO-6試奏記にも書きましたが、かつてJUNO-6のコーラス1を頻繁に使っていました。

 Roland Boutiqueシリーズの発売日は、来る平成27(2015)年10月24日。

 価格は、JP-08が税別50,000円、JX-03、JU-06は税別40,000円、K-25mは税別13,000円です。

 なお、たいへん遺憾ながら、Boutiqueシリーズは、数量限定生産だそうです。

 Roland Boutique JP-08試奏記Roland Boutique JX-03試奏記Roland Boutique JU-06試奏記へ続きます。


Roland Boutique
http://www.roland.co.jp/promos/roland_boutique/

Roland Boutique JP-08
http://www.roland.co.jp/products/jp-08/

Roland Boutique JX-03
http://www.roland.co.jp/products/jx-03/

Roland Boutique JU-06
http://www.roland.co.jp/products/ju-06/

Roland K-25m
http://www.roland.co.jp/products/k-25m/

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